表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
V 兄と妹

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/96

子供には羽がある

 家庭訪問でもないのに、児童とこんなに親しげにする先生はいない。

 簡単にしてしまった口約束は、担任のボイスレコーダーに記録されていた。

 それを知らずに、宮は楽しみにしている。

 沓は頭が回らず、両親から教わった『約束は絶対に守ること』を果たすことにした。

 他にも、『困った時は絶対に相談すること』や『知らない人についていかないこと』があったのだが、沓は宮がはしゃぎすぎて忘れてしまっていた。

 今日何があったかと母親に聞かれたのに、沓はこのことを話せなかった。


「うるさいのに話しかけられた」

「うるさいクラスメイトに? それは災難だったわね。でも、これからは集団生活にも慣れないと。母さんたちと過ごす時間の方が、短くなっていくものよ。小学生の頃はね、私も……親のことは後回しで、友達とばっかり遊んでいたから。もっと手伝い、してあげれば良かったんだけど」

「おれは……母さんを」

 母親はしゃがんで膝をつく。

 勇気を振り絞って、何かを言おうとしている沓。

 彼の頭を胸に抱き寄せる。

「ありがとう。母さんのことを思ってくれるのは嬉しい。でもね、今だからできることを、存分にやりなさい。青春は一度しかないのよ。学校生活、楽しまなきゃいけない。大学生までしか、面倒見られないんだから。いっぱい迷惑かけて、母さんたちを困らせて。楽しんできてちょうだい」

「そんなこと、できない」

「やらなきゃ後悔するわよ。もっと遊んでいれば良かったって。私は手伝いもしたかったけど、自由に遊ばせてもらえて良かったと思ってる。子供には羽があるから。自由に羽ばたく翼があるなら、飛んでみて欲しいのよ」

 母親は目を閉じて、自身の願いを告げる。

「いつか親離れする時が来る。でも……それを見なきゃ始まらないから」

「……」

「あなたたちの青春を、私に見せてちょうだい」

「……でも」

「それが私の幸せ。母親となった私の、唯一の願い」

 沓を包み込む温かさが、熱を帯びて更に温まる。

 沓は流れに身を任せるように目を閉じて、頷いた。

 優しい母親の願いならば、叶えたいと。

「ありがとう」




 それから数週間ほど経ってから、担任への警戒心が解けて心を開いた時。

 事件は起きた。

 この間の何気ない約束を、担任は出してきた。

「先生の双子の姉に会いたいって言ってたよね。今日の帰りに、先生の家に寄っていかない? 帰りは、遅くならないように十七時までには帰れるようにするから」

「……でも、今日は……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ