一卵性の双子に会いたい
頬を染めて宮が言うと、母親は口に手を当てて聞いた。
「もうそんな年頃だった?」
「もう小学生だよ! 子供じゃないもん!」
「私の歳にしてみれば、まだまだ子供よ」
「もー! お母さんてば! 漢字だって、算数だって、宮は、もうできるもん! 子供じゃないもん! 大人だもん!」
「もっとできないといけないこと、あるからね。学校で、学んできなさい」
まだ背の低い宮の頭を撫でて、母親は微笑む。
歳を取っても未だ美しい、女神のような微笑みに、沓は見蕩れた。
「どうしたの?」
「いや……何でもない」
ふいっと顔を逸らして、沓は誤魔化した。
「……」
多分、母親は沓の気持ちを察していたのだろう。
何も言わなかったから。
「と、とくって、きょうだいなのか! すげーなあ! にてねえ!」
「よく言われる」
「おまけに、ふたりともべんきょーできるし! すすんでんな! おれはまだひらがなしかおぼえてないぞ? じぶんのなまえとかなら、わかるけどな!」
騒がしいクラスメイトに目をつけられ、沓はうんざりしていた。
幼稚園でも友達が欲しいわけじゃなかった沓に、宮の兄だからという理由で宮の友達がくっついてきていた。
沓は宮と違い、一人遊びをする方が好きなのだ。
「どうでもいい……」
「ちぇっ。なんだよ、つまんねーやつ!」
最も素直な年頃の小学生は、コミュニケーションを取らない人間とは、関わらないようにするものだ。
全く興味関心を持たないようになるか、いじめの対象とするかのどちらか。
沓はいじめられたとしても、無関心でいられるだろうが。
担任の先生が、沓と宮に話しかけた。
「筑井くんと筑井さんは双子なんだね」
「うん! お兄ちゃんと宮は、二卵性の双子なんだよ!」
「それが何か?」
「先生もね、双子なんだよ。先生は一卵性で、そっくりの姉がいるの。今度、会ってみない? 面白そうでしょ」
「会う! 見たい! どんな人なの!? 先生みたいに、美人?」
「宮、勝手に約束……」
「ありがと、美人って言ってくれて。決まりね!」
何かがおかしいとは、沓は気づけなかった。
担任がどうとかいう話は両親からは聞かなかったからだ。




