愛情をたっぷり受けて育った双子の兄妹
一人は無口な男の子。
一人は饒舌な女の子。
彼らは二卵性の双子として、この世に生を受けた。
完全すぎる正反対な双子だった。
双子なのに、全く意思疎通ができず、喧嘩ばかりをする毎日。
兄も妹も、両親に世話を焼かせてばかりで、元気いっぱいに育った。
面倒見の良い母親。
仕事に熱心だが、子育てには手を抜かない父親。
本当に良い家庭で育ってきた双子の兄妹。
愛情をたっぷり受けて、すくすく育つ。
沓と宮が三つになってからは、毎週の日曜日はお出かけをすることになっていた。
その日は、母親の意向で水族館へ。
「沓、宮、一緒に水族館に行きましょう。お魚さんいっぱい泳いでる箱、見たいでしょ」
「うん! みたい! つれてって、ママ!」
「沓は?」
「いく」
「ふふ。父さん、呼んでくるからね。ちょっと待っていて」
母親は沓と宮の頭をくしゃっと撫でて、父親を呼びに、書斎に行った。
暫くすると、父親を伴って母親が戻ってきた。
父親は二人を軽々と持ち上げて、嬉しそうに話をする。
「わあい! たかいたかーい!」
「ハハッ。沓は、お出かけは好きか?」
「うん」
「そりゃ良かった。宮は水族館、楽しみにしてたもんな」
「うん! おさかなさん、だあいすき! いっぱいおよいでるの、はこのそとからみんなをみるの! かわいいなって」
宮は両手を広げて、自分の感情を父親に伝える。
感情表現が豊かな宮は、ジェスチャーをふんだんに使っている。
一方の沓は無口でそれらが下手だったので、両親を苦労させた。
それでも、両親は『お兄ちゃんだから』という言葉を使わず、ちゃんと話を聞いていたのだ。
寂しい思いをさせないように。
二人にきちんと向き合って、わがままを言わない良い子に育ってくれるようにと。
「沓も宮も、行きたいところがあれば、言っていいんだぞ。普段お前たちに構ってやれないんだから、ちょっとくらいはわしも一肌脱ごうかと思う」
「……おもちゃや」
沓が父親の服をぎゅっと握って、蚊の鳴くような声で呟く。
「そうか。沓は玩具屋さんに行きたいんだな。今度行こう」
「……うん」
「くは、ゆーえんち! ゆーえんちでこーひーかっぷ!」
「宮はコーヒーカップに乗りたいのか。それは再来週だな」
「えー。きょうがいい!」
「水族館にも人がいっぱいいるんだ。今日は残念だが、無理なんだよ」
「じゃー、つぎ!」
「来週は沓の、兄ちゃんの行きたいところに行くからな」
「うー……わかった」




