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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
V 兄と妹

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堕ちた天使

 アキヤが首を振って、ノーを唱える。

「宮の気持ちをわかっているのは、俺だけなんだ」

「それが自惚れなんですよ。家族であれ、兄妹であれ、わからないことはたくさんあります。あなたには見えていない。彼女の気持ちは……第三者にしかわからないんです」

 アキヤの胸倉を掴んで、沓は叫んだ。

「お前に……何がわかる!」

「また、それですか」

「またって何だ!」

「そうやって何がわかる、なんて怒鳴ったところで、こっちは白い目で見るしかないんですよ。そんなものわかるわけないじゃないですか。私は貴方ではないのに。貴方の気持ちを押しつけたところで、現状は何も変わらないんですよ。頭の悪い子供の台詞です」


 胸倉を掴んでいるのに、流暢に話すアキヤを見て沓は不審げに思っている。

 咳き込んで話しにくくなるのが、当たり前なのに。

「女性に向かって、乱暴するのもいただけません。その様子なら、一度くらいは妹さんに暴力を振るったことがあるのでは? ビンタとか、しっぺとか」

「……ない。一度も、宮には」

「そうですか。クさんは貴方の大好きな妹さんですしね」

「それよりお前……」

 沓はアキヤを離してやり、疑問を口にしかけた。

「私ですか? 私に興味を持つとは、思いませんでしたが」

「一体何者なんだ。武術でもしていたのか」


「この姿は仮の姿です。私は、本来は天使。堕ちた……天使です」


 アキヤの正体が、ここでようやく判明した。

「人間のあらゆる負の感情と禁断の愛を好んだために、私は堕天使となってしまいました。であるので、今修行中の身なんです。ふふ……いつ終わるか、わかりませんけどね」

 アキヤは嫌らしい悪魔のような笑みを、沓に向ける。

「堕天使……俺は、そんな奴に罪を洗い流してもらってるのか……」

「そんな奴とは、失敬な! これでも列記とした仮聖職者ですよ? 悪いことにはなりません。寧ろですね、この先いいことばっかり起きることを約束しますよ? 昨日の客人にも言ったことですが」

 沓は難しい顔をして、アキヤの言葉を疑り深く思っているようだ。

「百歩譲ってお前が天使だとして、何故その後の人生が明るいものだと断言できる」

「辛いことがあった人間には、そうなるように私たちが力を貸しているんですよ。信じる者は救われるんです。信じなければいいことなんて、起きっこないですよ」

「……」

「では、帰ってください。私はこれから自室に行かねばなりません。貴方がいては、いつまで経っても懺悔日記を書けないではありませんか」

 アキヤは沓の背中を押して、ドアの外まで追い出した。

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