チート?
アキヤのプライドはズタズタに引き裂かれた。
アキヤの好きな人種は物わかりがいい人種だけだ。
面倒くさい類の人間は苦手なのだ。
この男性もまた、苦手ということだ。
アキヤの天敵。
「筑井……沓」
「チート?」
「誰がごまかし野郎だ。失礼な女だな。俺の名前は沓だ。ちい、と」
「こりゃまたおかしな名前を付けられましたね。貴方の親の顔が見てみたいです。どんな頭してるのか……凄く気になりますね」
「馬鹿にしているのか。俺のことも、俺の親のことも」
頭にきている様子はないが、声が僅かに怒気を孕んでいる。
沓は感情表現が下手なのだろう。
あまり声を張り上げず、小さな声で喋る。
張り合いがなくて、退屈そうにアキヤは目を細める。
「キラキラネームを付ける人間は、変な人間であるに違いありませんから。ミステリーは私の好物でもあります。だから、知りたいのです。この先も、もっと先も、私の知らない世界を知りたいと思います。今日は、貴方の世界を知れる。楽しみで夜も眠れます」
「突っ込み待ちか?」
「いいえ?」
アキヤはクスクスと笑った。
「早く終わらせたいんでしょう? 昔話をしたら、とっととお帰りくださいまし」
「何だその口の利き方は」
「おや、気に障りましたか? 早く終わらせたいのなら、そんな些末なことにいちいち腹を立てている時間はありませんよ。待ち人にどう言い訳するおつもりで? 女にムカついたから、時間がかかった……なんて、馬鹿の言い訳ですからね」
アキヤは人差し指を立てて、意見を述べる。
沓は舌打ちして、アキヤの指示に従う。
「話せばいいんだろう」
「左様でございます」
アキヤはご機嫌な笑顔を浮かべる。
聞き分けのいい人間は大好きだ。
男性はここ一週間の内、誰よりも話し下手だった。
噛み噛みな上に、あっちへ行ったりこっちへ行ったりと話の終着点が見えない。
頭の中で整理できていないのだ。
アキヤは聞くのに苦労して、途中で口を挟んだ。
「その喋り方で、よく早口で喋ろうなどと思いましたね」
「早口で話した方がうまくいくんだ」
「どうせ……男性お得意の俺は何でもできる! と思い込んでるだけで、無能な人間なんでしょうね。恥ずかしいですね、自分で気づきもできないなんて。さぞ周りに褒められて育ってきたのでしょう」
アキヤはありったけの嫌味を沓に言った。
沓は怒っていない。
「俺は周りに褒められるだけの能力は持っているが。お前の目が節穴なだけなんじゃないか? 筑井と言えば有名な家だが、俺もその家に負けない力はある」
「ほほう……力はあっても、周りは認めてくれないっていう、思春期真っ只中な恥ずかしい人種ですね。わかりますよ、貴方の気持ちは」
「名前を知っても貴方呼びは変わらないのか」




