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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅳ 女と女

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矛屡と小痲は同じなんだ

 小痲は矛屡に聞こえないように、ぽつりと呟く。

「あたしとあなたに似ている部分なんて、あるのかしら……」

「あるよ。気づいてないだけだから」

「あたしのことなんだから、あなたよりも詳しいに決まっているじゃない。知った風な口を利かないで。不愉快だわ」

「他人から見た自分という窓があるじゃん。それだよ」

「ジョハリの窓のこと? あたしは信じないわよ。あたしが信じられるのは、自分だけだもの。第一、あなたとコミュニケーションを取っているとは、思っていないわ」

「会話することがコミュニケーションなんだからさ、目が合って睨み合うこともコミュニケーションなんじゃないかなー」

「呆れた解釈ね。コミュニケーションは双方の豊かな心身がないと駄目なのよ」

 小痲のいささか難しい言い回しに、矛屡は首を傾げて意味を問う。

「どういう意味?」

「互いに思い合う気持ちがなければ、コミュニケーションが成立しているとは言えないのよ。会話だけでコミュニケーションが成立しているのなら、喧嘩して意見が食い違っていても、コミュニケーションが成立していることになるでしょう。そんなのをコミュニケーション力とは言わないの」

「あたしが聞いたら、ちゃんと答えてくれる。あたしと小痲さんも、コミュニケーション取ってるじゃん。違わないでしょ」

 矛屡は小痲の手を取って、ニコッと笑った。

 小痲は苦笑いを返した。


「あたししか信じないって言ってるじゃない」

「じゃあ何で、あたしに体の傷見せてくれたの? あたしのこと、信じてないの、それで」

 矛屡の質問に小痲は言い淀んだ。

 矛屡も自分の服を脱いで、小痲に見せた。

 小痲のものよりも酷い、腹の深い切り傷を平然とした顔で見せた。

 その他にも癒えていない傷がたくさんあった。

 小痲の予知は外れたのか、唖然としている。

「あたしもね。ちっちゃい頃から空気読めない発言ばっかりしてきて、いじめられたんだよ。この体の傷は他人につけられたものばっかりじゃない。だから、あたしは君の気持ちがわかる。同じなんだよ、あたしたちは。どこかで通じ合ってると思ってた。あたしは、小痲さんのその傷に、引いてないから」

 暗い話も明るい笑顔で吹き飛ばすように、重い言葉を軽い口調で言った。

「あたしの取り柄は、明るいことだけだからね」

「そんな……あたしの予知じゃ……」

「あたしはまた奇跡を起こしたんだね」

「いいえ、違うわ……奇跡は二度起こらない。これは必然よ……」

 ごくりと唾を飲み込んだ小痲は、矛屡の顔を見て続ける。

「あなたがあたしを変えてくれる人かもしれないのね……」

「……変わりたいんだ……」

「そうよね。あなたは変わらないあたしが好きなんでしょう。あたしが変わったら、あなたは好きではなくなるわよね」

「違うよ。ちょっとビックリしただけ」

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