恋愛は気の迷いか、否か
気づけば中学三年生になっていて、中学校を卒業していて、高校にまで入学していた。
走馬灯のように流れていく人生を、矛屡は送っていたのだ。
意味のないことを繰り返して、意味のないことに時間を費やしていた。
小痲を追いかけるために行きたかった高校に行くのをやめ、友達との交流も断り、好きな部活もやめた。
好きだったことを犠牲にしてまで、得られたものはあったのか?
何一つなかった。
小痲の言うように、時間の無駄だったのだ。
「でもここまで来たら……諦められないよ……」
高校生になって違うクラスになっても、小痲のクラスに通い詰めた。
馬鹿にされ、邪険にされるとわかっていても、矛屡は小痲のことを嫌いになれない。
それこそ病的なまでに、どんどん好きになっていく。
「ここで引くのが賢い選択なんだけどね。あなたは、いつまで馬鹿を見れば気がすむの。失うものは多い方がいいのかしら? まだ痛い目を見たい? 恋愛なんて、一時の迷いじゃないの。何ですぐ諦めがつかないの。頭悪いわね」
「勉強は同じくらいできると思うけど。でも、小痲さんよりも頭は悪いかもしれない。頭を補ってくれるのは、君だから。それでもいいと思うんだけどなあ」
「あなたのブレーンになれって? 冗談じゃないわ。誰がそんな面倒なことするのよ。薄汚い男にでも頼みなさい。あたしは頭使うと眠くなるのよ」
小痲の毒舌がいつにも増して火を噴く。
「小痲さんさ。過去に何かあったの?」
「人の過去にまで、立ち入らないでくれる? プライバシーの侵害よ」
「言葉遣い汚いし、人間嫌いだし。何か変だよ」
「変は褒め言葉よ。あたしの名前も、素晴らしいから変なんじゃないの」
腕を組んで小痲は誇らしげに語った。
「小痲さんは自分の名前に誇りを持っているんだね」
「あたしの名前だもの。名前には特別な意味があるのよ。あたしの名前にも、特別な意味くらいあるわ」
「あたしにはないよ。どんな意味?」
「大麻よりも小さな影響を及ぼすようにって意味よ」
「それが特別なんだ。へえー」
「あなたには、理解できないかしらね」
「うん、流石に。それはわかんないや。ムズイ」
矛屡が正直に答えると、小痲は悲哀に満ちた表情で俯いた。
何かまずいことをしたかと矛屡が慌てると、小痲は何も言わずにそっぽを向いた。
高校ではそれ以来、小痲が矛屡と話をすることはなかった。
今にしてわかったことと言えば、小痲は矛屡に話を理解してもらうのが楽しかったみたいだった。
他者に言ってもわかってもらえないことを、矛屡はわかってくれる。
それが楽しくてたまらなかったらしい。
だが、それは自分が楽しいだけで矛屡の時間を無駄にさせているのだと小痲は気づいていた。
小痲に対する恋心に没頭するほど、将来を見失う。
それが小痲には見えていた。




