不変のものなんて、ありはしない
「あたしの隣には、いつも空気がいるから」
そうやって、矛屡が小痲を誘っても仲間になろうとはしなかった。
言葉を交わすことは好きでも、混ざり合うことを嫌ったのだ。
友好関係を築けないでいても、いつしか本当に好きになっていった。
小痲のことを好きになるなどと、矛屡も考えたことがなかった。
しかし、矛屡は小痲に想いを告げた。
玉砕覚悟で、告白したのだ。
「変わらない君が好き」
「なら、変わってあげるわ。それでいいかしら?」
「変わらないで欲しいよ。ずっとそのままの君でいてくれたらいいな」
「不変のものなんて、この世に存在しないのよ。変わらないものが好きだなんて、それは本当の愛じゃないわ。あたしを好きになるのなら、変わることも覚悟なさい。あたしに釣り合うことも前提でね」
「あたしたちはお似合いだと思うけどな」
「それも主観。あなたのお気楽な考え方によるものでしょう。あたしの意見は違うわ。あなたは話し相手としては上出来だけど、それ以上の関係になるのはてんでダメよ。時間を浪費するだけで、何の見返りもないわ。あなたには、それほど価値がない」
「今こうして話をするのも無駄だってこと?」
「そうね。できればあなたと話をするのも、もうやめにして欲しいんだけど。あなたはやめないんでしょう。あたしの意見をありがたく頂戴してるものね」
「あたしは欲しいものは必ず手に入れるからさ」
「なら、引いてみなさい。あたしの心を引き寄せてみれば? その時間を、くだらない趣味にでも当てれば、少しは将来の夢に近づけるかもしれないのに。馬鹿な人ね」
矛屡のことを憐れむように、小痲はため息交じりに言った。
「どうでもいいことだったら、最初から興味持たないからさ。あたしは君に恋したのであって、恋に恋してるわけじゃないからね。君そのものが好きなんだよ。自分でもわかんないんだけど、その性格に惹かれてるんだと思う」
照れ臭そうに頬をかく、矛屡。
矛屡の健気さに小痲は心底呆れている。
諦観の意を持つ据わった瞳で、矛屡を射抜いた。
「そう……。まあ、人生、そう短くもないかもしれないわね。時には寄り道も必要なのかしら。でもこれだけは覚えておいた方がいいんじゃないかしら」
「ん?」
「あたしは、恋愛なんてくだらないものに現を抜かしてる奴は、嫌いなのよ。だから、あたしも恋はしない。人も好きにならない。嫌いなまま。あなたも、あたしも、家族も、人間という奴は、全員嫌い。全員いなくなればいいのに。そしたら地球も安泰だわ」
「変わらないものはないって言ってたじゃん。だから変えてみせるよ。小痲さんはきっと、あたしが好きになる。あたしはもっと、小痲さんを好きになるよ」
「それが無駄だというのが……わからないの……」
矛屡は小痲を振り向かせてみせると意気込んでいたが、小痲の心は不変だった。
心変わりしない小痲に、矛屡は猛烈に当たって砕けていく。
全ては小痲のために。
小痲を想って、彼女を変えてみせようと矛屡は行動を起こしていた。




