へこたれない矛屡
「いいや。小痲さんは、本当は寂しがり屋だから。あたし、わかるんだ。人の、そういうところ。小痲さんは心の中で寂しいって言ってる」
「確信するようなことでもないわ」
首を振る小痲に、真剣な表情で相対する矛屡は、小さな声で呟いた。
「ちゃんと、届いてるよ」
自分の胸に手を当てて、矛屡は小痲に告げる。
「あたしの心にはね」
矛屡と小痲の会話は、まるで恋人のようだとたちまち噂が広まっていった。
そんな噂に赤面して少しは丸くなるかと思われたが、小痲は全くぶれなかった。
「女同士で恋人? そんなのクソくらえよ」
「とある人によると、女同士の恋愛は綺麗なんだって」
「それはそれが好きな人が言ってることじゃないの。好きな人間が言うことなんて、主観に決まってるわよ。綺麗なんていうのは、ただの妄想。ただの理想。現実的じゃないわ。もっとグログロ、ドロドロしたものかもしれないじゃない」
鼻で笑って、小痲は他者の夢をぶち壊す。
リアリストの小痲の意見は鋭く、的を射ている。
しかし同時に、多くの人を傷つけるもの。
だからこそ正論は嫌われるのだ。
そんな小痲の意見を、楽しげに聞くのは、矛屡ただ一人。
「でもあたしが話しかけたら小痲さんは話してくれるよね」
「あなたが話しかけるのをやめたくなるまで、いつだって話してあげるわよ」
「そんな未来は、一生来ないと思うけどな」
矛屡の精神力は強い。
小痲に暴言を吐かれても、怯まない。
どれだけ否定されても、矛屡は何度も立ち向かえる。
強すぎて、気持ち悪いと言われても、矛屡は性格を変えなかった。
人間らしくなくても、これがあたしだと言い張った。
「どこから来るのよ、その強さは。信じられない。あなたは人類?」
「あたしはどこからどう見ても人間だよ。小痲さんも同じ人間。あたしたちはちょっと変なだけ。ちょっとみんなと違うだけ。でしょ?」
「……同意を求められると無性に腹が立つのよね。一発殴ってもいいかしら」
「うん。いいよ」
「遠慮しないわよ」
矛屡も矛屡で性格に一貫性があり、小痲とのコンビネーションは完璧だった。
矛屡と過ごしていく内に、小痲の性格に変化が現れるだろうと矛屡は思っていたのだ。
その予想は、大いに外れた。
「一緒にご飯食べようよ」
「壁と話しながら食べてなさい」
「一緒にトイレで話でも」
「ありふれた話題は手洗い場で流してしまいなさい」
「一緒に帰ろう」




