友達なんて、邪魔なだけだと言う小痲
明るい声で、矛屡は小痲に言う。
「楽観的なのね」
「うん。そうだよ。あたしは明るく生きるって決めてるんだよ。ハハ」
「物事を楽しく観るっていうのは、いいことだわ。でもね、楽しいばっかりじゃ世の中やっていけないのよ。奪い奪われるから価値が生まれるの。失い失われるから好きなものができるの。悲しみはね、人に最も必要な感情なのよ」
「難しいこと言うね」
「あなたには理解できなかったかしら」
小痲が目を逸らして、窓の方を向く。
矛屡にがっかりしているのだ。
「がっかりすることないよ。あたしはわかるよ。小痲さんの考え」
「だから名前で呼ぶなと……」
「あたしには悲しいっていう感情はないよ。だって全部忘れるもん。悲しいこととか、そんなもん覚えてても自分を縛るだけで何にもならないし。それよりもっと楽しいことや嬉しいことがあるって考えてる。悲しいことなんて、すぐ吹き飛んじゃうからね」
矛屡は小痲の心を震わせる意見を述べ、にっこり笑顔になる。
「笑いなよ。小痲さん」
「……何で」
「何か見たくなった。君の笑顔」
「それってどんな感情?」
「愛情……かな」
「気持ち悪いわね。反吐が出るわ」
「んーそうかあ……でも、小痲さんに気持ち悪いって言われても、傷つかないや」
「何でよ」
「可愛い子の言葉は愛情の裏返し、みたいでさ」
矛屡はへらへらと笑って、小痲を怒らせた。
「可愛いなんて聞き飽きた言葉、聞かせないでくれる? そんなもの、嬉しくも何ともないわよ。ただ不快なだけ。そんな表面だけしか見ていないような言葉で、あたしを謀らないで。あなたのその表情も、あたしという火に油を注ぐだけよ」
矛屡と小痲は互いに中学二年生だった。
矛屡は思い当たる節があって、疑問をぶつける。
「それって、何かの病?」
「何病と言いたいのよ! あたしを否定する言葉は、許さないわよ」
小痲は机を握り拳でドンと叩いた。
クラスメイトがちらりと小痲を見た。
「何見てるのよ。言いたいことがあるなら、あたしに勝ってからにしなさい」
「小痲さん、友達いないでしょ」
「そんなもの、要らないわ。弱い者同士で仲良しごっこなんて、あたしの性に合わない。あたしの人生に百害あって一利なし。邪魔なだけよ」
矛屡のデリカシーのない言葉にも小痲は堪えた様子も見せず、持論を言った。
「あたしと友達になったら、楽しいと思うよ」
「断言することじゃないわ。あたしの性格、わかってて言ってるの? あなた、可能性の問題って知ってる? あなたの言ったことは間違いだわ」




