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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅳ 女と女

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友達なんて、邪魔なだけだと言う小痲

 明るい声で、矛屡は小痲に言う。

「楽観的なのね」

「うん。そうだよ。あたしは明るく生きるって決めてるんだよ。ハハ」

「物事を楽しく観るっていうのは、いいことだわ。でもね、楽しいばっかりじゃ世の中やっていけないのよ。奪い奪われるから価値が生まれるの。失い失われるから好きなものができるの。悲しみはね、人に最も必要な感情なのよ」

「難しいこと言うね」

「あなたには理解できなかったかしら」

 小痲が目を逸らして、窓の方を向く。

 矛屡にがっかりしているのだ。

「がっかりすることないよ。あたしはわかるよ。小痲さんの考え」

「だから名前で呼ぶなと……」

「あたしには悲しいっていう感情はないよ。だって全部忘れるもん。悲しいこととか、そんなもん覚えてても自分を縛るだけで何にもならないし。それよりもっと楽しいことや嬉しいことがあるって考えてる。悲しいことなんて、すぐ吹き飛んじゃうからね」

 矛屡は小痲の心を震わせる意見を述べ、にっこり笑顔になる。


「笑いなよ。小痲さん」

「……何で」

「何か見たくなった。君の笑顔」

「それってどんな感情?」

「愛情……かな」

「気持ち悪いわね。反吐が出るわ」

「んーそうかあ……でも、小痲さんに気持ち悪いって言われても、傷つかないや」

「何でよ」

「可愛い子の言葉は愛情の裏返し、みたいでさ」

 矛屡はへらへらと笑って、小痲を怒らせた。


「可愛いなんて聞き飽きた言葉、聞かせないでくれる? そんなもの、嬉しくも何ともないわよ。ただ不快なだけ。そんな表面だけしか見ていないような言葉で、あたしを謀らないで。あなたのその表情も、あたしという火に油を注ぐだけよ」

 矛屡と小痲は互いに中学二年生だった。

 矛屡は思い当たる節があって、疑問をぶつける。

「それって、何かの病?」

「何病と言いたいのよ! あたしを否定する言葉は、許さないわよ」

 小痲は机を握り拳でドンと叩いた。

 クラスメイトがちらりと小痲を見た。

「何見てるのよ。言いたいことがあるなら、あたしに勝ってからにしなさい」

「小痲さん、友達いないでしょ」

「そんなもの、要らないわ。弱い者同士で仲良しごっこなんて、あたしの性に合わない。あたしの人生に百害あって一利なし。邪魔なだけよ」

 矛屡のデリカシーのない言葉にも小痲は堪えた様子も見せず、持論を言った。

「あたしと友達になったら、楽しいと思うよ」

「断言することじゃないわ。あたしの性格、わかってて言ってるの? あなた、可能性の問題って知ってる? あなたの言ったことは間違いだわ」

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