天の力
「では私はこれから懺悔日記を書きに行くので、そろそろお家へお帰りください」
「懺悔日記って?」
「先程説明した通りです」
目を輝かせている矛屡を見て、アキヤは嫌な予感を本能で感じ取る。
「あたしも見たいんですけど」
「それは駄目ですね。私の懺悔日記には天の力が込められているので、人間の貴女が見ると、見てはならないものまで見えてしまうかもしれませんよ」
アキヤは矛屡を脅して、矛屡の好奇心を壊そうとした。
相手の性格をよく知らずにみすみす話してしまったのはアキヤだが、どうにか諦めてもらわなければならない。
「それって、何ですかね」
「貴女の寿命など」
「見たいですね」
「好奇心猫を殺すと言います。やめておいた方が身のためですよ」
慣用句を使って、説得を試みるが、矛屡は食い下がる。
「いやいや。教えておいてそれはないですよ……押すな危険っていうボタンぶら下げてるだけじゃないですか」
「わかりやすいたとえですね。貴女の性格を誤解していたようで、申し訳ありませんでした。先程聞いたことは忘れてくださいね」
アキヤは矛屡の額に手を翳す。
アキヤは驚いて何かを言いかけた。
「なん……」
「汝の憶えられし記しを、今ここに解き放たん」
矛屡の額が光り輝き、矛屡は気を失った。
アキヤに向かって倒れていく。
矛屡を受け止めて、アキヤは椅子に寝かせた。
矛屡は寝息を立てて、すやすやと眠っている。
「神に怒られてしまいますね」
ふうとため息をついて、アキヤはにこりと含みのある笑みを浮かべる。
「たまには悪いこともしたくなります」
自室に戻って、アキヤは懺悔日記を書く手筈を整えた。
「同性愛というものは、日本ではあまり認められていませんが、海外ではよくあることです。結婚も許されています。未だ根強い反対派もいますし、世間の風当たりも少々きつめですが……そこまで言うほど、禁断ではないですよね。まあ……子孫繁栄ができないことが残念でならないのですが」
アキヤは万年筆の先にインクをつけて、懺悔日記を記す。
「子供を産まないのは悪とされます。私はそれには同意しませんが、それも一つの理ではないかとも思います。子供がいなくなれば、困るのは今を生きている人だけではないですからね。故に、子供は愛の上で正義なのです。守らねばなりません」
アキヤは熱く語りながら、書き始めを考えた。




