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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅳ 女と女

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アキヤの感情

 アキヤはわざとらしく眉を下げて、悲しげな表情をした。

「ええ!? どうしたんですか? 急に。何か気が強そうなのに、何か気が弱そうな……」

「優しいですね。ちょっとからかってみただけですよ」

 舌を出して、アキヤは矛屡を困らせた。

「藺草矛屡一生の不覚! 美人なシスターさんに騙されてしまったあ!」

 額を押さえて天を仰ぐ矛屡の言動に、アキヤはクスクスと笑った。

「面白い方ですね。では、お話を聞きましょうか」

「あいさー!」

「私は上司ではありませんよ?」

「細かいことは気にしないっ」

「そうですね……失礼しました」

 矛屡のペースに乗せられまいとしていたが、結局は矛屡の思うツボだった。

 アキヤは人に流されやすいのかもしれない。


 矛屡の話は昨日の无子の話に比べれば、波乱万丈な人生ではない。

 しかし、彼女にも彼女なりの苦悩があり、他の人間の人生と比べるのもおかしな話だ。

 アキヤは微笑んだ。

「辛い思いをされたのですね」

「ハハ、そうですね……でも、シスターさん、感情こもってないですよ」

「いちいち癇に障る言い方を……」

「シスターさんこそ」

「アキヤです」

「ハハッ、アキヤさん」

「人の辛い話を聞いた時、同情するのが良いと聞きました。実践したのは、貴女が初めてですけど。実験台になってください」

「酷いですなあ……実験台なんて。もっといい言い方ないんですか?」

「私は語彙が乏しいもので」

 とアキヤは困った時の言い訳を口にした。

 アキヤの言い訳を、矛屡が咎める。

「アキヤさんって、人間味ないですよね」

「はい? 人間ではないので」

「乏しいのは語彙じゃなくて、感情なのでは?」

 矛屡の疑問は核心を突いていた。

 アキヤに足りないのは、感情だった。


「ばればれでしたか。いやはや、矛屡さんは審美眼に優れているようですね。お見逸れしました。これでも色々と考えてはいるんですよ。色々な感情を知るようにしています」

「あ、何か、あたし失礼なこと言いましたね……すいません……」

 矛屡がアキヤにぺこりと軽く謝る。

「昔っから、要らんことばっかり言ってて。それで人に嫌われたりしてたんですけど。その癖もまだあるみたいで……不快にさせてしまってたら、すいません」

「そういうことは、初めに言っておくのがいいですけどね」

 アキヤはクスクスと笑う。

「そうですね……ハハハ」

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