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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅳ 女と女

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藺草矛屡という女性

「はい。私は人外ですよ? アブノーマルという括りではなく、現象という括りが正しいかと思いますね」

「現にこうして、あたしの目に見えてるのに、ですか?」

「目に見えるものが正しいとは限らないんですよ。貴女の目に見えるものは、私が存在しているということ。修道女の服を着ているということ。それだけが正しいとは限りませんよ。この世は謎だらけ。ミステリーに満ちているのです」

 アキヤは両手を広げて、いつもの調子で語り出す。

「禁断の愛もミステリーに満ちている。貴女の禁断の愛を知り、私はそれを日記に記す。貴女は晴れて罪を洗い流され、自由の身となる。その先の人生は、幸せなものとなることを約束します。我々の力であなた方を良き場所へと導くのです」

 この教会が建てられた真の意味を、アキヤは女性に教える。


 女性は感心したように口を開けて、アキヤの話をしっかりと聞いていた。

「ただ……貴女の話が、波乱に満ちた人生でない場合、それは叶わぬことなのですが。話を聞いてみなければわかりませんけれど、必ずしもそうなるとは思わないでいただけますか? これを話したのは、貴女が初めてですけども。何故話されたかは、わかりますね?」

「大丈夫です。まともな人生送ってませんし。ハハハ……」

「それは大丈夫とは言えない話ですね。では、儀式を始めましょうか」

「お願いしまーす」

 軽い口調で、女性はぺこりとお辞儀をした。

 アキヤは頷く。

「今ここで汝の罪は洗い流されることになろう」

「ありがたや、ありがたや……」

 女性は手を擦り合わせて、拝み倒した。


「さて、貴女のお名前を聞きましょうか。私はアキヤです」

「あたしの名前? 何故このタイミングで?」

「いきなり名前を聞かれると人は警戒してしまうものなので。できるだけ話をしてから聞くことにしています。私の方針で」

「なるほどー。一理ありますね。あたしは藺草矛屡(いぐさむる)って言います。宜しくです」

「いぐさ、むる……個性的な名前ですね」

「変って言ってくれていいんですよ? 何回も言われましたし。褒め言葉だって思ってますからね。変なのは、別に悪いことじゃないって、あたしの好きな子も言ってました」

「むるさんの恋焦がれていた人も、変わった名前なんですか」

「そりゃもう。あたしを凌駕するほどの変わり者ですよ。変な子だって言われてたし」

「……女性、ですか」

「そうですねー。ハハ。あたしも、女の子好きになるとは、思いませんでしたよ」

「元々は男性が好きだったんですね」

「もちろん。だって、かっこいい人とか見たらドキワクするじゃないですか」

「私が同意すると思いますか?」

「同意して欲しいわけじゃないんですよ。ってか、シスターさんちょっと厳しくないですか? 何か聞いてた噂と全然違う……」

「冷たいですか、私は……。貴女とは仲良くなれそうだと思っていましたが……私はどうやら嫌われてしまったようですね」

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