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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅲ 親と子

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无子の怒り

 无子に酷いことをした少年も、こんな気持ちだったのかもしれない。

 決定的に違うのは、无子は敗者側だということ。

 弱者だから強者を虐げてみたくなる。

 悪いことをして困らせて、怒らせたい。

 誰かを傷つけたい。

 無性にそんな思いが込み上げてくる。

 无子の原動力となって、无子の精神を蝕む。

 罪を重ねていた无子に、遂に罰が下った。


「出頭してくれ」

「……え」

「もうこれ以上は見てられん。今日で君は解雇だ。そして君は少年院に行くべきじゃないか。学校で一体何を学んできたんだ。社会人としてのマナーもなっちゃいない。もう私には君に教えることは何もないよ。牢屋で学ばなきゃわからないようだから」

「…………」

「行きたくないとは言わせないよ。みんな今まで我慢してきたけどね。もう無理なんだよ。明らかに犯罪だ。私のペットを傷つけたこと、あれも犯罪なんだよ」

「そうですね」

「……ちゃんと意味をわかっているのかい?」

「はい」

「……じゃあ、一緒に行ってあげよう」

「…………」

「どうしたんだい?」


 无子は社長に向かって、気持ちを吐き出した。

「何でそう、上からしか物を言えないんですか。私が弱いからですか。私が神様に愛されていないからですか。私が不要な人間だからですか。何でそんな風に私のことを見下すんですか。同じ人間なのに、どうして上下があるんですか?」

 長年思っていたことを、无子は問う。

 答えが欲しいわけじゃない。

 ただ言いたいだけ。

 もう二度と自分の意見は言わないと思っていたのに、それだけは言いたかったのだ。

「……」

「どうして、優劣があるんですか……。私はそんなに、醜い人間ですか……」

 无子の気持ちを、社長は受け止められなかった。

 代わりに、こんな言葉を言い放つ。

「みんな仲良く一緒だったら、私が贅沢できないじゃないか」

「……!」

「不平等だからこそ、欲しい物を手に入れたくなるものだ。違うかね? 金も名誉も地位も、平等だったら意味がない。優劣がなければ、面白くも何もない。ちっぽけな世界になってしまうとは、思わんかね」

 社長の持論は、无子の怒りを買う。

「あなたみたいな人間こそ……死ねばいいのに……」

「なっ!」

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