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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅲ 親と子

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この子は私が守る

 ここからがスタートライン。

 无子は无斗のために、就職先を必死に探す。

 アルバイトでも社員でも何でもいい。

 とにかく金を稼げれば、後はどうにかなる。

 あの少年ではないが、神に愛されていない者ならば、无子はとっくの昔に命を落としていたかもしれないじゃないか。

 何度も命を絶とうとして、何度も生き延びているのだから。

 愛されていないはずがない。

 この先、少年よりも長く、无斗のために生きることになるのだから。


 人生というものは、わからないことだらけ。

 不幸が連続して起きることもあれば、幸ばかりが目立って不幸を忘れることもある。

 誰しも辛い時期があって、幸せな時期がある。

 そう教えられた无子は、幸せを求めてひたすらに走り続ける。

 二度と馬鹿なことをしないように、仕事に生きることを決めたのだ。

 恋愛すれば、また同じように悪い男に騙されてしまうかもしれないから、无子は男性に言い寄られても、きっぱりと断った。

 初めから拒絶した。

 これは自分の意見ではない。

 そうした方がいいと専属の医師に言われたからだ。


 无子は仕事帰りに、度々医師のところに通った。

「その後はどう。赤ちゃんがいると、仕事はできなくなるけどね」

「そうなんですか。この子、凄くいい子で、私のために我慢してくれているのかもしれません」

 无子は无斗の頬をつっついた。

 无斗はニパッと笑う。

「幼い時から親の気持ちも理解できる子供は、早々いないよ。大事にしてあげてね」

「はい」

「そうそう……何かあった時じゃ遅いから。もし自分一人では無理だったら、私に相談しに来るといい。私が息子さんを預かるからね。男性恐怖症がなくなることはないだろうけど、私は医師だ。あなたに悪いことはしない。約束しよう」

「……はい」

 无子は思っていたことを口にしなかった。


 約束なんて、一度も守ってもらったことがないと。


 无子は医師の言葉を信じなかったのだ。

 何度も辛酸をなめた无子は、他人を信じられなくなっていた。

 一生かかっても、人のことを信じられなくなってしまうほど、受けたダメージは大きい。

 まして、精神が未熟で発展途上だった无子には、全てが早すぎた。

 降りかかる災いが、もっと遅ければ、无子の心も不安定ではなくなっていただろうに。

 優しくしてくれた爺さんも婆さんも、もういない。

 天国から見守ってくれているという考えはない。

 頼れる宛もなく、頼りたい人間もいない。

 医師は頼ってくれていいと言うが、下心がないかどうかも怪しい。

 自分一人の力だけで生きていくのだ。

「この子は……私が守る」

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