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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅲ 親と子

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血の繋がった家族のために

「あの子の話はするな。飯がまずくなる」

「……」

「あの子が来てから、わしの営業成績はガタ落ち。子供もいじめられ、親子の仲は悪くなるし、お前との仲も悪くなってきてる。偶然とは言えないこの有様だ。このままじゃ仲良し一家とも言えなくなるな。……まだあの子の肩を持つなら、離婚するか?」

「それは嫌ね。あなたとは一生を添い遂げるって約束したじゃない。この約束に比べれば、あの子との約束なんて、たいしたことないわよ。本当の家族の方が大事よ」

「お前なら、そう言ってくれるって信じてた」

「あの子を引き取ってくれる人を捜しましょう」

「そうだな。あの子も自分を大事にしてくれる人の方がいいだろう」

 无子の心に、どんどん闇が深まっていく。


「……叔母さんは……私の味方じゃないんだ」

 无子はそう呟いて、裸足で赤ちゃんを抱いて家を出ていった。

 言いたいことも言えずに、人の意見を鵜呑みにする。

 生きている価値がないと言われたようで、自分の命など、もうどうでもいいと思ったのだ。

 誰にも愛されていない人間が、生きていても仕方がない。

 ここらで人生に幕引きしよう。

 だが、无子がいなくなると赤ちゃんはどうなる。

 せっかく産んだ命だ。

 奪ってしまうことはない。

 せめて赤ちゃんだけでも生きていけるように、无子は保健所に預けようとした。


「……うー」

「おしっこしたいの?」

「うう」

「うんち?」

「うううー」

 赤ちゃんの心を无子は理解できていない。

 赤ちゃんは泣き出した。

 ぎゅっと小さな手で胸を触る。

 少年の時のようにきつくではなく、温かく柔らかいもち肌の手で。

 无子はその手をそっと掴んで、聞いた。

「……私のために、泣いてくれるの?」

「うあうー」

 赤ちゃんのために、もう少しだけ生きてみようと无子は心に誓った。




 无子は働く決意をした。

 借金を返すことが先決だが、まずは赤ちゃんを養うため、赤ちゃんのために生きる。

 汗水垂らして、日々を生きていく。

「私、ちゃんと生きるからね。无斗」

「うー」

 まだ幼い赤ちゃんの、无斗の小指を掴んで、无子は指切りをした。

 責任を持てるようになって、无子は再び、人のために頑張ることにした。

 いや、今度は人のためじゃない。

 血の繋がった家族のために、心血を注ぐのだ。

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