こどもを産む決意
婦人科へ行き、医師と相談した。
「……最近多くてね。そういう人。責任もないのに、やるだけやって。命を一体何だと思っているんだろうね。……あなたのことじゃなくてね。あなたは酷いことされたし、産みたくなければ産まなくてもいい。まだ中学生のあなたにこんなこと言うのはあれだけど……決めるのはあなただから。私は決められない」
「私の判断はいつも間違っているので、決めてください」
やつれた顔つきで、无子は医師にそう言った。
「……私が決めるとなると、何かあった時も私の責任になるんだけど……その時に、私を訴えるのなら、私はその責任は負いかねます。あくまで、妊婦さんの自己責任でお願いしてるんだよ。判を押すのも、その人の意思だからね。私たちは代理」
医師はハッキリと気持ちを伝えた。
「私の責任でいいので。お願いします。もう私は自分では決められません。無理です」
「……じゃあ、産みましょう」
「わかりました」
「幸い、あなたは体力もあるし、十分に子供を産めるほどに成熟している。中絶するには惜しい命です。教育はあなた一人でしなくてもいい。借金もたくさんあるようだし」
「はい」
「誰かを頼らないと、生きていけないよ」
「はい……」
医師の言葉はもっともな言葉だった。
无子は一人で生きていくこともできず、昔捨てた母親の親戚の元に引き取られた。
借金は自分で返すという条件つきで、大人になるまでは養ってもらえる約束だったのだ。
それを叔母たちは守っている。
无子が子供を産むということを知るまでは。
叔母には子供を産むことを言えなかった。
言い出しづらかったのだ。
腹が見るからに出っ張ってくるまで、叔母も気づかなかった。
「……ねえ、そのお腹。どうしたのよ」
「これ、これは……」
「あなた、そんなに太ってないでしょ? 何でお腹だけ膨らんでるの。もしかして、その歳で妊娠……なんてしてないでしょうね」
「……」
「どうしたの。はっきり答えなさい。嘘吐いたら承知しないからね」
「ご、ごめんなさい」
「妊娠したの?」
「は、はい」
「いつ? どこで? お金は」
叔母は怒っているわけではなく、心配して叱っているような口調で无子に問う。
「えっと……昔……その……」
「うん。続けて」
「彼氏だと思ってた人に、無理矢理されて……」
「……そんな奴、ムショに送ればいいじゃない。何でそんなのに負けたの」
「それどころじゃなくて……」
むせ返るような辛い記憶を蒸し返させられ、无子は静かに泣いた。




