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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅲ 親と子

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こどもを産む決意


 婦人科へ行き、医師と相談した。

「……最近多くてね。そういう人。責任もないのに、やるだけやって。命を一体何だと思っているんだろうね。……あなたのことじゃなくてね。あなたは酷いことされたし、産みたくなければ産まなくてもいい。まだ中学生のあなたにこんなこと言うのはあれだけど……決めるのはあなただから。私は決められない」

「私の判断はいつも間違っているので、決めてください」

 やつれた顔つきで、无子は医師にそう言った。

「……私が決めるとなると、何かあった時も私の責任になるんだけど……その時に、私を訴えるのなら、私はその責任は負いかねます。あくまで、妊婦さんの自己責任でお願いしてるんだよ。判を押すのも、その人の意思だからね。私たちは代理」

 医師はハッキリと気持ちを伝えた。

「私の責任でいいので。お願いします。もう私は自分では決められません。無理です」

「……じゃあ、産みましょう」

「わかりました」

「幸い、あなたは体力もあるし、十分に子供を産めるほどに成熟している。中絶するには惜しい命です。教育はあなた一人でしなくてもいい。借金もたくさんあるようだし」

「はい」

「誰かを頼らないと、生きていけないよ」

「はい……」

 医師の言葉はもっともな言葉だった。


 无子は一人で生きていくこともできず、昔捨てた母親の親戚の元に引き取られた。

 借金は自分で返すという条件つきで、大人になるまでは養ってもらえる約束だったのだ。

 それを叔母たちは守っている。

 无子が子供を産むということを知るまでは。

 叔母には子供を産むことを言えなかった。

 言い出しづらかったのだ。

 腹が見るからに出っ張ってくるまで、叔母も気づかなかった。


「……ねえ、そのお腹。どうしたのよ」

「これ、これは……」

「あなた、そんなに太ってないでしょ? 何でお腹だけ膨らんでるの。もしかして、その歳で妊娠……なんてしてないでしょうね」

「……」

「どうしたの。はっきり答えなさい。嘘吐いたら承知しないからね」

「ご、ごめんなさい」

「妊娠したの?」

「は、はい」

「いつ? どこで? お金は」

 叔母は怒っているわけではなく、心配して叱っているような口調で无子に問う。

「えっと……昔……その……」

「うん。続けて」

「彼氏だと思ってた人に、無理矢理されて……」

「……そんな奴、ムショに送ればいいじゃない。何でそんなのに負けたの」

「それどころじゃなくて……」

 むせ返るような辛い記憶を蒸し返させられ、无子は静かに泣いた。

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