幻想を壊される
中学一年生の二人が、楽々とラブホテルに入れてしまった。
「ねえ。本当に大丈夫?」
「何が。別に俺らだけじゃないし。お前がいつも言うように、『みんなやってる』『みんな言ってる』ことと一緒。ばれなきゃ何しても許されるんだよ」
「それはめちゃくちゃだよ……風営法っていうのがあるみたいで、一八歳未満は利用禁止なんでしょう? だったらちゃんと言って、謝らないと」
「他の奴もやってんのに、何で俺らだけ謝らないといけないんだよ。おかしくないか?」
「そんなこと言ってたら、誰もルールを守らなくなっちゃう。何のためにルールがあるのか、わからなくなっちゃうよ」
「ルールって、自分で作るもんだろ」
「そんなことないよ。社会の規範がルールなんだから」
少年の無茶苦茶な暴論を、論破し続ける无子に、少年は嫌気が差した様子。
「なら。これから俺がやることは、正しくないって言うのか?」
「どうしたの……〇△君らしくないよ」
「どうしたもこうしたもない。俺は元々、お前とヤるためだけにお前に近づいたんだから。それでもって、お前の恥ずかしい姿を撮って、金をもらう」
耳を疑うような言葉を、无子は聞かされた。
「俺の子供を妊娠したら、少子化社会もちょっとは改善されるよな。そしたら俺は正義のヒーローになれる。少子化社会を救った、ただ一人の男に。俺はたくさんがいい。なあ、浜。俺の子供、産んでくれるよな。名前はもう考えてあるんだ。たくさん産んで、たくさん背負って、未来を担う子供たちを産んでくれよ。俺の遺伝子を分けてやるからさ。痛いのは最初だけで、後は何も怖くない」
少年は狂ったように、无子に子供を産めと言い聞かせた。
无子が好きになったのは、今の少年ではない。
「嫌……!」
「何言ってるんだよ。モテモテの俺の子供を産めるんだぞ? 光栄だと思うのが普通だろ? 俺は選ばれたヒーローなんだ。お前はそのヒーローの言うことを聞けないのか?」
「そんなの、ただの妄想。いつものあなたは、そんな誇大妄想を抱いたりしていないから。もうやめよう。こんなことしても、誰も救われない。あなただって、救われない」
无子はそう言って、部屋を出ようとした。
しかし、少年に手を力強く握られ、部屋に引き戻される。
そしてベッドに放られ、少年は无子に被さって胸を握り潰すように掴んだ。
「いったっ……!」
「誇大妄想なんて、勝手に言ってくれるよな。俺は神様に愛されてる人間なんだよ。お前と違ってな! 何しても痛い目を見ない。罰も当たらない。このフェイスも、このカリスマも、全部神様からの贈り物なんだ……お前は持ってるだけで相手にされてない。そんなの宝の持ち腐れだろ? だから俺が使ってやろうって言ってんだよ。ありがたく思えよ」
「離して……やめて」
无子は涙ぐんで、訴えた。
无子の表情がそそるのか、少年は不気味な声で言う。
「聞こえないな。そんなちっさい声で言っても、誰も気づかない。騙される方が悪いんだよ。お前も、お前を引き取ったジジババもな」




