人気者と付き合うということ
无子が同年代の男子というものを全く知らないものだったので、少年の振る舞いのおかしさに気づけなかった。
優しいと言えばそれまでだが、積極的すぎるのだ。
恥ずかしそうにしていた割に、何か女性に慣れてそうな感じのする少年。
平気で何人もの女性と付き合ってきたかのごとく、少年は初心な无子のツボを的確についていく。
男子ってこういうものなのだと无子は勘違いしてしまうのだ。
无子はいつも助けられてばかりいるので、下駄箱で会うなり礼を言った。
「いつもありがとう」
「いいよ。お前のこと……その」
「その?」
「す、好きだから」
「好き? 私のどこが」
「可愛いところとか……頭いいところとか……全部」
この年頃の男子は自分よりも頭のいい女子は好きにならないのだ。
言わば自分を引き立たせる女を好む。
顔が良くて運動神経のいい少年ならば、顔はいいが、スポーツはできない女子か顔はいいが、勉強はできない女子を選ぶのだ。
それらは全て、男としてのプライド。
无子は本当に何でもできてしまう完璧な女子だったのだ。
と言っても、勉強はかなりできるが、スポーツに関しては器用貧乏でたいして凄くはないのだが。
それでも、明らかに少年よりは優れている。
そんなことを知らない无子は、素直にその気持ちを受け止めた。
「そうなんだ……私も、好きだよ」
「俺たち、付き合わない?」
「え。付き合うって……どういうこと?」
「恋人同士になるってこと。好き同士だったら、普通じゃん」
両想いだから付き合うということも、无子は初めて知った。
この時、无子は女の恐ろしさをまだ知らなかったのだ。
人気者を独り占めしたらどうなるか、何もかもが初めての経験。
无子が知る由もない。
少年は无子がいじめられることも全く考えずに、学校で堂々と手を繋ぎキスをした。
すぐに学校中に知れ渡り、无子は友人にさえも白い目で見られた。
「あんた……〇△と付き合ってんの……?」
「え、うん。そうだけど」
「あたしの好きな奴なんだけど……ねえ、別れてくんない?」
「そんなの無理だよ」
无子がそう言うと、カッと目を開き、親友は无子の肩を掴んだ。
「あたしとそいつ、どっちを取る気? まさか、友情より恋愛を優先させようっての? 信じらんない。あんたとあたしは親友じゃねーのかよ」
「親友だよ。でもすぐに別れられない。付き合ったばっかりだから」
「……じゃ、あんたが別れるまで、あたしらは絶交。いーね。絶対にヤったら許さないから。あたしが〇△とヤるって、決まってっしょ。常考」
恋愛絡みで女の友情は簡単に崩れ去る。
脆く、儚い友情だ。




