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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅲ 親と子

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人気者と付き合うということ

 无子が同年代の男子というものを全く知らないものだったので、少年の振る舞いのおかしさに気づけなかった。

 優しいと言えばそれまでだが、積極的すぎるのだ。

 恥ずかしそうにしていた割に、何か女性に慣れてそうな感じのする少年。

 平気で何人もの女性と付き合ってきたかのごとく、少年は初心な无子のツボを的確についていく。

 男子ってこういうものなのだと无子は勘違いしてしまうのだ。

 无子はいつも助けられてばかりいるので、下駄箱で会うなり礼を言った。

「いつもありがとう」

「いいよ。お前のこと……その」

「その?」

「す、好きだから」

「好き? 私のどこが」

「可愛いところとか……頭いいところとか……全部」


 この年頃の男子は自分よりも頭のいい女子は好きにならないのだ。

 言わば自分を引き立たせる女を好む。

 顔が良くて運動神経のいい少年ならば、顔はいいが、スポーツはできない女子か顔はいいが、勉強はできない女子を選ぶのだ。

 それらは全て、男としてのプライド。

 无子は本当に何でもできてしまう完璧な女子だったのだ。

 と言っても、勉強はかなりできるが、スポーツに関しては器用貧乏でたいして凄くはないのだが。

 それでも、明らかに少年よりは優れている。

 そんなことを知らない无子は、素直にその気持ちを受け止めた。


「そうなんだ……私も、好きだよ」

「俺たち、付き合わない?」

「え。付き合うって……どういうこと?」

「恋人同士になるってこと。好き同士だったら、普通じゃん」

 両想いだから付き合うということも、无子は初めて知った。

 この時、无子は女の恐ろしさをまだ知らなかったのだ。

 人気者を独り占めしたらどうなるか、何もかもが初めての経験。

 无子が知る由もない。

 少年は无子がいじめられることも全く考えずに、学校で堂々と手を繋ぎキスをした。

 すぐに学校中に知れ渡り、无子は友人にさえも白い目で見られた。


「あんた……〇△と付き合ってんの……?」

「え、うん。そうだけど」

「あたしの好きな奴なんだけど……ねえ、別れてくんない?」

「そんなの無理だよ」

 无子がそう言うと、カッと目を開き、親友は无子の肩を掴んだ。

「あたしとそいつ、どっちを取る気? まさか、友情より恋愛を優先させようっての? 信じらんない。あんたとあたしは親友じゃねーのかよ」

「親友だよ。でもすぐに別れられない。付き合ったばっかりだから」

「……じゃ、あんたが別れるまで、あたしらは絶交。いーね。絶対にヤったら許さないから。あたしが〇△とヤるって、決まってっしょ。常考」

 恋愛絡みで女の友情は簡単に崩れ去る。

 脆く、儚い友情だ。

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