愛を知る
親に愛されなかった无子が、これから愛を知ることになる。
爺さんに甘やかされ、婆さんに甘やかされ、无子は本当の意味で笑顔を知ることができたのだ。
毎日毎日好きなものを買ってもらって、好きなことをして无子は人生を謳歌した。
何かやりたいことはないかと聞かれたら、无子はこう答えた。
「私のためを思ってくれている、お爺さんとお婆さんに恩返しがしたい」
「无子……」
「いい子だ。流石わしらの娘だ……」
「年齢的には孫だよ」
感涙する爺さんと婆さんに、无子はいつもの調子で揚げ足取りをする。
そしたら、爺さんは涙を拭いて无子に言った。
「无子。お前はいい子だ。いい子だが、時折あまりよろしくない発言をする。あちゃらもんと話をする機会があれば、その発言は喧嘩をすることになるやもしれん。気の短い人間だったら、お前を殺してしまうかもしれんぞ。そしたら、わしはそいつを許せん。わしの大事な娘を殺した人間を、わしらは許せん。だから、お前も少し考えてくれないか。そういうことを言って、その先どうなるかを」
「……」
无子は初めて遠回しに指摘されたのだ。自身の行いを、否定する言葉だ。
无子が素直に認められるはずもなかった。
当然のように反発する无子。
「お前は頭のいい子だ。だから、わしらの言うことも、よーく理解できる。理解できるからこそ、反発する気持ちもわかる。何十年も生きてきた老いぼれの言うことなぞ、聞きたくはないかもしれんが。老人の戯言は、時に知恵袋のように役に立つもんだ。もっとわしらを使ってくれていい」
「无子は私たちの大事な娘。私たちの嫌なところがあれば言えばいいんですよ。その代わり、私たちもあなたにはしゃんとして欲しい。それを、わかってくれると嬉しいんです」
婆さんは无子をぎゅっと抱き締めて、頭を撫でた。
无子は目を細める。
「お爺さん……お婆さん……」
「考えすぎかもしれん。幼いお前に、こんなことを言うのも酷かもしれん。しかし、お前に今言わなければならんとも思っておる。そうしなければ……お前はもっとわしらの手の届かないところに行ってしまいそうな気がしてな」
爺さんは恥ずかしげもなく、考えを口にする。
愛されているのだ、と无子は涙を流した。
これも无子の初めての経験。
嬉し涙というものを、无子はこの時初めて流したのだ。
「うう……」
「无子、どうしましたか」
婆さんの体にしがみついて、无子は何も言わずにむせび泣いた。
爺さんも婆さんも无子の気持ちを汲み取って、何も言わずに寄り添った。
そんな嬉しいことがあって、无子の性格は少し変わる。




