優秀すぎたこどもは疎まれる
浜家に引き取られた名もなき少女。
それが浜无子である。
彼女は生まれてから間もなく、特異な性格になった。
特異体質と言うと少し違うが、それと似たようなものである。
その頃は現在のようなころころ変わる性格ではなく、人の話をきちんと聞けるものの、揚げ足取りをするばかりの嫌な人間だった。
人のミスを、許せないのである。
たとえば、先生が言い間違えると幼き女の子の无子はこう言う。
「先生、それは違います。間違ったことを教えるのは、先生としてどうかと思います」
「ご、ごめんなさい」
先生たちは无子の優秀さに頭を抱えていた。
優秀すぎる故に、人の心を理解できない。
人の悪いところを指摘してしまう。
遠慮なくズバズバと言ってしまうのだ。
そんな无子の頭の良さを称賛する者もいたが、皮肉を言われて頭にくる者もいた。
賛否両論だったのだ。
遠慮なく言ってしまうのは子供だから仕方がないとはいえ、大人はそれを教えてあげなければならなかった。
悪いと思ったところでも、もっとオブラートに包んで優しく言わなければ、顰蹙、反感を買うと。
頭のいい无子はそんな難しい言葉もわかるのだ。
どちらかと言えば文系だが、かなり頭の回転が速い幼少期を送っていた。
それらを教えなかったことにより、无子は家族から目の上のたんこぶとして腫れもの扱いを受けた。
酷いものだ。
勝手に命を授けておいて、家族は无子を売ったのだ。
理解できないから、人身売買をした。
そんなことが、許されるなんて、世の中間違っている。
この先の无子の人生も、決して恵まれたものではなかった。
せっかくの頭の良さを十分に生かし切れないところに引き取られてしまったのだ。
でもその人たちは悪くはない。
悪いのは、その人たちを騙した人だ。
優しそうな顔をした婆さんと爺さんに引き取られた。
年金生活をしていた人で、お金はそんなに持っていないのに、子供が欲しいと思って无子を引き取ったのだ。
いや、買ったと言った方が正しいのだろうか。
いずれにせよ、无子の人生がこれで明るくなることはない。
「あなたの名前は今日から无子です」
「なこ……」
「字はこう書きますよ」
婆さんはそう言って、无子に名を与えた。
何故无子が引き取られる前に、名前がなかったのかは不明。
親というものは、生まれたらすぐに子に名前を付けるものなのではないのか。
もしかすれば、无子の親は无子に最初から愛着を持っていなかったのかもしれない。
生まれてこなければ良かったのに、と思われていたかもしれない。
そんな人間は、いないのに。
冷たい、とても嫌な話だ。
こんな話、反吐が出る。
気持ちを抑えられなくなってしまいそうだ。
私は傍観者としてこれを書かなければならないのに。
どうしてこんなにも私の気持ちを掻き乱すのだろう。
私にもこんなことがあった、とでも言うの?




