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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅲ 親と子

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アキヤは人ではない

「浜名湖に準じて付けられた名ですから……」

「私の予想通りでしたね」

 アキヤの表情が硬くなる。

 カチコチの氷のように。

「ご子息のナトというのは?」

「私の好きな納豆です」

「……それでよく嫌がりませんでしたね。ご子息は聖職者に向いているかもしれませんよ」

「向いていますか! では、お願いします」

「いえいえ。ナトさんのご意見を聞かなければ……」

「あ、そうですね。そうしましょう」

 聞いたまま、出されたままの意見に同調する无子。

 彼女の本質とは一体何なのか。

 アキヤにも見抜けない人間だ。


「……謎の多い人です……」

 強敵。

 いきなり超大物が出てきてしまって、アキヤは冷や汗をかいた。

「私の性格は、生まれつきのものではないですけどね」

「それはまた驚きですね。ミステリーです」

「アキヤさんも……謎の多い聖職者さんですよ」

 ニコニコと无子は笑った。

 さっきと性格が違っているようにも見える。

 アキヤは无子を見て、不機嫌になった。

「私のわからないこと、多すぎます……この世はミステリーですね」

「人という生き物が、それだけ深い生き物だということではないでしょうか」

「先程まで会話すらまともに成立しなかったのに……これは一体……。神に聴かねばならぬことが増えたようです……あなや」


 アキヤは頬に両手を当てて、有名な絵画の、ムンクの叫びのような顔をした。

 无子はまた笑う。

 気の良さそうな、朗らかで優しい笑顔だった。

 ころころ変わる性格に、アキヤは謎を追究するのをやめにしようと思った。

「私はまだ修行中の身……わからないことは、わからないままにしておいても良いかもしれません……」

「独り言が少し多いですよね、アキヤさんは。私も、人のこと言えませんけど」

「私は人ではないですよ」

 アキヤは不敵な笑みを浮かべて、そう言い放った。




 无子が帰ってから、アキヤはまた自室へ行って日記をつける。

「親子の恋愛というのは、何故禁止されているのでしょうか。倫理に反することだとしても、親子で恋愛をすると、世間の目には、どう映るのでしょう。ハグやキスをするのは悪くはないでしょうが……それ以上となると、まずいのですね」

 アキヤは万年筆を手にし、紙に自身の思いを乗せた。

 アキヤが感情移入した、最初で最後の懺悔日記になる。

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