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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅲ 親と子

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長話に眠りこけそうになるアキヤ

「ゆっくりでいいので、詳しく話してくださいね」

「むかーし……わーたーしーは……」

 意味が全く伝わっていない。

 女性はゆっくりと話し始めた。

「それだと何時間かかってしまうのでしょう。私の好敵手ですね」

「好敵手……それは嬉しいです」

「私は嬉しくありません! ライバルは少ない方が良いではありませんか。では、続きをどうぞ。今度は普通にしてくださいね」

「話は普通ではないので、その意に沿えないのですが……」

「速度の問題です。普通の速度でお願いします」

「普通の速度とは、一分につきどれくらいの文字数でしょうか」

「日本語は曖昧なのですよ? そこまで細かく聞かれると、私は逆に困ってしまいます」

 アキヤは疲れた顔をして、女性を咎めた。


「すみません。私はどうも偏屈な性格でして……細かいことが気になってしまうようです……ご迷惑でしたね。すみません」

「おまけに、暗いですね。もっと明るくいきましょう? ただでさえ暗い話なのに、当事者までもが暗くなってしまうと、空気がどんよりしてしまいます」

 アキヤは明るい声で、ハキハキと言った。

「空気がどんよりしているとわかるのは何故ですか!?」

 女性はアキヤのように明るい声で、疑問をぶつけた。

「何となく……ですが……そう感じることはありませんか? 目に見えないものを感じ取るのは、実は人間が得意なことなんですよ」

「そうなんですか! 目に見えないもの……目に見えないものと言えば」

「幽霊とか、空気とか、心とか、オカルト的なことですね。仮聖職者である私が言うのも変なんですが。結構、大事なことですよ?」

「幽霊が大事なんですか?」

 アキヤは女性に手の平を向けて差し示す。


「はい。貴女の背中にいる……先祖の霊。その方は、貴女を守ってくれています」

 女性は身震いして、首を回した。

「どこにいるんですか? そんなもの見えません」

「ですから、目に見えないもの、と」

「なるほど。そういうことなんですね」

 女性はニコッと笑って、納得した様子を見せた。

「では、緊張も解れてきた頃でしょうし。そろそろ……お話してください」

「……はい」

 女性の話は今週で一番長かった。

 アキヤは眠りこけそうになったが、必死に目を開けていた。

 眠気に負けるわけにはいかないと意地でも目を見開いていたのだ。

「終わりです」

「……」

「あの」

「……ハッ!」

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