刑務所の中で
「ワタシハ、ニホンジントケコンスルカラ。ニホンゴオボエテタ。デモ、ワタシノトモダチニナタオマエモ、ヒッシニオボエテクレタ。ウレシカタ。アリガトウ、マルク」
「アリエス、ワタシモ……イロイロ……オセワナタネ。アリガトウ……! ゲンキデ」
「ウン。アリガトウ」
マルクとアリエスはまたハグをした。
ハグは挨拶だと日本人はわかってくれるそうで、ハグだけはしても良かったのだと。
頬であろうとキスは拒否されたらしい。
「ジャ、ゲンキデ」
「ウン。アリエスモネ」
終始片言の日本語で二人は別れの挨拶をした。
ここからマルクの後悔が始まる。
アリエスと別れたものの、マルクはアリエスのことを忘れられなかった。
一途に想い続けてきたのだ。
忘れられるわけはない。
ふられても、マルクはアリエスのことを病的なまでに愛した。
毎晩アリエスの名を呼び、マルクはアリエスに会いたいばかりに、また居場所を捜してしまったのだ。
町中で捜し回る日々。
しかしふと我に返った時に、物凄く嫌悪感に苛まれる。
「ワタシ……ストーカー?」
ぽつりと道路のど真ん中に立って、そんなことを嘯いたりして。
マルクは自身の異常な執着心にようやく気が付いたのだ。
本気で愛してしまった者を諦めきれない。
それが相手の迷惑になることはわかっているはずなのに、どうしても抑え切れないのだ。
これが抑えられないと、アリエスに嫌われてしまう。
「アリエス……ユメノナカダケデモ……キミニ」
そうして薬漬けになるマルク。
マルクのことをよくわかってくれているとアリエスが言っていたあの家族にすら見放される始末。
どうすることもできないのだ。
目元にくまができ、非行に走るマルクはやがて逮捕された。
マルクの愛が引き起こした悲しい事件は、新聞を通じて全米に渡る。
『愛のため自分を抑えて薬漬け』という見出しで発表された。
マルクは刑務所の中で、今まで生きてきた人生を大いに悔いた。
刑務所にいる仲間にも馬鹿にされ、格好を馬鹿にされる毎日。
第二の人生こそは真っ当に歩もうとマルクは決意する。
「アリエスノスイテクレタ、ワタシニナロウ」
愛のために自分を抑えていたマルクが、そう決めた時、アリエスから朗報を聞く。
アリエスは捕まったマルクに手紙を寄越してくれていたのだ。
そこにはこう記してあった。
『ワタシ、ケッコンシマス。アイラブユーマルク アリエス』




