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【連載版】死亡エンドしかない悪役令息に転生してしまったみたいだが、全力で死亡フラグを回避する!  作者: 柚希乃愁
第四章

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夜の貴族街で

 夜。


 寮の門限にちゃんと間に合うようにして、セレナリーゼとのデートを終えて帰ってきたレオナルドだが、この日の彼にはまだ予定があった。


「じゃあステラ、髪色を頼む」


 小綺麗な服を着て、その上から、これまたそれなりに上等な外套で身を包んだレオナルドは、最後の準備をステラにお願いした。


『まったく……。こんなことに使われるとは思いもしませんでしたよ』


「悪いとは思ってるよ。でも、初めてと言っていいミレーネのお願いなんだ。やっぱ叶えてやりたいじゃないか。それにちゃんと理由もあったろ?」


『夜の外出がバレないように、ですよね。わかっていますよ。ただ、そもそも私には関係ないと言いたいだけです』


「まあまあ」


 レオナルドは苦笑を浮かべるしかなかった。自分ではどうしようもできないことだからだ。

 ただ、ステラはそんな小言を言いながらも、結局はちゃんと、レオナルドの髪を()()()()()()()()()に変えてくれた。

 自分の髪色と同じ色を指定するあたり、バレないようにするためだけとは到底思えないが、ステラにそこを突っ込む気はない。


 髪色の変化を鏡で確認したレオナルドは、次に懐からセレナリーゼに貰った懐中時計を取り出して時間を確認した。

 その目はとても柔らかい。


「……ちょっと早いけど、そろそろ行くか」


 レオナルドはそう呟くと、懐中時計を再び懐にしまい、自室の窓から空へと上がるのだった。


 行先はすぐ近く。

 レオナルドは学園の女子寮、その屋上へと降り立った。

 バレたら大変なことになるので、ヒヤヒヤだ。


 すると、タイミングよく屋上の扉が開いた。

 一瞬、身体を強張らせるレオナルドだが、やってきた人物を見て、今度は別の意味で固まってしまった。


「すみません、レオナルド様。お待たせしてしまったでしょうか?」


「っ、いや、全然!」


「それならよかったです」


「めちゃくちゃ綺麗でびっくりしちゃったよ。ドレス、よく似合ってる」


 見惚れて舞い上がってしまったのか、レオナルドは本音の感想を漏らす。


 ミレーネは、膝上丈で胸元が大胆に開いた青色のドレスを着ていた。その上からオシャレな羽織ものを身につけている。

 めちゃくちゃセクシーなのに、品があり、なによりすごく綺麗だった。


「ふふっ、ありがとうございます。レオナルド様もよくお似合いですよ。その…髪色も。私の我が儘を聞いてくださってありがとうございます、レオナルド様。それにステラ様も」


「ははっ、ありがとう。それとどういたしまして。……それじゃあ、あんまりここに長居してるとヤバいから早速行こうか?とりあえず貴族街の路地裏に下りればよかったかな?」


「はい。それでお願いします」


 レオナルドはミレーネをお姫様抱っこすると、夜空に飛び上がるのだった。


 貴族街に到着すると、ミレーネがレオナルドの腕を自身の胸元に抱き寄せた。


「ミ、ミレーネ!?」


「こうした方が周りに溶け込めますから。お嫌ですか?」


「……嫌じゃないっす」


 レオナルドは素直に答える。

 突然のミレーネの行動に驚いてしまったが、腕を幸せな柔らかさで包まれているのが嫌な訳なかった。


「ふふふっ」


 それに、いつもよりミレーネのテンションが高めな気がして、楽しそうだったから。




 そうして表通りを歩き始めてすぐのこと。


『……レオ。微かにですが、何やら嫌な気配がします』


 ステラがレオナルドに警告してきた。

 その声には戸惑いが混じっている気がする。


(嫌な気配?)


『ええ……。力を抑えているからか、私にも正確な場所がわかりません。ただ、敵意を向けられている訳ではなさそうなので大丈夫だとは思いますが、念のため気をつけておいてください』


(……わかった)


 ステラが曖昧な言い方になっていることに驚きを禁じ得ないレオナルドだったが、ミレーネに(さと)られないようにしながら一気に警戒度を上げた。


 しばらくして、


『あれは……』


 ステラの呟きが頭に響いた。


(どうした!?何かあったのか!?)


『……いえ、大したことではありません』


 つい、過剰に反応してしまったレオナルドだが、ステラの答えにフッと力を抜く。


(そうなのか?ならいいけど……、何かあったら言ってくれよ?)


『わかっていますよ』


 ステラが何かに反応したのは間違いないだろうが、言う必要を感じていないようなので、レオナルドはそれ以上気にしないようにした。




「そう言えばレオナルド様。セレナリーゼ様が今日お話できなかったことがありまして」


「え、何?」


 ミレーネの口からセレナリーゼの名前が出てきて思わずドキッとしてしまう。

 ミレーネから話の続きがされることなんてないだろうが、こればっかりは反射的なものだ。


「次の休日は、レオナルド様とセレナリーゼ様、それから私もですが、全員でクルームハイトのお屋敷に帰るのでそのつもりで、とのことです。フェーリス様から、お誕生日のお祝いをするから必ずレオナルド様を連れ帰るようお願いされているそうですよ」


「マジかよ……」


 実のところ、入学前にフェーリスから、レオナルドの誕生日をお祝いしたいから休息日に皆で家に帰ってきてほしいと言われていたが、学園が始まったばかりで慌ただしいだろうからとレオナルドが断っていたのだ。

 それでもフェーリスは諦めておらず、セレナリーゼに頼んでいたらしい。


「ふふっ、観念してくださいね?」


「はぁ……、わかったよ」


 そうして、レオナルドとミレーネがまるで恋人同士のように寄り添い合い、他人が聞いたら他愛のない、しかし微笑みが絶えないくらい楽しく話をしながら辿り着いたのは、ミレーネが予約していた高級酒場だった。


 結局、道中で何も起こることはなかった。




 時は少しだけ遡り、貴族街の表通り、その端に佇む者がいた。

 目立たないようにするためか、フードを深く被った男の顔は、上半分が仮面に覆われている。

 その者の視線の先から青年が小走りで駆け寄ってきた。


「お待たせしてすみません!ルヴァン様」


「謝る必要はないさ、ジークハルト。それで今日の調査はどうだったかね?」


 青年は、星騎士ジークハルト=レスセイム。仮面の男は、神星騎士第三星ルヴァン=シュデッタだった。


「はい……。今日もトーヤに関する情報はありませんでした。他の任務でお忙しい中、ルヴァン様が気にかけてくださっているというのに何の情報も得られず本当にすみません……」


「いや、気にすることはないさ。ここに来たのは野暮用があっただけだからな。それに、きみから任務内容を聞いて私が勝手に興味を持っただけだよ。しかし……、強力な力を有し、黒髪という珍しい特徴を持っているというのに、こうも情報がないというのはさすがに妙だな。時々冒険者ギルドに現れているのは間違いないのだろう?」


「はい。それは確認できています。ですので、実在するのは確かなようなのですが、本当に神出鬼没で……。王都以外も調べられればいいのですが」


「ふむ……、相当厄介な相手のようだ。だが、きみはもう一つの任務のために今は王都を離れる訳にもいかないのだろう?」


「いえ、まあ……、はい」


「フッ。きみも大変だな。ああ、そう言えば、先ほど若い男女の二人組を見て止まっていただろう?こんなところに知り合いでもいたのかね?」


「ああ、いえ。他人の空似だと思います。私も一度会っただけなのですが、以前、聖女様を助けたレオナルド=クルームハイトに似ていたのです。けれど、彼は今学生でこんな時間に外出できないはずですし、そもそも彼は金髪、先ほど見た青年は水色の髪をしていて、髪色が全然違っていましたから。それなのに、どうして似ているなんて思ったのか自分でもわからないのですが……」


 訊かれたため、答えはしたが、ジークハルトは羞恥を感じてしまい、言い訳っぽい言葉が多くなってしまった。

 髪色なんていうわかりやすい特徴を見落とし、顔が似ていると思って足を止めた。

 そんな姿を晒してしまい、ルヴァンに呆れられたと思ったのだ。


「ほう……」


 だが、当のルヴァンはと言うと、仮面の下の目を鋭く細めていた。


(ジークハルトがそんな見間違いをするか?)


 ジークハルトの能力をわかっているルヴァンには、到底考えられなかったのだ。


(それよりもむしろ―――)


 そして、柔軟な思考で一つの仮説に辿り着いた。

 レオナルド=クルームハイトは何らかの方法で髪の色を変えることができるのではないか、と。

 そう、例えば、黒髪にも。

 そんな方法をルヴァン自身は知らない。

 だが、自分の持つ知識がすべてではないことをルヴァンは知っている。

 以前、ジークハルトは、レオナルドには魔力がないと言っていた。

 ならば魔法以外の力を持っている可能性がある?


(……っ、まさか!?)


 そのような力をルヴァンは一つだけ知っていた。遥か昔の伝説のようなもの。その中で勇者と呼ばれた者が持っていた力―――、霊力。

 普通なら眉唾物と切って捨てるような話だが、ルヴァンにはとてもしっくりときた。なぜなら、遥か昔から在り続ける、神と呼ばれる者の存在を知っているから。

 レオナルド=クルームハイトが昔から生き続けているとは思わないが、そうした伝説上の力を有する者が現代に現れたとしてもあり得ないことではないと思える。

 だから今は、これを前提としてさらに考えを深める。


(だが、今はまだ聖痕(スティグマ)を持つ我ら神星騎士にも及ばないだろう……)


 ジークハルトが冒険者ギルドで聞いてきた情報からルヴァンはそう判断した。


 そのとき、ルヴァンの中で何かが結びついた。


 違和感のあったジークハルトの二つの任務内容。

 以前から教皇はトーヤについて調べていたのだろう。

 そして、教皇もトーヤの力に関して自分と同じ結論になったのではないか。


 だから大事にならないよう、忠実に遂行するだろう息子のジークハルトに、他の任務と併せて命じた。

 今の段階で神星騎士を動かせば周囲に知られてしまうし、トーヤに関する任務だけでは、これまた重要度が高いと思われてしまうかもしれない。

 教皇の周りにいるのは教皇の味方ばかりという訳ではないのだ。


 そして、正体さえわかってしまえば、異端者認定でも何でもして、堂々と神星騎士を動かすことだってできる。

 つまりは、敵対勢力に気づかれぬうちに、そしてこれ以上トーヤが力をつける前に、殺してしまいたいと思っているのではないか。


(フ…、フハハハ!しかし、まさかここでクルームハイトの者が出てくるとはな。これも運命(さだめ)か)


 教会勢で自分だけがレオナルド=クルームハイトに辿り着けたことを僥倖(ぎょうこう)に思った。

 いや、もしかしたらフレイ=ルミナストは何か勘付いているかもしれない。

 彼女にも注意しておく必要があった。


「……あの、ルヴァン様?」

 黙ってしまったルヴァンにジークハルトは恐る恐る呼びかけた。


「ああ、すまない。ちょっと急用を思い出してしまってね。悪いがこれから私は私で動かせてもらう」


「あ、はい、それはもちろん。むしろ私の任務を気にかけてくださりありがとうございました」


「フッ。礼を言われることではないさ。引き続き、きみは任務を頑張ってくれたまえ」


「はい!」


 そうして、ルヴァンはジークハルトから離れていく。


(……さて、この情報、どう活用したものか)


 ルヴァンは考える。

 まず、レオナルド=クルームハイトの力について確証を得たい。

 そして、自分の考えどおりだったとしても、現状、レオナルド=クルームハイトが何を知り、今後どう動くのかはわからないが、とりあえずもっと成長してもらわなければ話にならないのは確かだった。

お読みくださりありがとうございます。

ミレーネのターンのはずが、あまり進まなくてすみません(>_<)

面白い、続きが気になるなど思ってくださった方、画面下の☆☆☆☆☆から応援していただけると嬉しいです!

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モチベーションがとんでもなく上がります!

何卒よろしくお願い致しますm(__)m

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― 新着の感想 ―
最近読んでたから、ジークハルトがペッシでルヴァンがプロシュート兄貴に見えた ジ「俺の勘なんて当てにしないでくれよ~」 ル「出かしたぞ!ジーク、お前が見間違う様な人間でないから正しければ何かしらの方法を…
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