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クラブ・ジェムノット~エピソード1-少女は全員直感系の家を出る~  作者: (さ)くま
第2章 “普通の女の子”

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2-3 大学生活の「?」「!?」「!!!」

一人暮らしと並行して、

大学生も半年ほどやってみて。


大学生活は、

一言で言えば「情報量が多い」。

多すぎる。


初日から、

私はずっと「?」を頭の上に浮かべていた気がする。


まず、大学の門をくぐった瞬間。


「新入生ですか〜!?サークル見学どうですか〜!!」


「うちのサークル、初心者歓迎ですよ〜!!」


「足長いねー!テニスどう?」


「超キレイ!メイクどこでしてるの!?えっ、してない!?えっ!?」


影が揺れすぎている人たちが、

一気に距離を詰めてくる。

私は、 固まってしまった。


「……あ、あの……」


声が出ない。

影が揺れそう。呼吸が乱れそう。


でも、誰も整えてくれない。


“これが大学生活なんだ”


そう思った瞬間、胸の奥がざわついた。


なんとか講義室にたどり着くと、

さらに「?」が増えた。


「え、席って……どこでもいいの?」


「え、みんなパソコンでノート取るの?」


「え、教授の話、速くない?

 マイク使ってる?」


「え、みんなもう友達いるの?」


「え、え、え……」


私は、キャンパスノートを開いて固まってしまった。


周りの人たちの影は、

揺れているというより“跳ねている”。


楽しそう。

賑やか。

自由。


でも、そこまでの自由は、

私は少し怖く感じた。


休み時間。


やっとちょっと頭が動き出したと思ったら、

さっきまで向こうに座っていた女の子が

話しかけにきてくれた。


「ねえ、あなた新入生?

 その髪、めっちゃきれいじゃん。

 どこの美容院?」


「……えっと、京都の……」


「京都!?いいな〜!

 あ、てかそのメイク

 薄いのにめっちゃ透明感あるね。

 どうやってるの?」


き、京都の近所のおばあちゃんが

切ってくれてるんです…

っていう前に、次の話題に行ってしまった。


「……メイク、してないです」


「えっ!?!?!?

 してないのにそれ!?!?!?

 やば……天才じゃん……」


私は、 どう返せばいいのかわからなかった。

それに、

高校のクラスメイトの話題と

ほとんど変わらないってどういうこと…?


何もしてないのに天才…?

東京でも同じこと言われるのかな…?


でも、

その子はずっと楽しそうで、

影は軽く揺れていた。


その揺れ方は、

少し眩しく感じた。

なんだかかわいい。


昼休み。

今度こそひと息つける…と

半ば祈るような気持ちで学食に行くと。


「えっ、メニュー多すぎない?」


「えっ、みんな早すぎない?

 なんでそんなに迷わず選べるの?」


「えっ、またみんな友達と座ってる……」


私はトレーを持ったまま

立ち尽くしてしまった。


影が揺れそう。

呼吸が乱れそう。


でも── 誰も整えてくれない。


“これが普通の大学生活なんだ”


またそう思って、

もう本当に泣き出しそうになってしまった。


帰り道、スマホが震えた。


遼叔父さんからだった。


『イヴ。

 初日どうだった?

 疲れてないか?』


ぽろっ。

疲れてます。へとへとです。

叔父さんだいすき。


私は返信した。


『……大学、すごいです。

 人が多くて、みんな元気で、

 影が揺れすぎてて……

 でも、楽しいかもしれません』


送信した瞬間、

遼叔父さんの顔を見たくなった。


大学生活は、

「?」と「!?」と「!!!」

の連続だったけれど、その全部が

“普通の女の子としての生活”の

一部なんだと思えた。


みんな、すごい。

私、“すっごい田舎者”だ。


私は、大学初日にして

私の自分の影の形を知り始めていた。


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