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21.北の玄武

「目覚めたかい?」

「ここは?…コテツ、美加は?!」


「安心せい。美加殿は白虎の元におる」

「じゃあ、ここは?…あなた…さまは」

「ほおぅ。我が分かるのか?」

「あ、いえ、どなた様かは存じ上げませんが、ただ者ではないことだけ」

「我は北の玄武、そなたの力が欲しくてな。気が競ってしまい、先に呼んだ」


昭博はぼーっとした頭で考え始め、少々残念そうな顔をしたが、すぐににんまりと笑った。

「な、なんじゃ」

「俺の、私の力が欲しいと?!」

「ああ…」

「貸します!貸します!貸しますとも!ここまでの旅がなかったのは、ちょっと、いえ、かなり残念でしたが。そこまで私の力を欲しているのでしたら、そんなことよりも有意義な冒険となるでしょう!」

「ああ、頼んだ」

「任されました!」


玄武は人選を誤ったかと、本気で悩んだ。

白虎から聞いていた通り楽観的な男だとは思っていたが、ここまで脳天気で良いのだろうかとかなり心配になった。我が騙していたら、とか思わないのだろうか。

そして何をやらされるのかと、気にならないのだろうか?

普通気になるはずだ。


逆に我を試しているのか?

力を貸すに値する人物なのかを。

あり得る。あの聖女と呼ばれし聡くて聡明な美加殿の主人が、あんなに明るいだけの男だとは思えん。


…参った。

我の非礼を許すばかりか、何があっても大丈夫だという自信に満ちた表情。

なんと器の大きい男であろうか。

 

これならば、我が仕えても問題ないかもしれん。

『コテツ、と申したか?』

『はい、玄武様』

『昭博殿は器の大きい男に見受けたが、そなたからみて昭博殿はどんな男だ』

『…私もそうだと思います。美加様がとても聡明であられるために一見呑気な方に見えますが、どんな状況にも馴染み、周りに溶けこむように自然体でいられる方はそうはいないと思います。我らのことも無条件で受け入れて下さいました』


『やはりそうか!』

ここは主人となる昭博をヨイショしておくべきだろう。そう判断したコテツは言葉に気をつけながら、昭博の長所を語った。もし何かあれば必ず美加が助けてくれるということを知っているからだ。

美加に対する信頼から出た言葉だった。


まさかコテツの一言が後押しになって、昭博と玄武が契約をするとは誰も想像していなかった。


「昭博殿!我と契約を!」

「了解した!何をすれば良い?」

「…いいのか?」

「なにが?玄武様が契約するって言われたのですよね?」

「ああ、そうだが…悩まないのだな」

「悩んでも解決しないことは、悩まない主義なんで。それよりも解決できる方法があるなら、試すべきだと思う」


流石は、美加殿の主人だけある!

玄武は感激をしていたが、コテツは真逆のことを思っていた。

なんて脳天気な。


美加が昭博に日頃言っている言葉だけに、コテツからもスルリとそんな言葉が浮かんだ。

美加様が知ったら、きっとまたお怒りになるかも。

普段は優しい美加だが、本気で怒れば怖い。コテツも最近美加お気に入りのラグをペチャンコにして、謝りながら何時間もかけてふかふかに戻したことが頭を過ぎりブルッと震えた。



「コテツ、寒いのか?」

優しい主人には違いないのだ。

「大丈夫であります。それよりも契約は…」

「ああ、済んだ」

「は、はい?」

「名前付ければ良いというのでな。付けたぞ、名前」

いつの間に!

昭博を見れば、からうっすらと聖なる光が見えるし、自分の身体に意識を向ければ、内からエナジーを感じた。

凄い!

自分の位があがったかのようだ。

ユラユラとご機嫌で尻尾を揺らしていたが、いつもと感じが違う。パワーが上がると尻尾の感触まで変わるのか。変な関心をしていたが、自分の影を見て違和感を感じた。

ん?

シッポが、シッポが二つある!!

なんで!


これはどういうことかと昭博に聞こうかと思った時に、玄武がこちらを見た。

「おお、格好良くなったではないか」

「こ、これは!」

「ああ、それな…早い話がコテツの種族が変わったと言うことだ」

「な、な、なんですと―――――ッ!」


「我から説明しよう。我は「美護みご」という名を貰ったのだが、我の格が高すぎて従魔にはなれなんだ」

「あ、玄武様が一番長くこの地を治められているからですか?」

「多分そういうことなんじゃろな。それでどうしようかと悩んだのだが、昭博どのが眷属になると言われてな…。それに甘えさせてもらった。その昭博の従魔であるそなたも、巻き添えにしてしまったということじゃ」


「昭博殿、あなたはなんてことを!!常々脳天気だとは思っておりましたが、ここまでとは…」


「どうして!美加様に相談もしないでそのようなことを決断されたのですか!私は良いですよ。あなたの従魔になったときから、色々と諦めましたから。美加様はどうするのです!」


「ん?何変わらないだろ?何か変わるのか?」

「昭博殿の従魔の私が種族が変わったのに、あなたが変わらないわけないでしょ。呆れてものも言えません」

慌てて自分のステータスを確認する。そして半神になっているのを確認して、暫く呆けていた。


「コテツ殿、昭博殿はどうしたのだ?」

「自分のしでかした大きさに唖然としているのです」

「え、あ、なに?昭博殿はわかっていて提案してくれたのではないのか?」

「違います。何も考えて無くて、ラノベなので読んだフィクションと現実の境がわかっていないのです。まあ、ご本人はそこまで気にしていないかもしれませんが、今頭の中では美加様への言い訳を必死に探している、というところでしょう」


我はやらかしたのか?

この世界の恩人である美加の意思にそぐわない可能性がある事実をしり、玄武こと美護は頭を抱えた。



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