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20.冒険者 昭博 誕生のはず

美加の体調が元に戻り、転移後マナの波に呑まれても大丈夫だと判断できたのは、一週間後。

さて、行こう!と昭博が気合いを入れたときには、急な仕事が立て込み美加がここを離れられなくなった。そして美加が大丈夫になったとき、昭博が…と、お互いのスケジュールがあわなかったので、結局行くことになったのは、15日を過ぎていた。


それだけ時間が経っていても慌てなくて良かったのは、向こうで西に行くための準備は昭博がバッチリ整えているし、美加のアイテムボックスには斑にお肉を食べさせるために買った上等なものが入っている。

それにスーパーで買った野菜や飲み物などが入っているためわざわざ買う必要が無かったのは幸いだ。

アイテムボックスって最高だよね!

向こうに行けば誰かが狩りをするだろうから、自分たち以外の肉を買わなくて良いし、強いて持っていこうと思うのは、調味料か。


塩・胡椒は定番で、砂糖にみりん、料理用酒、醤油に味噌、出しを取る粉末

これだけあれば、どうにかなる。

もちろんインスタント食品を大量買いすることは、忘れていない。

どんな旅になろうとも、腹は満たさなければならない。


死の危険があるならば、撤退も視野に入れて。

最悪を考えては居るけれど、なんとなくだけど良い出会いがある気がしている。

北の玄武はどんな人?といって良いのか分からないけれど、落ち着いている方だと良い。なにせ出会った者達が正直能力はともかく、性格が阿呆かとつっこみたくなる脳筋ばかりで、どう敬って良いのかわからない。

正直、それが可愛いかもと思っている時点で、自分の中で折り合いを付けるべきなんだと思う。

そう、向こうに行くことを子供の遠足のように、わくわくしている自分の夫昭博がその代表なのだから。

これでも仕事はそれなりに出来る人なんだけどな-。


「ねえ、もうそろそろ行こうと思うんだけど」

「いつでも大丈夫!」

いい笑顔でサムアップする昭博に少し苛立ちながら、コテツに確認する。

「大丈夫です!」

コテツがいうのなら、大丈夫だろう。

では!


「ハル!」

『美加!今から迎えに行く!』

え、なんでハルが来るわけ?私自分で行けるけど。

と思っている間に、ふわっと自分が浮いていた。

「ちょっと!」


ハルが自分をお姫様抱っこで抱き抱え、向こうへ行こうとするので頭を叩いて止めた。

「コテツも昭博も行くんだから、ちゃんとしなさい!」

「…美加が、ずっと連絡くれなかった」


ああ、拗ねていたのか。こっちにも都合ってものがあるのだから。

…でも、憎めないのよね。

視線を感じて振り向くと、コテツと昭博がじーぃとこっちを見ていた。

「ほら、ハル!」

昭博にフン!とそっぽを向いて、美加を降ろす。


「コテツ、小さくなれる?もしものことがあったら行けないから、昭博に抱っこされてて」

「了解しました」

「大丈夫だと思うけど、昭博もしはぐれたらコテツを通して連絡してきて。マジックバッグはバッチリよね?」

「勿論、準備OK」

昭博とどこではぐれるかわからないので、念のため腐るモノ以外は荷物を二つに分けている。

昭博と手を繋ぎ、向こうへ行ったときの酔いに備えた。

「じゃあ、ハル!宜しくね」


折角来たのだ。ハルの魔力で向こうへ行くことにした。まだまだ魔力の使い方がわからないうちは、温存できるモノは温存する。


「我にしっかり掴まっておけ」

昭博の左手にコテツを抱き、右手で美加と手を繋ぐ。

美加は空いている右手で、ハルの服を掴んだ。


ふわっと浮いたと感じた時には、転移していた。

初めよりは浮遊感にも慣れたように感じるが、はやり急に肺に入れる空気が変わるせいか、ちょっと身体が重い。

あ、昭博は?


繋いでいた左手には何もない。

「ハル!どういうこと?」

まだ慣れない身体の怠さで迫力は無いが、昭博の姿がないことを咎めた。


「ああ…北のが」

「ああん?」

ヤクザみたいな言葉になったのは、気のせい。

さっさと言え!

「北の玄武がコテツごと昭博殿を招いたようだ」

「どうして、そうなるの―――――ッ!」


命の危険はないと感じたのとやはり慣れないマナ酔いで、美加の意識は少しずつ遠のいていった。

薄くなる意識の中で、玄武らしき人物からメッセージを受け取った。

「すまない。気が競ってしまって思わず呼んでしまった。ちゃんともてなすので、安心してくれ」


昭博の喜ぶ顔が浮かび、美加は諦めの息を吐くとそのまま眠りに落ちていった。

落ちていきながら、あれだけの準備ってなんだったのだろうかと愚痴る。


『まだらー、枕』

イラッとした時には、もふもふ。これだけは外せない。



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