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ばあちゃんの認知症、想像以上の爆速だった話

私には、90歳を超える祖父母がいます。先日の台風のことを心配し、祖父が電話をかけてきてくれました。その時、認知症が進んでいると聞いていた祖母と会話した際のことを振り返ります。


 こんにちは、みほしです!見に来てくれて、ありがとうございます。おかえりなさい、お茶どうぞ!先日の台風、猛者の皆さん大丈夫でしたか?うちは、珍しく台風らしい天候になりました。台風後に祖父母から電話がかかって来たときの話です。


 私の祖父母ですが、地元に居るので新幹線で片道6時間ほど離れた場所にいます。祖父母は優しく、お互いに半歩近寄っていないような関係。そのため、あちらもこちらも適度に気を使い、言葉に気を使っていました。

 孫の中でも突出して座学が崩壊していた私に対して、私の目の前で「勉強できないからダメ」というニュアンスのことはほのめかさなかった人達です。ただし孫ランクはつけてました。私は言わずもがなトップではありません。雑に言えばモブから毛が生えた程度の存在でしょう。


 そんな祖父母ですが、大変高齢です。2人とも90歳を超えています。祖父は一過性脳虚血発作を何度か起こして呼吸を忘れて現世から何度か離脱を試みており、祖母は親の話しでは攻撃力高めの認知症とのこと。

 一度会いに行かねばと思うものの、家には犬がいて仕事もしていて。書く仕事そのものを否定している実家に泊まりたくない気持ちはあれど、泊まらなければ陰でなにを言われるやらという面倒極まりない状況です。


 Xでたびたび実家に帰るか悩むと話していたのは、祖父が現世離脱する前に会っておきたいということと併せて、祖母の記憶から私が消滅する前に話がしたかったのもあります。


 祖母はとてもしっかりした人で、祖父の親と同居していました。それだけでも凄いのに、祖父の親との折り合いがよかったのか悪かったのか、義理親があまり好きではない辛口のカレーを食卓に出していたという逸話を残しています。

 穏やかに刺す。それとない致命傷を負わせようと試みる。豆腐の中に唐辛子の辛み成分だけを混ぜ込んだような面を持つ人でした。


 そんな祖母ですが、コロナが過ぎ去ってきたあたりから、様子がおかしくなり始めたようです。徐々に頑固さが増し、親も手を焼き泣いていたほど。数年前に認知症の診断が出たとか出そうって話を聞きました。

 しかし検査を受けたのかは謎です。聞いても答えなかったので、祖母が検査を拒否したのか、はたまた親が検査を受けさせる勇気がなかったのか……。真実はいつも闇の中です。


 祖父は、台風や地震が起きたらすぐに電話をかけてくれます。耳が遠いためか、以前は崖の向こうから話しかけてるんじゃないかと思うくらいの声量で、「もしもしぃいい?!」って感じで電話をかけてくれていました。

 しかし年齢を重ね、今は専門の施設にいることもあってか、先日の電話はそこまで声が大きくなかったです。小川の向こうから話しかけられてる程度の声量でした。じいちゃんも歳を取ったんやなと、じんわり実感した。


 一通り台風の話をして、「じゃ、ばあちゃんに代わるから!」とのこと。来るのか、認知症のばあちゃん。どんな話をしようかと思っていた矢先。電話口の向こうから話し声が聞こえてきました。

 じいちゃんの「みほし。みーほーし!みほしじゃ」との声に対し、ばあちゃんの「え?」との戸惑いの声。

 私のこと、もうすでに分かってなさそう。でも日常会話はできるだろう。なんて思ってました。


 甘かったです。認知症をなめてた。なめてたってか、知らな過ぎた。


「もしもしぃ」と話してきたばあちゃんの声は、なんとも頼りなく耳に入ってきました。「もしもし、みほしやけど。ばあちゃん元気にしちょったかな?」との私の問いかけに、ばあちゃんは「え?…えっと」と理解が追い付かず。

「元気じゃったかな?」との問いかけには、「元気やったよ」と答えてくれました。単発の問いかけには答えてくれます。


 しかし喋るスピードが速いとわからないみたいで、「施設のごはんはどんなメニューが美味しいんかい?」との問いかけには、「え?なに?」って感じでした。「ごはん、美味しい?」と改めると、「美味しい。ごはん食べるだけ。食べるだーけ」との可愛い返事がもらえました。「そんくらいゆっくりするんがいいよ」と話すと、ご機嫌な笑い声が返ってきました。


 雑談はできたけど、肝心の台風の話はにっちもさっちも。「雨が降って風が吹いて、台風っぽかったよ」って話をすると、全然わからんちん。「雨がなに?」みたいな。

「台風がね、あったんよ」とゆっくり話すと、「あー…(?)」と関心はするけど認識はしておらず。「もう行き過ぎたんよ」にも「ふーん(?)」って感じ。「雨降ったんかな?」と聞けば「降った」、「風はあったんかな?」と聞けば「あった」って返ってきました。

「今止んでるんかな?」と聞くと、「晴れた」と答えてくれました。


 穏やかで。緩やかで。

 残酷な現実だった。そんな急にボケんでくれよって、電話しながら思いました。

 全然急でもないんでもなかったはずです。でも私はばあちゃんの認知症が進んでいく様子を、愚痴でしか認識していなかった。目で見て進んでいく様子を見ていない。だから爆速で認知症が進んだように感じたのかもしれません。前回の電話では、結構しっかりしてた。それもあってか、衝撃がすごかったです。


 シャキシャキした、しっかりした人だったんです。祖母も教育関係の仕事をしていました。そのため子どもへの接し方が上手で、知識も豊富で、自転車に飛び乗ってスーパーに行ってたような人なんです。

 でも今は違っていて。話しの切れ間に「はーいありがとう」と電話を終えるようなことを言ったかと思うと、「元気かな?」と話しを振ってきたり。優しく振り回された感じです。


 電話を切ったあと、心の中では号泣でした。でも実際は、電話がかかってきて風呂から飛び出たので全裸。体はびしょぬれ。風呂から出て同居人と話をしたけど、鬱を手ひどくやったためか、感覚鈍麻が抜けておらず涙ひとつ流れませんでした。

 だから、多分同居人は「みほし、あんまりショック受けてないな」と思ってるはずです。ショックは受けてる。涙が出ず笑顔が出てしまうだけで、受けたショックはあまりにも甚大だった。


 感覚鈍麻、まさかこんなに長く引きずると思ってませんでした。鬱になって以降、それまで毎年出ていた葬式関連のことに参加しておらず、悲しむべき場面から遠のいた生活を送ってました。だからなのか、内側と外側の感情がリンクしなかったです。


 恐らく遠くない未来、祖母か祖父を見送ることになる。その時、正しい感情を表して、お見送りができるようになっておかねばなりません。


 みほし ゆうせい


人間はいつか命を終えていく。人間に限らず、生きてているものは最終的には死んでいく。分かっていたのに、いざ自分の肉親がそこの近くまできているとなると、なにも分かっていなかったことに気づく。後の祭りという言葉が、ほのかに脳裏をよぎった出来事でした。


評価などいただけると嬉しいです。

感覚鈍麻、少しでも改善できればいいなと思います。

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