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電車を降りる。


苦痛でしかない人口密度も、


今日は少し物足りない。


駅を出て、7分。


デスクまで、5分。


……あと12分で、


佐藤くんに会ってしまう。


会いたい。


でも、


ちゃんと話せる気がしない。


距離。


視線。


触れた、指先。


思い出しただけで、心臓がうるさい。


普通にしたいだけなのに、


それが一番難しい。


絶対、変になる。


目を逸らすかもしれない。


変な間ができるかもしれない。


変に思われたらどうしよう。


嫌われたら、


どうしよう。


一歩が少し小さくなる。


会社はすぐそこだ。


数えていたはずの時間が、


気づけば減っている。


逃げるわけにもいかない。


小さく息を吐く。


気づけばぎりぎりの時間。


佐藤くんはもう出社してるだろう。


話しかけるより、


話しかけられる方が楽かもしれない。


明日は少し早めに出社しよう。


現実から目を逸らしてる間についてしまった。


佐藤くんの後ろ姿。


普通に。


いつも通りに。


……よし。


「佐藤くんおはよう」


…できた。


声も震えてない。


普通だ。


パソコンを起動し、メールを確認する。


……視線を感じる。


絶対気のせいなのに、


私が意識し過ぎてるからだ。


時計を見るふりして、ちらっと視界に入れる。


ほら。


私のことなんてみてない。


ちゃんと仕事してる。


私も、頑張らなくちゃ。


「一ノ瀬」


仕事に集中していると

ふいに横から声がする。


思わず肩が上がってしまう。


「自販機行くけど、なんかいる?」


「え、と……ううん、大丈夫」


「あ、そう……?わかった」


「ありがとね」


画面に視線を戻す。


佐藤くんの気配がなくなる。


今絶対変だった……


反応も、


態度も、


返答も、


絶対全部が変だった……


せっかく話しかけてくれたのに。


カフェオレって言えば良かった。


たったひとことなのに、


「一ノ瀬」


「……ん」


また変な態度。


なんで上手く出来ないんだろ。


「これ、いつも飲んでるよな?」


顔を上げる。


佐藤くんの手には、カフェオレ。


受け取ろうと伸ばした手が、一瞬止まる。


指先が、触れそうだ。


「……ありがとう」


缶の端を持って受け取る。


触れたら、どうなるんだろう。


一瞬だけ、


そんなことを考えてしまう。


「あ、お金」


「いいよ、今度なんか奢って」


「……うん、ありがとう」


すぐに開けてしまうのは

なんだか勿体無い。


たった数百円。


今までだって何度か貰った。


でも今日は、何故か特別な気がした。


缶をデスクの端に置く。


視界の隅に、ずっと入る位置。


少しだけ、気になる。


……あとで飲もう。


もう一度画面に視線を戻した。




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