79話 最終決戦
「は、はい」
ミアさんに促されたモモがそう返事すると、
「……」
「光の女神よ、その類稀なる数多の加護にて彼の者の力となれ」
「願わくばその偉大なる御力を与え給え」
「いざ、歳末大決算セールの在庫一掃大バーゲン!」
モモがみんなに対して、より入念に詠唱をする。
というかまた変な詠唱が混ざっていた気もするが、ここはあえてスルーしておこう。
パァァァ
僕達の体がほのかに光り、多数の加護の効果が与えられる。
なんだか今までよりほんのり暖かみを感じ、その光り方も効果が高そうな豪華なエフェクトになってる気がする。
「ありがとう!モモ」
「攻撃力の他、各種能力が超絶アップよ!」
モモの援護を受けたリナが魔王ゴブーゴに向かって叫ぶ。
「ク、クソォォォオオ!」
「そう簡単にやられてたまるものかぁ!」
魔王ゴブーゴはそう叫び、先程まで操っていた二つの盾と二つの手甲に再び臨戦体制を取らせる。
「さぁ、ここからは」
「反撃の時間よ!!」
魔王に負けず劣らず、高らかに叫んで僕達を鼓舞するリナは、まさに騎士団の団長だ。
まさに最終決戦と言った場面。
この燃える展開、もし可能ならば主題歌とかが流れ始めて欲しい所だ。
「いくわよ!!」
そう言って魔王ゴブーゴに向かって行くリナ。
「はい、リナ姉さん」
リナに次いで駆け出すレナ。
「……私も」
封印結界のやり取りをしていた内に治療を終えていたクルミも、リナとほぼ同時に飛び出していた。
「ウォオオオォォォォ!」
魔王ゴブーゴは叫び声を上げながら、炎を纏い宙に浮いているゴブシの手甲を、向かってくる三人へと勢い良く繰り出した。
「氷槍」
クルミが出した氷の槍はいつも出していたモノより、ほんのり大きくて強そう……な気がする。
これも極上の加護の効果ってやつかな。
その氷の槍が炎を纏ったゴブシの手甲の一つへと突撃すると、
バキィイイィィィィィィン!
先程はクルミの氷槍の方が砕かれていたのに、今度はゴブシの手甲の方が砕け散る。
大バーゲンセールの加護って凄いな、なんて思っていると、
「影刃」
二つあったゴブシの手甲のもう一つにも、クルミの影から伸びた影の力で攻撃するクルミ。
ズバァァァアァァァッ!
こちらも極上加護の効果だろうか、クルミの攻撃でゴブシの手甲が切り裂かれる。
「な、なにぃぃぃ!」
暗黒四天王のゴブシの手甲が、いとも簡単に破壊されて驚く魔王ゴブーゴ。
こちらが加護で強化されたのもあるが、魔王ゴブーゴ自体もこの極上封印結界の影響下で、当初より遥かに弱体化されてしまったのだろう。
タッ!
クルミの攻撃でゴブシの手甲を破壊し、それに次いでリナとレナが魔王ゴブーゴへと襲いかかる。
「させるかぁぁ!!」
魔王ゴブーゴは残った二つの盾でリナとレナの攻撃を防ごうとする。
「幻影虚風剣二重奏」
もうリナに見せてしまったので、出し惜しみせずに全力技で攻撃するレナ。
そう叫んだレナの動きがブレて見え始め、あたかも二人居るような華麗なコンビネーションを見せる。
魔王ゴブーゴは二つの盾でなんとかレナの一人コンビネーションプレイを防ごうとするも、
バキィイイィィィィィィン!
ズバァァァアァァァン!
やはり極上加護の効果か、暗黒四天王ゴブゾウの二つの盾もレナによって破壊された。
シュタッ!
アイコンタクトでレナとスイッチングするリナが魔王ゴブーゴへと豪快な剣技を向ける。
「食らいなさぁぁあい!」
リナはレナを追い越しながら飛び上がり、ウキウキで魔王ゴブーゴへと振り被る。
「クソぉぉぉぉ!」
ゴブシの手甲もゴブゾウの盾も破壊され、ガラ空きの魔王ゴブーゴが叫ぶ。
「まだまだぁぁ!」
魔王ゴブーゴは、そう言ってリナに向かって手をかざす。
すると現れたのは先程も見た……タライ。
そのタライはリナに向かって行き、その攻撃を防ごうとする。
「……それは!」
「さっき!」
「見たから!」
リナはそう叫びながら、振り被った剣をタライに向けて振り下ろす。
「あんたが、食らいなさぁぁぁい!!」
ガイィィィィィィン!
鈍い音が響いたかと思うと、リナに向かっていたタライが打ち返されて、逆にゴブーゴへと襲いかかる。
「へ!?」
意表を突かれた魔王ゴブーゴは、変な声を上げながら向かってくるタライを見つめる。
多分スローモーションみたいに見えてるんだろうな〜なんて僕は思った。
ゴイィィィィィィィィィィィィン!
そのタライは魔王ゴブーゴの顔面を直撃し、鈍い音を響かせた。
「ぐふぁぁ……」
分かりやすく鼻血をだしながらよろける魔王ゴブーゴ。
その頭にはピヨピヨヒヨコが見えてそうな程に足元がふらついていた。
「永太!!やっちゃいなさい!!」
リナの攻撃というか、跳ね返したタライによってふらついた魔王。
その千載一遇の攻撃のチャンス、そのタイミングでリナが僕に向かって叫ぶ。
それと同時にリナもレナもクルミも、僕の攻撃に巻き込まれない様に回避行動へ移る。
「……」
そう、僕はただ眺めていたわけじゃ無い。
みんなが魔王の隙を作り、この千載一遇のチャンスをお膳立てしてくれると信じて待っていたのだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
手に持ったのはチート剣である光輝闇暗炎竜剣。
そして、そこから繰り出される技は……
「邪王暗黒流次元断層剣零式改」
その光輝闇暗炎竜剣から凄まじい衝撃波なのか次元断層波なのかわからない凄まじい何かが出る。
僕にもかかっている極上加護の効果か、今まで出して来たこの技の中でも一番の威力だと自分でも分かる。
その言葉で表せない程の凄まじい何かは、隙だらけの魔王ゴブーゴに向かって行く。
ズゴォォォアアァァァァアアァァァァ!
爆音と閃光と闇と炎と、もうなにがなんだかわからない攻撃が魔王ゴブーゴに直撃する。
「グァアアァァァァァァァァァアア!!」
なにがなんだかわからない攻撃を食らい、絶叫する魔王ゴブーゴ。
魔王戦の開幕時に放った時には効かなかったこのトンデモ技。
だけど、ミアさんが構築してくれた封印結界。
モモが与えてくれた極上加護のバーゲンセール。
暗い過去を乗り越え、影の力のことを話してくれたクルミの氷と影の二段攻撃。
自分が死ぬことをも恐れず北の塔で、この国とみんなを守ろうとしてくれたリナ、そしてその死亡フラグを強制回避した影響により防衛線で命の危機に瀕するも、みんなのために戦ってくれたレナ。
その二人の連携攻撃。
みんなが繋いでくれたこのチャンスは、きっちり僕が決める。
それが僕の責任。
昔の僕が作ったこの自作ゲームを、
僕自身がクリアして、この国に平和を取り戻す。
「ぅおおぉぉぉぉぉぉお!」
僕は全ての想いと全ての力を込めてトンデモ技邪王暗黒流次元断層剣零式改を放ち、光輝闇暗炎竜剣を振り抜いた。
「グァアアァァァアアァァァアア!」
「魔王の我が!」
「負ける……のかぁぁぁぁ!!」
「クソぉぉおォォォォ!」
爆音と閃光と闇と炎と、もうなにがなんだかわからない攻撃の中、魔王ゴブーゴの断末魔が聞こえる。
「ォォォォ……」
ズゴォォォアアァァァァアアァァァァ!
ゴゴァァァアアァァァッ
ゴォォォォォォォ……
凄まじい爆風と爆音、そして凄まじい衝撃波が辺りを包み込む。
ォォォォ……
いつもより長かった爆音と閃光が収まり始めると、土煙が立ち込めていた。
その土煙も吹き飛んだ天井から入って来る風により、徐々に晴れていく。
「……」
「ふぅ~」
光輝闇暗炎竜剣を構えたまま僕は息を整える。
辺りにはそのトンデモ技の残滓なのか、黒いのか眩しいのかよくわからないものが立ち込めていた。
そして、そこにはもうゴージャスでゴールデンなゴッドゴブリンである魔王ゴブーゴの姿は見えず、跡形もなく吹き飛んでいた。
「……」
「やっ……」
リナが、やったの?なんて危うい台詞を言おうと瞬時に察知した僕は被せる様に叫ぶ。
「魔王討伐、完了!!」
「これが昏き太陽の勇者、永太だ!」
ちょっとカッコつけすぎな気もするが、リナに怪しげなフラグを立てられるよりは全然イイ。




