78話 封印の要
「大丈夫!だから!」
改めて大丈夫アピールする僕。
「今さら何をするというのだ」
「お前らはここで負けるのだ!」
そんな僕を見て頼りなさそうと感じたのか、さらにドヤ顔と決めポーズで追い打ちをかける魔王ゴブーゴ。
「さて、どうしますか?」
「コアクリスタルを北の塔に使った場合」
「封印の要が無くなってしまうと、お伝えはしましたが」
この状況を面白がっているのか、ミアさんが微笑みながら僕に問いかける。
「そ、そう!」
「コアクリスタルが無くても、僕には取っておきがあるからね!」
さっきは勢い余って失敗したが、今度は頑張って噛まないように喋る僕。
「なんだと!?」
魔王ゴブーゴが警戒している感じで僕に向かって叫ぶ。
「……それは、これだ!」
ジャジャン
「超龍聖剣スーパーエクスカリバー!」
僕はそう言って颯爽と聖剣を取り出して見せる。
うん、キマった。
「……」
「ダサっ」
ドヤ顔で聖剣を見せつける僕に、リナがボソリと呟く。
「いや!ダサくないよ!」
いや!ダサいけどね!昔の僕が付けたネーミングなので、改めて聞くと恥ずかしいぐらいダサいけど、ダサくないよ!
「……まぁまぁダサいけど、そこがイイ」
クルミはディスってるのか褒めているのか、絶妙な反応をする。
「ぇ、ダサいんですか?」
「あれ聖剣ですよね?」
レナはネーミングより聖剣という肩書を重視している様だ。
「です、多少ダサくても」
「由緒ある伝説の聖剣ですから!」
言い伝えや伝承好きなモモは、ネーミングをいじりながら褒めてる?
などと僕の出した聖剣で盛り上がっていると、
「その剣、まさか」
「厄災の古龍を打ち倒したという……あの剣か!」
「なんて強そうな名前だ……」
なんか魔王はこのネーミング、カッコ良くて強そうと思ってるみたいだ。
なにはともあれこの聖剣の事を知っているなら話が早い。
「貴様、その剣でこの魔王をも打ち倒すつもりだな……」
「だがそう簡単には行かんぞ!」
魔王さんが聖剣を見てヒートアップし始めたので、僕は冷静に返答する。
「ぁ、いや」
「この剣では戦わないよ?」
別にこの剣で魔王を倒そうとは思っていない。
「へ?」
「ん?どういう?」
魔王さんがちょっと混乱してきた所で、僕は説明を始める。
「厄災を振りまいた悪龍九帝」
「それを封じ込めていたのが、超龍聖剣スーパーエクスカリバーだから」
「この剣は封印の要として使えるんだ!」
そう、ヴァーンパークにあった聖域の神殿に封印されていた悪龍九帝。
それはこの超龍聖剣スーパーエクスカリバーの力によって封じられていたのだ。
だからコアクリスタルの代用品、封印の要として使うことが出来る!はず。
「……ですよね?」
ちょっぴり心配になった僕は、そう言ってミアさんに話を振る。
「ふふっ」
「そうですね、封印の要としては申し分ない」
「といいますか、これ以上無い程極上の封印結界が出来上がりそうです」
どうやら使える様で安心したが、ミアさんは驚きもせず意味深な微笑みを見せているけれど、一体どこまで分かっていたのやら。
いわゆる敵に回すと怖いタイプの人ですな。
今は味方なので頼もしい限りである。
「と、言うことで」
「封印結界、おねぎゃーしまっす」
そう言って僕はミアさんに聖剣を差し出す。
「はい、承りましたわ」
ミアさんは笑顔で僕の聖剣を受け取る……というか手に持った杖を軽く振ると、聖剣が宙に浮きミアさんの側へと移動した。
その聖剣に向かって杖をかざすと、結界の儀式なのか呪文なのか、なにやら呟き始めるミアさん。
「徒然なる世界の理をもって今ここにその力を示せ……」
中二病的なフレーズを並べ始めるが、言っている人が凛々しいとカッコよく見えるなあ、なんて感心していると……
「クソォォォ!」
「そうはさせんぞ!」
このままだと再び強力な封印結界を構築されてしまうので、魔王ゴブーゴがそれを止めるために攻撃の構えを取る。
両手を前に突き出し手を広げる、それはあの魔王曰く最強の技にして我が一族の究極奥義。
「豪轟ゴブリン砲をくらえ!!」
先程とは違い速射重視なのか、それほど溜めずに直ぐ様それは発射された。
ゴゴゴゴォォォォォォォオオ!!
それでも凄まじい威力の魔王の一撃が僕達に向かって来る。
「ちょ、まずいわよ!」
その攻撃を見てリナが慌てて戦闘体制を取るが、間に合わない。
ドゴオオオォォォォオォォ!!
「うわぁぁぁぁあ!!」
リナの悲鳴と共に爆風と轟音が響き渡る。
「……うわぁぁぁぁぁぁあ?」
叫んでいるのはリナだけで、僕やモモ、クルミにレナ、ミアさんは涼しい顔をしている。
「あれ?」
「いま、あの、攻撃を食らったんじゃ?」
なんだかリナが混乱してシドロモドロになってる。
「あれぇ?」
「だって私はちゃんと見たわよ!」
「自分が攻撃される姿を!」
そう言って僕に怒ってくる。
「ぇ〜と」
「リナは自分が攻撃される姿を自分で見たんだよね?」
僕は冷静にそう返す。
「そうよ!」
「あれ見てよ!あそこ」
「私が攻撃されたのよ!」
そう言ってリナは、今立っている場所とは別の場所を指差す。
そうゴブリン砲は僕達の居る場所では無く、違う場所に直撃していた。
「あれ?」
「さっきあそこに居たのも私よね?」
なんだかリナがますます混乱してきたので、説明してあげる事にする。
「あれは僕達の姿を別の所に映した偽の映像だよ」
「その映像で魔王を騙して、別の場所を攻撃させたってわけ」
リナにも分かりやすいように丁寧に説明してあげる。
「ぇ?ぁ?」
「でも誰が?こんな事を?」
状況は理解したものの、違う疑問が湧いてきてさらに混乱気味のリナ。
「……これは師匠の得意技」
混乱しているリナを他所に、冷静に呟くクルミ。
「見事にミアさんの術中にハマリましたね」
レナも同じく冷静に解説を始める。
「どういう事?」
そう言ってレナに問いかけるリナ。
「これが【蜃気楼】」
「ミアさんが最も得意とする術です」
解説役になってきたレナが、カッコいい台詞と共に説明してくれる。
そうミアさんは魔導師団の副師団長だが、隠密特殊部隊の陰の調律者No.1コードネーム【蜃気楼】でもあるのだ。
「これが……ミアさんの」
リナのリアクションの大きさにかき消されていた様だが、モモも驚いていたみたいだ。
「なぜ生きている!!」
「また、お前の仕業か!!」
別の場所を攻撃した事に気付いた魔王ゴブーゴが、僕達を再び見つけて叫ぶ。
王城に閉じ込められた時もこんな感じで、ミアさんの蜃気楼に惑わされたのであろう。
「もう一度吹き飛ばしてやる!!」
そう叫んで再びゴブリン砲の構えを取る魔王ゴブーゴ。
そんな魔王にミアさんがそっと呟く。
「もう遅いですよ」
そう言うとミアさんの側で浮いていた聖剣が眩しく光り始めた。
パァァァァアアァァァ
その光は広がっていき謁見の間、王城、王都を丸ごと包んでいった。
「……」
「なんだか、暖かい?」
光に包まれた僕達、モモはその光に何かを感じ取った様だ。
「そうですね」
「勇者様の聖剣のおかげで、極上の封印結界を構築出来ました」
「魔王軍の弱体化の他にも、私達への祝福の効果が追加されたみたいです」
ミアさんが微笑みながら解説してくれる。
相変わらず美しくて聡明で、流石という感じだ。
「な、なんだとぉ!!」
「ズルいぞ!お前ら!!」
攻撃体制を取っていたが、極上の封印結界が構築された為にゴブリン砲の中断を余儀なくされ、魔王が狼狽しながら叫ぶ。
「祝福の追加効果で、加護が強化されてる筈です」
「モモ姫様、さぁどうぞ」
狼狽している魔王を他所に、ミアさんはモモにそう告げる。
「は、はい」
ミアさんに促されたモモがそう返事する。




