74話 豪轟
「クックック」
「これで終わりかぁ?」
ゴールデンでゴージャスなゴッドゴブリンの魔王ゴブーゴは傲慢な態度でドヤ顔する。
クルミによる影との二段攻撃、さらにはレナの隠密特殊部隊での技、幻影虚風剣二重奏をも使いリナへと繋げた渾身の連携攻撃もタライによって防がれてしまった。
「くっ」
隠しておきたかった虎の子の技を出してもなお、魔王に届かなかった事に悔しがるレナ。
「では、こちらから行かせてもらうとしようか!」
魔王ゴブーゴは、そう叫びながらニヤニヤする。
こちらの全力の連続攻撃を防いで、完全に調子に乗っている様だ。
「我の最強の技にして」
「我が一族の究極奥義!」
なんか仰々しく、強さと凄さをアピールしながら叫ぶ魔王ゴブーゴ。
「さ……最強の究極奥義?」
「一体……どんな技なんでしょう」
その僕強いアピールに気圧されているのか、モモが緊張した面持ちで呟く。
「その名も……」
「豪轟ゴブリン砲!」
謎の決めポーズらしき物をしながら魔王ゴブーゴが叫ぶ……
「……」
「……。」
「ダサっ」
変な間が空いた後、リナがそう呟いた。
「ぁんだとぉ!」
「我の最強技だぞ!カッコイイわ!」
リナの言葉に顔を真っ赤にしながら反論する魔王ゴブーゴ、いや全身金色のゴールデンだったか。
「いゃ、ダサいでしょ」
「なんかこう……ダサい」
リナの語彙力が無いのが問題なのか、例えようもなくダサいのか……まあとにかくダサい。
レナの幻影虚風剣二重奏とか陰の調律者No.2とか、味方側は中二病全開でがんばって考えた感があるのだが、敵側の技名は適当感が凄い。
昔の僕が作った自作ゲーム内なので当然技名とかも昔の自分が考えたのだが、敵側の設定の雑さに思い入れの無さを感じる(汗
まぁ、小学生らしいと言えばそうなのだが……
「うるさい!」
「カッコイイと言ったらカッコイイのだ!」
なんか火に油を注ぐように、リナが魔王ゴブーゴを怒らせている。
「……結構ダサい」
魔王とリナのやり取りを見ていたクルミもボソリと呟く。
「確かに……」
クルミに便乗する様にレナも思っていた事を言ってしまう。
「まあまあ、魔王さんも精一杯考えたんですから」
「多少ダサくても気にしないであげてください」
モモがフォローしてるようでディスってるような返しをする。
「ぁんだとぉ!」
そんなやり取りで、さらに燃料を投下されて魔王ゴブーゴがキレ散らかす。
「貴様ら全員まとめて吹き飛ばしてやるわ!!」
そう叫んだ魔王は両手を前に出して掌を広げた。
すると強大な闇の魔力がその掌の前に収束していくのがわかる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「「!?」」
魔王ゴブーゴが出す異常な魔力の高まりを皆が感じ取り、ダサかった雰囲気が吹き飛ぶ。
「氷盾」
「……みんな、こっち」
クルミが直ぐ様氷の魔法盾を展開してみんなを呼ぶ。
僕達はクルミの側により、その氷の魔法盾へと隠れる。
「……あの魔力の感じ」
「この盾だけじゃ、持たない」
先程のゴブシの拳である手甲の時にも砕かれてしまったこの氷の盾。
あの時は砕かれたとは言え威力を相殺出来ていたが、今度の魔王の攻撃は恐らくあの時以上である。
このままでは盾ごと吹き飛ばされてしまう、そう直感したクルミは、
「影防壁」
影使いの能力、シャドウを壁の様に展開し氷の盾と合わせ二重の防壁を張った。
「……これで、耐えきれる」
「……といいな」
なんかお茶目にトンデモない事を呟くクルミだが、僕達はクルミを信じて防壁の裏で防御体制を取る。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
異常な程に高まった闇の魔力は魔王ゴブーゴの手の先へと収束していき、ひときわ眩く輝いたその瞬間、
「貴様らくらえぇぇぇぇぇぇえ!!」
「これが!豪轟ゴブリン砲だ!!!!」
魔王が高らかに叫ぶと、圧縮された魔力の塊がまさに豪快に轟音を上げながら僕達に向かって発射された。
ズゴォォオオオォォオォォ!
ゴールデンの様な闇の魔力がゴージャスに轟音を上げ、ゴッド豪快にクルミの展開する氷と影の魔法盾に直撃する。
「くうっ!」
ビキビキッ!
氷と影の混合二重盾のおかげで即破壊は免れたもののビキビキと盾がヒビ割れていく。
「……ごめん、やっぱりもたない」
クルミがそう呟くと同時にクルミの展開していた盾が破壊される。
バリィィィィィィィィィィン!
「うへぇえっ!」
変な声を出しながらも、僕は庇うようにモモに覆いかぶさる。
ドドズゴズゴォォォォォアアァァァァ!
ものすごい豪快な轟音と共に衝撃波が僕達に襲いかかる。
ォォォォオオオォォ……
ォォォ……
やがて爆風と土煙が収まって来る。
「イタタタ……」
「大丈夫?モモ」
ものすごい衝撃波だったが、なんとか直撃は免れた様で覆いかぶさったモモを心配して声をかける。
「……ぁ、ありがとう、ございます」
なんだかちょっぴり顔を赤らめながらお礼を言うモモ。
土煙が収まって来ると、盾のあった場所にクルミが座り込んでいるのが見える。
「だ、大丈夫ですか?クルミ」
先程まで照れていたモモは、クルミに気付くとすぐに真剣な顔に戻り、座り込んでいるクルミに駆け寄っていく。
僕もモモに次いでクルミの元へと駆け寄る。
「腕に怪我を……?」
「今すぐ治癒しますね」
座り込んでいたクルミは左腕を押さえていて、その腕から血が垂れていた。
モモはそんなクルミの腕に手をかざすと、その手が淡く光り始め傷を癒していく。
「……ありがとう」
「……盾で耐えきれなかったから、せめて攻撃を受け流そうとしたけれど」
「……衝撃を分散しきれなかった、ごめん」
盾が完全に破壊される前に衝撃を分散させ、直撃を避けたという事らしい。
僕達はクルミ咄嗟の判断力に救われたのだ。
「直撃していたら危なかったよ、むしろありがとう」
クルミが上手く衝撃を分散してくれたので全滅は免れたのだ、むしろ感謝しなくては。
「……いったぁ~」
そう言いながらリナも起き上がる。
「大丈夫ですか?皆さん」
そう言ってみんなを心配するレナ。
レナも無事の様で何よりだ。
「ってかなんなのよ!あれ」
「名前がダサいのにあんな威力なんて、ありえなくない!?」
なんかリナが女子高生みたいなキレ方をして、ちょっと面白い。
「名前はともかく、あんなのが直撃したらタダではすまないです」
「クルミ、ありがとう」
レナもクルミが上手いこと直撃を避けてくれた事に気付いているようで、そう言いながらクルミに駆け寄る。
確かにあの威力の攻撃が直撃したら大変なことになる。
しかも、その攻撃をなんとか防いで直撃を回避してくれたクルミが負傷している為、再びあんな攻撃を出されたら防ぐ術が無い。
モモがクルミを治療してくれてはいるが、そんなすぐには治らないだろう。
もしもう一度あのダサ強い攻撃を出された場合、みんなを庇うためにリナが自身を犠牲にして盾となる可能性がある。
なんてったって北の塔での前科があるからね。
その心意気自体は素晴らしいのだが、そんな事をされたら北の塔の二の舞になって、せっかく救ったリナの命を無駄にしかねない。
ならここは……僕が時間稼ぎをしますか。
僕は柄にもなくそんな事を思いながら、魔王の前に立つ。
「なかなか……やるね魔王」
カッコよく決めながら魔王と対峙する僕。
「ちょ、あんた何勝手に……」
リナがそう言って割り込もうとした所をレナが制する。
「……勇者様は多分、クルミの治療時間を稼いでくれてる」
隠密特殊部隊の人は察しがいいのか、僕の真意を言わずとも感じてくれて有難い。
「……むぅ」
レナに止められてリナは渋々足を止め、リナは僕と魔王の様子を伺う事にした様だ。
「お前が勇者だな」
僕にそう問いかける魔王。
「……そうだ」
なんだかシリアスモードで会話が進行しつつある緊迫した場面である。
そんな事を思いながら僕は返事する。
「我が軍門に下れ」
「さすればこの世界の半分をやろうではないか」
すると魔王は最終決戦前のお決まりの提案をして来た。




