73話 末弟
「私も暗黒四天王なのだからな!」
ゴールデンでゴージャスなゴッドゴブリンの魔王ゴブーゴが僕達に向かってそう叫んだ。
「「な、なんだって〜!」」
魔王のその言葉に、僕以外の四人が口を揃えて驚きの声を上げる。
「いやいやいや」
「意味わかんないんだけど!」
「なんで四天王に五人目が居るのよ!」
リナが凄くツッコミ上手なツッコミをしてくれる。
四天王に五人目が居る……うん、小学生とかが考えそうなボケをそのまま設定に入れてくる昔の僕。
「しかもなんで五人目が、今までの暗黒四天王のモノを使えるのよ!」
「余計にワケワカメなんですけど!」
うーん、リナはツッコミ自体も正面突破的で素直なツッコミをしてくれる。
わかりやすくて素晴らしい。
すると、魔王ゴブーゴがドヤ顔で答える。
「私が末弟だからだ!」
「……ぇと」
「末っ子って事ですかね」
少し間が開いた後、モモが魔王の言葉を確認するように聞き返した。
「そうだ!」
「だから我が兄達のモノを、我が使っても問題ないのだ!」
謎の独自理論を振りかざし始める魔王ゴブーゴ。
「ぇ?」
「暗黒四天王がお兄ちゃん?」
「っていうか、普通なら長男とかが魔王をするんじゃないの?」
素朴で真っ当な疑問を魔王にぶつけるリナ。
「フッフッフ」
「浅はかだな!」
ドヤ顔で高らかに笑う魔王ゴブーゴ。
「我が最も魔王に相応しいのだ!」
「我が望むものは全て手に入れる!」
「我の要求は全て無条件で叶えられる」
「だからこそ、この世界は我が物となるのだ!」
凄く偏ったと言うか、甘やかされて育ったのか、トンデモない独自理論をドヤ顔で話す魔王ゴブーゴ。
「なんていう暴論なの」
「……これが魔王」
レナが魔王ゴブーゴの独自理論に絶句する。
「勝手にあんたのモノにしないでよね!」
「王国騎士団団長のリナ様がいる限り」
「この国で勝手な真似はさせないわよ!」
魔王の暴論に対し、リナも自信満々のいつもの名乗り口上で返し、再度魔王ゴブーゴへと攻撃を仕掛ける。
ギィイイン!
ガイィィィン!
「貴様らの様なゴールデンでもない、ゴージャスでもないモノが」
「ゴッドゴブリンであるこの魔王ゴブーゴを倒せる訳がなかろう」
「返り討ちにしてくれるわ!」
リナと魔王が打ち合いながら小学生の様な激しい口喧嘩をしてる。
ギィイイン!
キイィィン!
「ぁ〜、もう」
「やかましいわね!大人しくぶっ飛ばされなさい!」
魔王の独自理論も凄いが、リナも中々に負けてない。
とは言ったものの、魔王ゴブーゴの使う暗黒四天王の力。
先程からのリナの攻撃も完全に防がれていて、一筋縄ではいかなそうである。
「はぁっ!」
魔王ゴブーゴとリナの口喧嘩の隙を狙い、レナが攻撃を仕掛ける。
「ぉおっとぉ!」
キイィィン!
「そんな攻撃、我には通らん!」
ゴブゾウの二つの盾を巧みに操り、リナとレナの攻撃を防ぐ魔王ゴブーゴ。
「影刃」
ギィイイン!
「氷槍」
キイィィン!
「……くっ」
先程と同じ様にリナとレナの連携攻撃とは別角度からクルミが攻撃を仕掛けるも、炎を纏ったゴブシの手甲に防がれる。
ギィイイン!
ガイィィィン!
キイィィン!
クルミのシャドウの影攻撃まで含めると実質四人攻撃なのだが、それでも二つの盾と二つの手甲を巧みに操り攻撃を防ぐ魔王ゴブーゴ。
僕はと言うと……ほら、モモを守らないといけないし、リナやレナ、クルミの様にそういう鍛錬をしたわけでもないし。
素人の僕が戦いに割って入っても邪魔になるだけだけし!
なんて言い訳をつらつら並べているが、なにより開幕に放ったチート剣のトンデモ技、その直撃を受けても倒せなかった魔王。
その魔王に生半可な攻撃は通用しないであろうと思ったからだ。
北の塔のクリスタルを吹き飛ばした影響で、結界が解けている。
それはつまり今の魔王は全く弱体化していなく、全力モードという事なのだ。
魔王に攻撃を仕掛けているリナやレナ、クルミもそれはは薄々感じているであろう。
それでも魔王に立ち向かっている。
それは何故か。
このパーティーの中で最も攻撃力のある攻撃、それがあのチート剣のトンデモ技。
それでしか勝ち目は無いというのを皆が思っている、それを僕は感じ取っていた。
恐らくだが、今魔王ゴブーゴの使っているゴブゾウの二つの盾やゴブシの拳の手甲、それらを全て防御に回した事でチート剣のトンデモ技をなんとか防いだのであろう。
リナやレナ、クルミが諦めずに攻撃を仕掛けているのは、そのチート剣のトンデモ技を今度は防御されずに魔王に直撃させる為の隙を作ろうとしている。
そんな想いを察して、僕はモモを守りながらチャンスを伺っているのだ!
……と言うことにしておこう。
ぁ、ホントだよ、ホント。
「まぁぁったくもぉぉ!」
「このぉぉぉぉぉ!」
なんて叫ぶリナだけは、本気で魔王をぶっ飛ばそうとしてる気がするけどね(汗
ギィイイン!
ガイィィィン!
キイィィン!
リナとレナ、クルミの三人は何度も魔王に攻撃を仕掛けるが、その鉄壁の守りを打ち崩せずにいた。
「こうなったら……」
「出し惜しみはしてられない!」
レナが呟いた次の瞬間、
「幻影虚風剣二重奏」
そう叫んだレナの動きがブレて見え始め、あたかもレナが二人居るような華麗な動きを見せる。
「ぇえ?ぁ、うん」
急にレナが二人になった様な動きをするが、今までの連携の信頼があるのかリナはすぐに順応する。
先程リナとレナがやっていたコンビネーション、それにレナの幻影が加わり、さらにはクルミとシャドウの二段攻撃。
全て合わせると五段の連続攻撃、それが魔王へと襲いかかる。
キイィィィィィン!
ギィイイン!
ガイィィィン!
キイィィン!
レナとレナの幻影がゴブゾウの二つの盾を釘付けにし、クルミとシャドウの二段攻撃がゴブシの拳の手甲の動きを止める。
「リナ姉さん!」
レナがそう叫ぶと、待ってましたの如くリナが飛び出す。
「いっけえぇえ!」
「食らいなさい!!」
リナはそう叫びながら、ガラ空きの魔王へと豪剣を振り下ろす。
「くっ!!」
二つの盾と二つの手甲の動きを止められて、防御の出来ない魔王。
その魔王にリナの斬撃が当たると思われたその時、
ギィィィィィィィイイン!
「えっ!?」
リナの攻撃が通らず、鈍い音が響き渡る。
「クックック!」
「残念だったなぁ!!」
魔王ゴブーゴのドヤ顔が、ますますドヤ顔しながら叫ぶ。
「これは……」
「タライ!」
リナの渾身の攻撃はタライによって防がれていた。
このタライには南の塔で散々苦しめられてきたリナ。
そのタライが再びリナの前に立ち塞がったのだ。
ザザッ……
タッ、
レナの奥の手まで出した五段攻撃だったが、それでも魔王ゴブーゴには届かなかった。
一旦仕切り直す為、僕とモモの側に下がって来たリナとレナ、クルミの三人。
「全く……なんなのよもう」
なかなか攻撃が通らずフラストレーションが溜まり始めてるリナ。
「それに、レナあれは……?」
先程レナが使っていた技、幻影虚風剣二重奏の事であろう。
それについてリナかレナに問いかける。
「……後でちゃんと説明します」
「今は魔王をどうにかしないと」
王国騎士団の副団長であるレナ。
実は隠密特殊部隊の一員であり、陰の調律者No.2のコードネーム【幻影】でもある。
その裏の技の一つである、幻影虚風剣を見せてしまった。
騎士団の副団長としてリナをサポートする一方で、隠密特殊部隊として色々と裏から手を回したりしていた。
その事をリナには秘密にしていたのだが、この魔王戦ではその秘密の技や力を隠していては勝てないと踏んだのであろう。
たとえそれが、隠していた秘密をリナにバラす事になったとしても……
「……」
「あとでじっくり聞かせて貰うわよ」
「その為にはまず……アイツをぶっ飛ばさないとね」
リナはそう言ってレナの不思議な技については深く追求をせず、魔王を再び睨みつける。




