71話 魔王
「邪王暗黒流次元断層剣零式改」
振り抜いた光輝闇暗炎竜剣から凄まじい衝撃波なのか次元断層波なのかわからない凄まじい何かが出る。
ズゴォォォアアァァァァアアァァァァ!
「ぅえぇ!、ちょっと!」
玉座にいるのが魔王だと確認する前に、問答無用でトンデモ技をブチかます僕に驚くリナ。
ゴォォォアアァァァァアアァァァァ……
そのチート剣のトンデモ技の威力は凄まじく、玉座もろとも謁見の間の天井をも吹き飛ばしていた。
玉座のあった場所には大量の瓦礫と煙が立ち込める。
「いきなりなにトンデモない事してるのよ!」
いつもはリナがやっている問答無用な猪突猛進を、僕がした事にツッコむリナ。
「ぇ?先手必勝で正面突破だって、リナはよく言っているじゃん」
驚くリナに僕はサラッとそう返す。
だってここまで来たらシナリオ通りにやる必要なんか無いし、とっとと倒したほうが話が早くていいじゃん〜と口には出さないが、そんな態度で話す。
「いや!そうだけど!」
「魔王じゃ無かったらどうすんのよ!」
珍しくリナがツッコミ側に回り、僕に向かってそう叫ぶ。
「大丈夫、あれは魔王だよ」
「勇者の勘がそう言ってる」
驚いているリナに向かって僕は冷静に返す。
「ぇ、あ〜」
普通は勘でやったと言われたら、確証も無いのに!と怒るところだが、ここまで僕の言う勇者の勘とやらで散々言い当てられて来た為に反論出来ずにドモるリナ。
周りで僕の行動を見ていたモモやクルミも静かに見ている。
今までの勇者の勘とやらの実績で、僕を信頼しているのだろう。
「それで……」
「やったの?魔王」
玉座のあった場所に積み重なる瓦礫と土煙を見ながらリナがそう呟く。
「しまった!」
リナのその言葉を聞いた僕は、ある事に気付き叫ぶ。
確かにこのチート剣のトンデモ技は凄まじい威力があり、今までも様々なものを吹き飛ばしてきた。
だが、僕が今した行動に致命的な欠点がある事に気付いてしまった。
「なによ!急に!」
僕のしまった発言に驚いたリナが、僕に向かって叫ぶ。
「……あれ」
状況を冷静に見ていたクルミが、玉座のあった瓦礫の山を指差す。
カラ、カラッ
土煙が流されて見えて来た瓦礫の山から手が出て来ているのが見える。
「……まさか、あの凄まじい技の直撃を受けて生きているの?」
同じく冷静なレナが瓦礫から出て来た手を見て驚く。
そう、僕の犯した失態というのは……
戦いの序盤に最強技を出してしまった事である。
メインシナリオ通りに進む必要の無くなった僕が、事を急いで初っ端から最強技を出してしまった。
漫画やアニメのお約束として話の序盤に出した必殺技は効かない、というものがある。
それを僕はしてしまったのである。
さらにリナの、やったの?発言。
ここまでフラグを重ねられたら、これはもう……
ガラガラッ!
勢い良く音を立て、瓦礫から全身が出て来ると再び土煙が舞い、ぼんやりと人影だけが見える。
「そんな……」
今まで一撃必殺で確実に倒してきたはずのトンデモ技でも倒せない。
その事実にモモの声が震える。
「てか、どうすんのよ!」
「天井まで吹き飛ばしちゃって!」
確かに、深く考えずに吹き飛ばしたものだから天井が丸ごとなくなっちゃってる。
「ぁ、え〜と、それはゴメン」
天井を吹っ飛ばした事については素直に謝る僕。
というか、それよりも魔王だ。
「ウガァァァあぁぁぁぁああ!」
立ち上がった際に背中に乗っていた瓦礫や周りの破片を吹き飛ばしながら咆哮する魔王。
「いきなり何してくれてるん!」
「俺の見せ場が台無しじゃないかぁぁ!」
ホコリまみれの魔王がキレ散らかしながら僕達に向かって叫んだ。
確かに魔王の登場シーンを全部吹っ飛ばして台無しにしたのは間違い無い。
「……貴方が、魔王なんですね」
モモが改めて、僕達の最終討伐目標である魔王にそう問いかけた。
「そうだ!」
「わたすぃが魔王だ!」
そう轟き叫ぶ魔王。
「ぁ、噛んだ」
僕が空気を読まず、すかさずツッコんでしまう。
「……」
「ウガァァァあぁぁぁぁああ!」
「うっさいわ!私が魔王だぁ!」
変な間があった後、叫んで誤魔化しながら改めて言い直す魔王。
「まぁ、細かい事はどうでもいいわ」
「アイツをぶっ倒せばいいのね」
目の前の魔王を見ても臆することなく、いつもの正面突破なリナがそう言う。
「色々とやかましいわ!」
「大人しく聞けや!」
出鼻を挫かれ喋りもカミカミな魔王がそう叫んで、名乗り口上を始める。
「我が名は魔王ゴブーゴ」
「ゴールデンでゴージャスなゴッドゴブリン」
「魔王ゴブーゴだ!」
羽織っていたマントを掴み、それを脱ぎ捨て瓦礫で被ったホコリを吹き飛ばすとそこに現れたのは……金ピカに輝くゴブリンだった。
天井を吹っ飛ばしてしまったからか、日の光を浴びて余計に輝くゴールデンゴージャスゴッドゴブリンゴブーゴ……ゴが多い。
「……」
「……なんか下品ね」
全身金色でゴージャス?なゴブリンに向かってリナがそう呟く。
まぁ、天下取りの野望に燃える人は金ピカ大好きで、全部金色にしたがる傾向はある。
どこぞの秀吉の茶室やら、お城のてっぺんに輝くシャチホコとかね。
そんな天下人?もとい魔王に向かってリナが、「下品」などと割と失礼な事を言ってしまう。
「なんだとぉぉォォォォ!」
「ゴールデンでゴージャスなゴッドな私に向かって!」
「ゆるしぁゃん!」
当然のようにブチ切れて、またもや噛む魔王さん。
「ふっ」
「魔王だかなんだか知らないけど」
「美しくて可憐で最強な王国騎士団の団長であるリナ様が」
「ぶっ倒してあげるわ!」
魔王の口上に対抗してなのか、いつもの名乗りに加えて美しいとか可憐とか自分で言い始めちゃうリナ。
「ほぅ、美しくて可憐なのか」
リナのそのおもしろ?名乗りに、僕はついボソリとつぶやいてしまう。
「うっさいわね!」
「いいでしょ!可憐だって!」
なんか照れながら僕にツンドラして来るリナは中々に可愛らしい。
しかもリナのおかげで、いきなり出したトンデモ技が効かなかったという重い空気がなぜか和らいでる。
さすが美しくて可憐な騎士団団長様。
そんなやり取りをしていると、謎の威圧感を感じる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「貴様ら!この魔王を放ったらかしてイチャイチャするんじゃない!」
せっかく改めて名乗り口上をしたのに、放置気味になっていた魔王が激怒する。
まるで末っ子の構ってちゃんの様だ。
「イチャイチャなんか……してないわよ!」
「何言ってんの?はぁ?バカじゃない?」
「なんであたしがこんなバカ勇者と!」
「はぁ!?」
妙に口数多く反論するリナ、顔が赤くて照れてるのがまた宜しい。
それにしても思いっきりバカ勇者と言われてしまった。
「あら、そうですか?」
「じゃあ私が勇者様にアタックしても良いって事ですね」
この流れに割り込むように入って来たのは、リナの双子の妹で副団長なレナ。
そのレナが冗談交じりにリナに向かってそう宣言する。
……ん?冗談、だよね?なんて僕が思っていると、
「……ぇ、えと!」
リナがドモり始めて、
「私も!」
「私も参加します!」
さらにはモモが珍しく大きな声で参加表明する。
ってか、モモが伝承言い伝え系以外で積極的になっている。
「……くりきんとん、くれるなら」
「私も参加、したい」
なんかクルミも流れに乗って参加表明して来た。
ってか、これは一体なんの流れ?
そんな感じで話が脱線しそうな所に再び……
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「貴様ら!またこの魔王を放ったらかしてイチャイチャするんじゃない!」
再び無視されて、放置状態になっていた魔王が激怒しながら叫ぶ。




