53話 潜入
北の塔の砦攻略の為、僕とクルミは砦の裏手側から潜入する手筈になっていて作戦開始のタイミングを待ちつつ待機していた。
それにしても多数の雑魚ゴブリンが防備している堅固な砦にたった四人で攻め込んで落とすって、普通に考えると凄まじく無謀だと思う。
だけどRPGとかではたった一つのパーティーが要塞を落としたり、魔王軍を壊滅させたりするのが普通というのだから恐ろしい。
この世界も昔の自分が作ったゲームなので当然そういう流れの作りになっている。
実際に少人数で砦攻略出来るのか的な心配は多少あるものの、リナの剣技とクルミの隠密特殊部隊仕込みの技術があればなんとかなりそうな気もしている。
そんな事を考えていると砦の防備を固めていた雑魚ゴブリンがなにやら騒がしくなって来ていた。
何を話しているのかは良くわからないが、数匹のゴブリンを残してどこかへ移動して行く。
「作戦、始まったかな」
その動きを見て僕はクルミに話かける。
「……うん」
「じゃあ、行く」
「ついて来て」
そう言ってクルミは音も立てず移動し始める。
クルミは平然と森の中の藪を静かに素早く移動していくので、僕は必死にそれを追いかけた。
砦の裏手にもこじんまりとした門がある。
通用門か勝手口か、と言ったところであろう。
モモとリナ達が正面側で陽動をしてくれているおかげでその門には数匹のゴブリンしか残っていない。
その門の側の木陰から様子を伺うクルミと僕。
「とりあえずあの雑魚ゴブリンをどうにかしないとね……」
と、クルミに話しかけた……筈のクルミが隣に居ない。
「ぇ?」
僕は変な声を出しそうになりながら裏手の門の方を見ると、
ズシャア!
バサッ!
クルミが既に雑魚ゴブリンに攻撃を仕掛けていた。
というか既に雑魚ゴブリンは倒されていた……。
まさに秒殺、である。
「……もう大丈夫」
クルミは呆然と見ていた僕に向かってそう言った。
さすが隠密特殊部隊、こういう潜入的な事はお家芸といった所か。
「ぁ、うん」
僕は気を取り直して雑魚ゴブリンのいなくなった裏手門?勝手口の前に行く。
門は見た感じ頑丈そうでぶち破れそうに無い。
しかもなんだかほんのり魔力を帯びている?いやこれが魔力障壁ってやつなのかな?
「それで……これどうするの」
力技でも開けられそうにないし、魔力障壁だとしたら専門外なので僕にはどうしようもなさそうだ。
「……まずは、安全装置の解除から」
「これを解除しておかないと、開けた途端に警報が鳴る」
クルミがそう言って扉に手をかざす。
「ぁ〜、なるほど」
「スパイ作品によくあるやつか」
「解除しないとセ〇ムに連絡行くやつね」
そう言って僕は浅いスパイ知識を披露する。
「そのセ……なんとかって魔法は知らないけど」
「多分そう」
クルミそう言って静かに目を閉じると、かざした手がほんのり輝く。
魔法に関しては正直仕組みも何も分からないので、魔導師団であり隠密特殊部隊なクルミに魔法とスパイ的な事は任せる事にした。
カチャリ
分かりやすく鍵の開く音がして、裏手の門から感じていた魔力的な物が消えた気がする。
「……開いた」
「それじゃあ行く……よ、永太」
クルミがそう言って僕を見る。
「うん」
僕はクルミに返事していよいよ僕達は砦の中に潜入する。
「しかし、裏口からこうも簡単に侵入できるなんて」
「クルミはすごいね」
砦内の様子を伺いながら進んで行くクルミにそう声をかける。
「解除術式が変更されていなかったから」
「……すんなり行けただけ」
なるほど、元々この砦は王国のものだからその解錠方法も知っていたって寸法か。
「……まぁ変更されていても」
「私がなんとかする」
なんて頼りがいのある言葉を言ってくれるクルミ。
さすがは隠密特殊部隊、こういう事はお家芸。
そんな話をしながら砦内の奥へと進んで行く僕とクルミ。
時折雑魚ゴブリンを見かけるものの、身を潜めてやり過ごしたり、クルミが素早く処理したりして順調に奥へと侵入して行く。
やがて魔力管制室と思われる扉の前に到着した。
「……ここからが本番」
「ここを制圧する」
クルミはそう言ってクールな顔をますますクールにして僕に告げる。
「……わかった」
いつになく緊張感のある話の流れに真面目な顔で答える僕。
「……じゃあ、行く」
クルミがそう言うと同時に扉を開け、魔力管制室内部に突入した。
「影刃」
ズシャア!
ズバァ!
魔力管制室内にも雑魚ゴブリンが数匹居て、クルミの初動で二匹を瞬殺する。
クルミに次いで僕も魔力管制室内に入って行く。
「な、なんだ貴様らは?」
管制室内には雑魚ゴブリンより一回り大きいゴブリンが居て、突入してきた僕達を見てそう叫んだ。
「……私が行く」
「永太は残りをお願い」
クルミがそう言うやいなや一回り大きなゴブリン、チーフゴブリン?に向かって行った。
いつものちびシャドウが、元のシャドウの大きさになり、クルミとの二段攻撃を仕掛ける。
ギィイイン!
ガィイイン!
そのチーフゴブリン?はシャドウの影攻撃とクルミの魔法攻撃をなんとか防いでいる。
瞬殺されていないだけ他のゴブリンより強いのが見て取れるが、防戦一方で完全にクルミに押されている。
その戦いを見ていたのは僕だけでは無く、数匹残っていた雑魚ゴブリンもアワアワしながら見ている。
僕はそんな雑魚ゴブリンの死角に周り、そっと剣を抜く。
ズバァ!
ズシャア!
チーフゴブリンとクルミの戦いに見とれていた雑魚ゴブリンを僕はアッサリとやっつける。
なんというか、隙を付くのも戦略の一つ!なので決して勇者なのに卑怯な手を使っている訳ではない。
うん、決して。(二回目)
それにしてもこの剣……超龍聖剣スーパーエクスカリバー、切れ味がエグい。
さすがこのゲーム内での最強装備なだけある。
ぁ、あの光輝闇暗炎竜剣は後から追加したゲームバランス崩壊系のチート剣なので、それは除外した上での話だけどね。
普通に進めてる分にはこのスーパーエクスカリバーが最強剣扱いになるはずだった。
その肩書に負けない位の切れ味だ。
まるで通販番組で力を入れなくてもスッと切れます、ギコギコしなくても大丈夫。
みたいなノリである。
なんて事を考えていたら、いつの間にかクルミもチーフゴブリンを倒していた。
「……これで制圧完了」
クルミはクールにそう告げる。
「ふぅ」
ひとしきり雑魚を倒し、魔力管制室を制圧した僕とクルミ。
というかほぼほぼクルミがやってくれたんだけどね!
一段落した所で辺りを見回す僕。
見た感じ本当に何かの管制室みたいに全面に多数のモニターと並べられた机に各種計器や小さなモニター、これは普通に近代的な設備である。
とは言えよく見ると、丸いメーターに見えて魔法陣が書いてあったりゲージの名前がMPだったりと分かりやすい魔法感も出してくれている。
昔の自分の記憶を辿ると……ファンタジー世界なのに普通に機械的な設備を置いた記憶がある。
そんないい加減な世界観をいい感じで辻褄合わせしてくれているのがこの魔力管制室なのだろう。
「ぁ、リナ達だ」
全面にある大きなモニターには正面扉側の映像が映し出されていて、そこにはいい感じで大暴れするリナが映し出されていた。
「こうして見ると……リナってやっぱり強いんだねえ」
「さすが騎士団長」
リナは雑魚ゴブリンをバッタバッタとなぎ倒していく。
とは言え多勢に無勢で一人で倒しきれる量では無い。
「……じゃあ」
「魔法障壁の解除をする」
クルミはそう言ってコントロールパネルか何かを操作し始める。
少々時間がかかりそうな雰囲気があったので僕はモニターに映るリナの勇姿を眺める事にした。




