47話 ヴァーンパーク
「……ちょ、待って」
「なにその剣?聞いてないよ!」
それを見た悪龍は謎の剣の威圧感にドギマギしてたじろいだ。
「聖剣が無いと……なんだって?」
僕はわざとらしく悪龍に聞き返す。
「ぇ〜!いやそれとこれは別で……」
悪龍さんは威厳のある喋りすら忘れて言い訳を始める。
「……それじゃあ悪龍退治といきますか!」
そんな悪龍の言い訳が言い終わらない内に、僕はそう言って剣を握る手に力を込める。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
それと同時に剣から迸る闇のような光の様な謎オーラが輝きを増す。
「邪王暗黒流次元断層剣零式改!」
振り抜いた光輝闇暗炎竜剣から凄まじい衝撃波なのか次元断層波なのかわからない凄まじい何かが出て、それが悪龍に直撃する。
「ぇぇぇぇえぇえ!!」
悪龍の断末魔が遠くに聞こえる。
ズゴォォォアアァァァァアアァァァァ!
爆音と閃光と闇と炎と、もうなにがなんだかわからない攻撃が悪龍九帝を吹き飛ばした!
巨大なヘビトカゲが居たはずの場所にその巨体は無く、何かの消し炭や破片やらが飛び散って居るだけであった。
「ふぅ~」
光輝闇暗炎竜剣をアイテムボックスにしまいながら、僕は息を整える。
「……相変わらずデタラメな剣と技ね」
だんだんこの技の凄さに慣れてきて、その威力に巻き込まれないよう既に遠目に退避していたリナが呟く。
「……うん」
「せやな〜」
クルミとその肩に居るちびシャドウも一緒につぶやく。
「さすがです、永太様!」
モモは相変わらず手放しで褒めてくれて嬉しい。
すると周囲の風景が歪み、気付くと最初に居た神殿の祭壇の前に僕達は戻っていた。
「これは……悪龍を倒したので試練が終わった?って事でしょうか」
状況をモモが解説してくれて大変助かる。
「ぉお、試練を突破するとは」
「あなたがたは本当に勇者様達なのですな」
神殿まで案内してくれた森の精霊さんと木の妖精さんが僕達を見て安堵する。
「フッ!このリナ様にかかればこんなものよ」
悪龍を倒していないリナが自信満々に話す……が、厄災と呪いはほぼほぼリナが食らってくれてたしツッコまないでおくか、とそう思いながらリナを眺める。
「さぁ、どうぞこの聖剣を」
森の精霊さんがそう言って祭壇に刺さっている聖剣を抜くように促す。
「うっ……」
それを聞いてリナが一瞬たじろぐ。
「また何処かに飛ばされるんじゃないでしょうね……」
リナは説明も聞かず聖剣に触って試練の間に飛ばされた件を一応反省して、警戒している様だ。
「大丈夫ですじゃ、試練をクリアし勇者と認められた証に」
「この伝説の超龍聖剣スーパーエクスカリバーを使って下され」
森の精霊さんがそう言って訪問セールスみたいにグイグイ押してくる。
「ぃや、でも」
「ダサいし……」
聖剣のネーミングセンスのダサさにも躊躇しているリナ。
森の精霊さんとリナがそんな押し問答をしていると、
「ぁ、そう」
「勇者はこいつなのよ!」
「騎士団見習いの勇者だけど」
「だからあんたが抜きなさいよ!」
リナは思い出したかのように早口で僕に勇者設定を押し付けてくる。
「そうですね!」
「今の勇者の永太様が伝説の勇者様の聖剣を手に入れる瞬間に立ち会えるなんて」
「なんてエモいんでしょう」
モモがちょっとヒートアップし過ぎてキャラ崩壊しかかっている。
確かにモモは伝承言い伝え好きで、伝説の勇者の聖剣を引き抜くなんて一大イベントを目の前にして興奮しているという気持ちは分かる。
僕も昔は期待のゲームの発売が待ち遠しくて、発売日に興奮し過ぎて変なテンションになっていた……なんて事を思い出す。
「……永太」
「ここはあんさんの役目ですぜ」
クルミとその肩に居るちびシャドウも僕にそう言う。
「……それじゃあ」
僕はそう言って聖剣に手をかける。
一瞬リナがまた変な空間に飛ばされるんじゃないかと腰が引けていたが、それをスルーして聖剣を持つ手に力を込める。
ズズズズズズ……
剣をゆっくりと引き抜く、すると手に持った聖剣が淡く光り始める。
「これであなた様が正式に次代の勇者となったのです」
「この森と精霊、妖精達の想いが込められた聖剣」
「その力を手にしたのです」
森の精霊さんがなんかカッコイイ事を言って纏めようとする。
「素晴らしいです、永太様」
モモが相変わらず手放しで褒めてくれて大変嬉しい。
「……」
「まぁ、きばりや〜」
クルミはいつも通りクールだし、ちびシャドウはもはや何弁か分からない励まし方をする。
「とりあえず勇者って認められたって事でいいかな?」
僕はそう言って勇者なんて認め無いわよ系の事を言っていたリナの方を向くと、
「ま、まぁ、勇者としては認めてあげるわ」
「……だけど」
「騎士団見習いの勇者だからね!」
「私が騎士団長よ!」
リナが謎のマウント取りをしてくるが、一応勇者としては認めてくれたようで何よりだ。
そんなリナが森の精霊さんに話かける。
「ぁ、そうそう」
「お母さん」
「聖剣は持って行っちゃって大丈夫なの?」
神殿に祀られている聖剣を持っていっていいか確認したかったリナだが、思いっきり森の精霊さんをお母さん呼びしている。
「……、って違うの!」
「森の!精霊!さん!」
リナが顔を真っ赤にして早口で言い訳マシンガンする。
「おじいちゃんはお母さんじゃないぞぉ」
森の精霊さんの隣に居た木の妖精さんがリナにすかさずツッコむ。
「うっさいわね!わかってるわよ!」
勢い余ってリナは木の妖精さんに強めに返す。
「……ぅうっ」
「おじいちゃんは、おじいちゃんなんだ!」
木の妖精さんが半泣きでリナに叫び返す。
「……ううっつ、ぐすっ」
そう言って木の妖精さんは半泣きになってしまった。
「ぁ〜あ」
「泣かせちゃった〜」
「い〜けないんだ、いけないんだ」
僕は小学生の時に女子を泣かせてしまった男子みたいな感じでリナに対して呟く。
「やかましいわ!」
「小学生か!」
僕に対しては木の妖精さんの時よりももっと強めに返したのは、照れ隠しからだろうか。
「……厄災の残滓」
「せやな」
クルミとちびシャドウがが意味ありげに何か呟く。
「先程の厄災と呪いの一つががまだ残っていた、というわけなんですね」
「なんて恐ろしい」
モモとクルミが先程の試練の最中にあった厄災と呪いがまだ残っていたのだろうと上手いこと纏めてくれたようだ。
「もぅ!なんなのよ!この厄災と呪いは!」
そんなモモとクルミの気遣いを他所に、つい先生とかをお母さんと言ってしまう呪いの残滓とやらに行き所のない怒りをぶつけるリナ。
その後、リナはなんとか木の妖精さんを泣き止ませて仲直りしましたとさ。
「それにしても……伝承の通り聖剣が封じられていたり」
「伝説の悪龍と厄災があったりと」
「ここはまさにテーマパークですね!」
そう叫んだモモの瞳は眩く輝いていて、ここから暫くモモの伝承言い伝えマニア炸裂タイムだったのだが、話が長くなりそうなので割愛する事にした。
そしてこの神殿と森は後にヴァーンパーク勇者記念公園として知られるようになるのはまた別の話。
結局聖剣については悪龍も居なくなったし、封印結界を維持する必要も無くなったと言う事でテイクアウトOKとなった。
その後、神殿からヴァーンパークの森の出口まで森の精霊さんと木の妖精さんに再び案内してもらい、僕達は森を後にした。
「聖剣も手に入った事だし」
「さぁ、いよいよ次は最後の塔よ!」
リナがそう言って僕達を鼓舞する。
僕はそれにつられてゲーム内自動セリフ、
「僕達の戦いはこれからだ!」
と言わされる。
って、また打ち切りかよ!なんて心の中で叫んでいると、
「相変わらずあんた、一人でなにやってるの?」
リナがいつものように冷たくツッコむ。
「さぁ、行くわよ」
リナに冷たくそう言われて僕達は北へと向かう。
よかった、打ち切りじゃ無くて……と自分で作ったゲームのイベントなのに再度胸を撫で下ろす。




