48話 山道
ヴァーンパークの森にあった神殿で勇者の試練とやらを受け、悪龍九帝を倒して聖剣を手に入れた僕達。
とりあえず宿場町に戻り一泊し、翌朝北へ向かう準備をする事にした。
「そういえばリナ」
僕はそう言ってリナに声をかける。
「ん?何?」
ちょっとツンドラ気味に返答するリナ。
「ホントに聖剣要らないの?」
RPGのようなゲームでは勇者のお古の装備を戦士が使い回す、というのが定番である。
リナが勝手に触って始まったとは言え、一応勇者の試練はリナが対象として認識されていた。
なのでこの聖剣はリナにも使う権利がある事になる。
僕には例のチート剣があるから騎士団長様が使ったほうがいいのかな?なんて親切心で勧めてみる。
「嫌よ、そんなダサい名前の剣!」
「しかも変な厄災付きなんでしょ!」
「そんな呪いの装備なんてあんたがお似合いよ!」
伝説の勇者の聖剣がめっちゃディスられた挙句、呪いの装備として僕に押し付けてくるリナ。
「それに……」
「勇者が聖剣持ってないと、カッコつかないでしょ!」
「だからあんたが持ってなさい!」
「そして私が食らった厄災と呪いをあんたも味わいなさい!」
なんか勇者認定してくれたのはちょっぴり嬉しい、が結局厄災と呪いを僕に押し売りして来る。
「とりあえず、普段使いの剣として持っておくか」
例のチート剣は闇か光か分からないオーラ出しまくりなので普段使いに向いていない。
なので今まではそこらの武器屋で手に入れた普通のショートソードを使っていた。
この聖剣は刀身が少々淡く光っているだけなので、鞘にしまっておけばそんなに目立たないし、何よりこれでようやく勇者っぽい見た目になってきたかもしれない。
と、勇者の試練で悪龍にショボいショボいと連呼されたことを少々気にして……いない僕だった。
まぁモモも伝承言い伝えの推し活が出来たし、クルミも巨大カレーうどんで何気に満足気だし、リナは僕を勇者認定してくれたしで割といい感じでまとまった気がする。
翌朝準備を終えた僕達はクルミの手配してくれた馬車に乗り北の塔へと向かう事となった。
峠を越え渓流の側の山道を進み、お昼頃には次の宿場町に着いた。
その宿場町で名産の桃やサボテン料理?などを食べ僕達はお昼を済ませた。
その後再び北へ向かう事となったものの、そこから北の塔への馬車が今は出ていないと告げられる。
北の塔が暗黒四天王に占拠されている影響らしい。
「まぁ、仕方無いわね」
少々不満気ながらも納得するリナ。
「ここからは歩きですね」
モモが状況を説明してくれる。
「……うん」
相変わらずクールなクルミがクールに返事する。
こうして僕達は北の塔を目指し歩き出した。
「ようやくあと一つね」
歩きながらリナが僕達にそう言う。
「そうですね」
「王城と王国を護る結界の要である四つの塔が魔王軍と暗黒四天王に全て奪われたと聞いたときは」
「この国はどうなってしまうのかと心配しましたが」
リナの言葉にモモがそう続ける。
「勇者である永太様が暗黒四天王を倒し、西の塔を解放してくれて」
「その後もみんなの力で南と東の塔も光を取り戻し」
「残すは北の塔となりました」
さらに今までの旅の概要ををモモが解説してくれて大変助かる。
さすが伝承言い伝えマニア、こういう説明が上手である。
「まぁ、王国騎士団長のこのツンデリーナ(リナ)様が居るから当然よ!」
鮮やかな赤髪ポニーテールを揺らしながら改めて自己紹介風にリナが叫んでくれる。
「ふふっ……この国の姫、そして治癒と浄化の聖女として鼻が高いです。」
ピンク髪のお姫様モモも続けて自分紹介してくれる。
「……うん」
青髪ショートなクルミは相変わらずクールなので僕が代わりに紹介文を言っておこう。
クルミは王国魔導師団所属の魔導師でありモモのお付メイドでもある……というのは表向きで、実は隠密特殊部隊の一員でその中でもごく一部の実力者に付けられる番号持ちである。
特殊隠密特殊シークレットナンバーズのNo.3、コードネーム【影法師】という姿を併せ持つ。
小さい頃からモモのお世話役として一緒に居て、その為リナとも昔からの仲である。
つまりこの三人は姫様、騎士団長、お付メイドという立場はあれど仲良し幼馴染三人組という訳である。
というか、昔の僕がそう設定したゲームなのだ。
だが、細かい所までは設定していなかったのにこの世界ではちゃんと辻褄合わせが何故か行われており、ゲーム内のキャラと言うよりちゃんとした人間として生きている事を感じさせられる。
等の僕(九里永太)と言えば、会社で何徹もデスマーチして一段落ついて自宅アパートの布団に倒れ込んでようやく爆睡できて、目覚めたらこの異世界(昔の自分が作ったゲーム内?)に居たって寸法だ。
なんでこの世界に居るのか分からない上に元の世界に戻る方法も知らない、なんとなくだがゲームクリアすれば帰れる……というのが定番設定かな?なんて程度の根拠でクリアを目指している。
それにゲーム内だと死んでも簡単に復活出来たりするが、この世界で死んでも復活出来る保証は無い。
ゲームクリアしても帰れるなんて根拠もないし、帰れなくてずっとこの世界で暮らすことになるかもしれない。
という事で、帰るにしろ暮らすにしろ魔王軍に攻め込まれているこの王国を平和にしないとどうしょうもないという訳だ。
それにしてもこの世界は昔の自分が作ったゲーム内らしいのだが、入力した覚えの無い台詞を喋ったり話の辻褄が合うためにそれっぽい設定が何故か追加されていたりと、上手いこと補完されている世界だったりする。
と言ってもメインシナリオである魔王退治は変わらず、ストーリー通りに奪われた王城を取り戻す為に四つの塔を解放して回っているという流れだ。
そんな感じで僕達は四つの塔の最後の一つ、北の塔を目指し山道を歩いていた。
が、僕は先導するリナにふと聞いてみる。
「北の塔まであとどれくらいなの?」
昔の自分が作ったゲームはレトロな2Dゲーム、3D世界になっているこの世界の地形とか地理的なものは製作者である自分でも把握しきれていないのが本音なのだ。
なので位置関係を把握する為にも、先導して道を知っていてそうなリナに聞いてみた。
「ぇ?知らないわよ」
普通に歩を進めていたのに自信満々に知らないと答えるリナ。
「へ?ってか北の塔へはこの道で合ってるんだよね?」
再度リナに問いかけてみる。
「北の塔って位だから北にあるんでしょ、だから北に行けばいいのよ」
謎の自信で答えるリナだが、
「ぇ?北ってどっちかわかる?」
地図もコンパスも無いのに北が即答出来るのは太陽の位置関係とかで方角を判別できるフィールドワークのプロとかである。
そもそもこの異世界なのかゲーム世界なのか良くわからない所なのに……リナにそんな器用なスキルがあるとは思えない。
「北は……多分こっちよ!間違い無いわ」
どう見ても勘か思いつきで喋っているリナ。
「いや、完全に勘で言ってるよね!」
リナの言葉にすぐさまツッコむ僕。
「いいじゃないの!あんただって勇者の勘とやらで色々してきたじゃない!」
昔の自分が作ったゲームだから色々と知っている、のだが何でそんな事知ってるの?的な事を聞かれると説明がめんどくさいので勇者の勘って誤魔化してきた。
その勇者の勘を逆手に取られてリナが猛然と言い訳して来る。
「だってそろそろ日も暮れてきたし」
「このまま山で遭難して一晩明かすのはどうかと」
なんやかんや長話しながら歩いてきたので結構な時間が経ち、日も傾いてきている。
「うっさいわね!こっちが北よ!きっと!」
リナはそう言って北かどうか分からない顔をしたまま道の先を指差す。
「……うん、合ってる」
するとクルミが会話にボソッと参加してきた。
「ほら見なさい!合ってるじゃないの!」
自分の指した方角が合っていたと言われ、見事なまでに図に乗るリナ。
それにしてもいつもの探知スキルである【影探知】を使った素振りも無いのにクルミは即答していた。
「どちらにしろこのままだと山の中で野宿になるから」
「どこか休める場所を探さないと」
図に乗るリナを戒めるように僕は日が傾いてきた現実を突きつける。
「確かにこのままだと日が暮れてしまいますね」
モモも日が傾いてきた空を見上げ、心配そうに話す。
「……大丈夫、もう少し進むと」
「村がある」
そんなモモを見てクルミがそう呟く。
「へぇ、よかったわねあんた」
リナはそんな僕にそう言ったあと、
「その村はどんな村なの?」
クルミに村について聞く。
そのリナの問いかけにクルミはクールに答える。
「……その村は」
「メイジ村」




