46話 悪龍九帝
「また足の指に攻撃食らったんですけど!?」
「もう嫌なんだけれど!」
そう、今まで食らった厄災の一つがリナに再び襲いかかってきたのである。
「ふっふっふ!」
「我が名は悪龍九帝」
「九つの厄災と呪いを振り撒きし龍の王であるぞ!」
分かりやすいぐらい調子に乗って来た悪龍さん。
「ということは、今までの厄災と呪いが全部降りかかって来る……という事なんですね」
モモも解説役が板について来て詳しく説明してくれる。
大変有難い。
「はぁ!?」
「一つでも鬱陶しかったのに」
「全部来るの!?」
今までの厄災で散々苦労してきたリナが愚痴をこぼす。
すると三つある首の一つがこちらを向いて構えると、その口から強烈な音を発した。
キィィィィイィィィィィィッ!!
試練の途中で聞いた不快な音が再び部屋中に響き渡る。
「ぅえぇぇぇえ!」
その音は金属的な物で黒い板を引っ掻くと出るあの音である。
再びその音を聞かされたリナは背筋に悪寒が走り顔が青ざめる。
「なんで引っ掻いてもいないのに、その音が出せるのよ!」
リナは背筋に悪寒が走りながらもすかさずツッコむ。
顔が青ざめていてもそのツッコミの切れ味は健在だ。
「ふっふっふ」
「厄災と呪いの恐怖に怯えるがいいわ!」
リナがいいリアクションをしてくれるおかげか、いい厄災のカモになりつつある。
タッ!
その隙を狙ってクルミが悪龍の背後から攻撃を仕掛ける。
「影刃」
だが、その攻撃は……
ギィイイン!
三つ首の一つによって防がれてしまった。
「……くっ」
「なんや、後ろも見えてるんかいな」
攻撃を防がれてしまったクルミとちびシャドウが、一旦距離を取る。
「ふっふっふ!見えておるぞ!」
悪龍は首が三つもある為、死角が無いと言っても過言では無い。
「ってかそもそも何よ!」
「こんなショボい厄災ばっかり」
そのショボい厄災に散々苦しめられているリナが悪龍に向かって叫ぶ、というかツッコむ。
「仕方ないだろぉ」
「いっぱいあった首も切られちゃったし、封印のせいで力が落ちてるし……って違う!」
「貴様ら如きにはこの程度の厄災で十分だ!」
そう悪龍がリナに叫び返すが、なんか小物感が隠しきれていない。
「色々とやかましい奴め、これでもくらぇ!」
悪龍は再び僕達に向かってブレスか何かを吐いた。
「氷盾」
クルミは咄嗟に魔法盾を展開し、僕とモモもその後ろに急いで隠れる。
ズヴァァァァアァァァァァァァァァ!
ブレスの様な物が僕達を襲う。
僕とクルミ、モモは魔法盾によりなんとか直撃を免れたが、少し離れていたリナは……
「リナ!大丈夫ですか?」
ブレスの直撃を受けたリナに向かってモモが叫ぶ。
立ち込める煙?が晴れていき、リナの姿が見えてくる。
「だ、大丈夫!」
「こんなのなんてこひょ、ないっ」
「ぶえぇぇっっっくしょん!」
直撃を受けたにも関わらず、見た感じこれといったダメージは無さそうなリナが返事をしながらくしゃみをする。
「なにこれ……、ぶぇえぇぇっっくしゅん!」
「ぶえぇぇっっっくしょん!」
先程の煙?のせいなのかくしゃみが止まらないリナ。
「これも厄災?」
モモがくしゃみの酷いリナに向かって呟く。
「……これは、調味料の呪い」
そんなモモにクルミが答える。
「この匂い、胡椒?」
クルミの返答で周囲に立ち込めていた煙の正体に気付いたモモ。
「……そう」
「調味料の蓋が取れたりして、予想外にいっぱいかかってしまう」
「……これはその呪いだと思う」
食べ物系に関してはクルミが解説してくれて大変助かる。
僕達はクルミの魔法盾で胡椒ブレスの直撃を免れたものの、リナはその胡椒を丸被りしてしまったのだ。
「ぶえぇぇっっっくしょん!」
「まったく、なんなのよ!」
「この呪いうぇぇっくしゅぅぅん!」
胡椒まみれでくしゃみが止まらないリナ、なんて恐ろしい呪いだ。
「数々の厄災と呪いによる攻撃」
「三つ首で死角も無い」
「これが悪龍……」
その強さに慄きながらも伝承の悪龍を間近で見ることができてほんのり嬉しそうなモモがその強さを説明してくれる。
「ふっふっふ!」
「これでもショボい厄災と言うか?」
「貴様らの様なヒヨッコでは我には勝てぬわ」
「聖剣でも無い限りはな!」
悪龍さんの攻撃がリナに効きすぎて、もはや浮かれてるんじゃないかという位に調子に乗っている。
「だが、その聖剣も封印の核として我と一緒に封じられている為に貴様らは使う事が出来ん」
「もはや打つ手無しと言った所だな!」
丁寧に聖剣の説明もしてくれて親切な悪龍さんだ。
「ぶぇっくしゅ!」
「あんたの減らず口もそこまでよ」
リナがくしゃみしながら反撃に移る(口撃)
「なんちゃら聖剣なんかなくったってね」
「うちらにはなんちゃら剣があるのよ!」
リナが悪龍に向かって啖呵を切る……が、なんちゃらが多すぎで情報量皆無の反撃である。
「なんちゃら剣とは?」
ほら、リナの叫びが意味不明すぎて悪龍さんに伝わってませんよ。
「ほら、あんたの出番よ!」
そう言ってリナは僕に向かって叫ぶ。
「ぇ?」
僕はそんなリナに素っ頓狂な返事を返す。
「ぇ?じゃ無いわよ!」
「これはあんたの試練でしょ!」
そうだった……これは勇者の試練、つまり僕の試練って設定だった事を思い出す。
「そうですね、永太様の勇姿を悪龍さんにとくと見せて上げましょう」
リナの言葉にモモも乗っかって来た。
「……任した、永太」
クルミも僕を見ながらそう呟く。
名前呼びしてくれてるしなんか信頼している感じの喋りだった。
「あんた東の塔では何にもしてなかったんだから」
「こんな悪龍ちゃっちゃと退治しちゃいなさいよ、あのなんちゃら剣で!」
確かに前回は全然活躍してなかったし……と思いながら、リナが珍しく僕に頼っている感じなのは悪い気分ではない。
「仕方ない、やりますか……」
僕はやる気無さそうに重い腰を上げる。
「ん、なんだ貴様は?」
悪龍の前に出て来た僕に向かって悪龍が呟く。
「この方は今代の勇者の永太様です!」
モモが僕の背後から悪龍に向かって紹介してくれる。
「……勇者、だと?」
「あの大きくていいリアクションしてくれる弱っちい小娘が勇者では無いのか?」
サラッとリナを褒めてる風にディスって来る悪龍さん。
「はぁ!?」
「弱っちい小娘とは何よ!」
「あんな弱っちい騎士団見習い勇者と違って、私は王国騎士団長のリナ様よ!」
悪龍のディスりに早速大きめのリアクションで反応してくれるリナ。
さすがリアクション騎士団長。
「あんたも変な事考えてないで、とっととこのヘビトカゲを退治しちゃいなさいよ!」
心の中でリナをイジって遊んでいたのが何故かバレ、僕に向かって叫ぶ騎士団長様。
「へ、ヘビトカゲだとぉ?」
リナにディスり返されて煽り耐性無さそうな返事を返す悪龍さん。
「ぉい!このへっぽこ見習い勇者とやら」
「よくも我を愚弄してくれたな!」
などと激昂する悪龍さんですが……愚弄したのは僕では無いですよ。
何故か怒りの矛先が僕になって、さらにイジられ始める。
「こんな威厳もオーラも感じられん奴が勇者な訳なかろう!」
「しかもなんか……こう、なんかショボいし!」
「あれだ、そうショボい勇者だなぁ!」
段々イジる語彙力すら無くなって来ている悪龍さん。
とは言えこう何度もショボいと言われると、さすがの僕でも怒りが有頂天に達しちゃうよ。
「……じゃあ、そのショボい勇者がどんなものか」
「見せてあげるよ……」
僕はキメ顔でそう言って、アイテムボックスから剣をそっと取り出す。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
その取り出した剣は禍々しいオーラとまばゆい光を併せ持ち、竜の如き強さと激しい炎を纏っていた。
「光輝闇暗炎竜剣」
僕はその剣を構え、悪龍と対峙する。
「……ちょ、待って」
「なにその剣?聞いてないよ!」
それを見た悪龍は剣の謎の威圧感にドギマギしてたじろいだ。




