43話 暴れカレーうどん
「そう!この丼はカレーうどん!」
「そしてこの厄災は……」
「暴れカレーうどんだ!」
落ちた液体と、丼からはみ出る物を見てみんなが気付いた瞬間に僕は叫んだ。
「「な、なんだってー!!」」
リナとモモ、クルミがノリ良く声を合わせて叫んでくれた。
良い所だけ掻っ攫うかのようにキメ顔で叫んだ僕。
そんな僕にリナが、
「いや!自信満々に説明しても」
「意味分かんないから!」
颯爽とツッコんでくれる。
「テヘッ」
僕はリナのツッコミに対して笑って誤魔化す。
「ぁ、リナ後ろ!」
そんなやり取りをしている隙を狙って、丼がリナに再び襲いかかる。
ドガァ!
「甘いっ!」
リナがその攻撃を察知して素早く躱す。
「いや、カレーうどんだからむしろ辛いのでは?」
リナの言葉に軽くツッコミを入れる僕。
「やかましいわ!」
僕のそんな言葉を聞き逃さず、すぐ反応してくれるリナは優しいな。
「リナ!また上から」
モモがそう言ってリナに叫んだ。
「カレーね!」
丼からはみ出るうどんに乗せてカレーが飛び散りリナを襲う。
タッ!ズサァ!
拳の攻撃と飛び散るカレーを何とか躱し続けるリナ。
「っていうか、なんで私ばっかり狙うのよ!」
確かに攻撃の矛先はリナばかりで、僕達の方には全然向かって来ない。
「……もしかして」
モモが何か閃いて話し始める。
「最初にリナが聖剣に触って、この試練が始まったのだから」
「試練の対象をリナだと認識した可能性があります」
モモは状況を冷静に分析してリナに伝える。
「……確かに」
クルミもモモの説明を聞いて納得する。
「だってさ〜リナ」
他人事の様に僕はリナにそう叫ぶ。
「はぁ?なんで私が試練受けなきゃいけないのよ!」
「勇者はあんたでしょ!!」
攻撃を避けながらも僕に向かって叫ぶリナ。
そんな事言われても〜みたいな顔でリナを眺める僕。
「まったく……!いい加減にしなさい!この丼おばけ!」
リナばかり攻撃をする丼おばけ?にブチギレるリナ。
「真っ二つにしてあげるわ!!」
リナはそう言い丼に向かって剣を構える。
丼の攻撃を躱し、攻撃に転じようとしたその時、
「待って、リナ」
モモがそう叫び、リナが攻撃を止める。
「ぇ?なんで?」
急に攻撃を止められてモモに問いかけるリナ。
静かにリナと丼を見つめ、モモは口を開いた。
「丼を割ったら」
「大惨事になっちゃいます!」
「ふぇ?」
リナはモモの言葉をすぐには理解出来ずに変な声を上げる。
「……確かに」
クルミは瞬時に理解した様子でモモの言葉に同意する。
「どういう事?」
丼から距離を取り、僕達に向かって問いかけるリナ。
「丼を割ってしもーたら」
「辺り一面カレーまみれになってまうで〜」
クルミの肩に居るちびシャドウがリナに説明する。
「ぇ、だって」
「そんなのしょうがないじゃない」
急にカレーまみれとか言われてイマイチ理解しきれていないリナがそう返事する。
「この厄災」
「カレーうどんの汁が飛び散るという恐ろしい厄災です」
「なのに丼まで割ってぶち撒けてしまったら」
「それは勝ったとは言えません」
「大惨事なんです!」
モモが独自理論をリナに叫び説明する。
「そう、カレーのシミは落とすのが大変」
ここでクルミがメイド設定を持ち出してきて解説し始める。
「はぁ!それ大事なこと?」
リナが独自理論解説に混乱しながらも返事する。
「「大事です!」」
モモとクルミが声を合わせて叫ぶ。
よっぽどカレーのシミは大変なんだろう。
二人にそう言われては丼を真っ二つにするわけにはいかなくなってしまったリナ。
「じゃあどうすんのよ〜これ」
リナは愚痴をこぼしながらも丼の攻撃を躱す。
「仕方ない、行くよ」
僕はそう言ってクルミに目配せをする。
「……わかった」
クルミも僕を見返し、そう返事した。
「まずは動きを止めないと、ね」
剣を構え丼に向かいながらクルミにそう言う。
「……りょ」
察しが良いクルミはそれだけで理解した様で、僕と一緒に丼の背後へと回り込む。
「もぉ〜〜〜!」
牛みたいに愚痴を言いながら丼の攻撃を躱すリナ。
攻撃に夢中で死角である背後から僕とクルミが丼に向かって攻撃を仕掛ける。
「影刃」
クルミがそう呟くと、ちびシャドウが大きく鋭い刃となって丼に襲いかかる。
「凍刃」
それと同時にクルミ本体が氷魔法で刃を創り出す。
シャドウとクルミの二段同時攻撃、これが本来のクルミの戦闘スタイルなのであろう。
ズバァ!
ズシャア!
ほぼ同時に丼から生えていた右手と右足を切り裂いた。
ズバッ!
それに遅れて僕の剣筋が丼の左足を切り裂く。
「ふぃ〜、さすが特殊隠密部隊」
「キレが違うなぁ」
僕みたいな素人に毛が生えた程度とは違い、クルミの凄さを改めて感じる。
右手と右足の他、左足も切られた丼がその場に尻もちをつく……というか丼が地面に置かれた感じになる。
それを見てリナが反応する。
「そういう事ね!」
さすが腐っても騎士団長、瞬時に状況を判断し攻撃に移る。
ズバァッ!
残っていた左手を素早く斬り、丼から手足が無くなり丼そのままになる。
「ふぅ……これでクリアなのかしら」
リナが一息ついて静かに呟く。
「……いや、ここからが本番」
クルミが大きな丼を見上げながら僕達にそう話す。
どこからともなくノーマルサイズの丼を取り出したクルミはリナにそれを手渡す。
「ぇ?」
渡されたリナは理解しきれずに変な顔をする。
手渡された丼には先程まで戦っていたカレーうどんが入っていた。
「まさか……」
リナがそこまで言いかけて、
「そう、ここからが本当の戦い」
「カレーうどんの汁で汚れない様に食べきる」
クルミが大真面目な顔で僕達に説明した。
「カレーうどんの汁……」
「これは難題ですね」
モモもそう呟きながらクルミからカレーうどんの入った丼を受け取る。
「油断したらあっという間にやられる……」
僕も丼を受け取りながら話を合わせる。
「……ってか、こんなに大きな丼食べきれないでしょ!」
手渡されたノーマルサイズの丼と違い、先程まで戦っていた丼は三メートルはある。
それを指差しながらリナが僕達に叫ぶ。
「……大丈夫」
「これは私が担当する……」
そう言ってキメ顔をするクルミ。
ってかヨダレが出てるよ。
チュルチュル
ウマウマ
「美味しいですね」
「カレーのおいしさに出汁の旨味も加わって」
「うどんと良く絡んでます」
モモがカレーうどんを食べなから食リポしてくれる。
「辛さもちょうど良いし」
「うどんのコシもいい感じ」
僕もカレーうどんを堪能する。
「くっ」
「うぁっ」
その横でリナが唸りながら何かしている。
「なにしてんの?リナ」
そんなリナに声をかける。
「うどんが」
「暴れて」
「汁が危ないの、よ!」
箸で上手くうどんを掴めず、暴れるうどんに苦戦しているリナ。
「うどんの動きは不規則ですからね」
「油断すると思いもよらない場所に汁がついていたりして」
「まさに予測不可能な厄災です」
モモが上手いことカレーうどんの暴れっぷりを説明してくれて、昔の僕が適当に考えた厄災をちゃんと解説フォローしてくれるのは大変有難い。
なんて話をしながら僕達はカレーうどんを食べ進め、カレーうどんの下に隠されていたトロロとご飯に驚きながらもその美味しさを堪能した。
三メートルぐらいあった丼と戦っていたクルミの方を見ると、満足気な顔でキメ顔をしていた。
丼をみると綺麗にたいらげてあり、あの量を完食するなんてさすが食いしん坊キャラのクルミだ。
丼の横にはお腹が目一杯に膨らんだちび?シャドウがゲプッとしながら横たわっている。
「いゃ〜、ホントに食べきっちゃうとはね」
「これで厄災に勝ったってことかしら」
お腹一杯食べて満足気なリナがそう言う、と……
「……仕上げが残ってる」
キメ顔のクルミがますますキメ顔でそう呟く。
「仕上げ?」
リナがクルミに聞き返す。
「……そう、これ」
そう言ってクルミが取り出したのは、
【モップと雑巾】
「モップと雑巾?」
リナはクルミの出したモップと雑巾が理解出来ずに聞き返す。
「……あれ」
そう言ってクルミが指差したのは真っ白だったこの部屋に散らばる黄色い点。
そうそれはリナと丼の大立ち回りや、みんなで食べたカレーうどんから飛び散った汁である。
「結構気をつけていたつもりなのに……以外と飛び散ってるものなのね」
リナはそう言って部屋に飛び散ったカレーうどん汁を見つめる。
ゴシゴシ
キュッキュッ
「これでピカピカですね」
大暴れしたカレーうどんから飛び散った汁、それを僕達は綺麗に拭き取った。
黄色い斑点が散らばっていたが白く綺麗な部屋へと元通りになったのである。
さすがクルミのメイド設定も有効活用している。
「……これで完全勝利」
そして再びキメ顔をするクルミ。




