41話 聖域の神殿
「わ、わかってるらよ」
「よろすくね」
動揺してカミカミなリナ。
「ぁ、うん」
「……よろしく」
木の妖精さんはいきなりトレント呼ばわりされたので、リナを警戒している感じの挨拶が返ってくる。
「……それじゃあ、お願い」
クルミが優しそうに木の妖精さんと森の精霊さんにそう言った。
ちょっぴり嬉しそうな感じもするのはひょっとしたらクルミはカワイイ物好きなのかも?なんて思ったりする。
しかし普通に妖精とか精霊が出てきても驚きもしないって、ホントここはファンタジーだなぁ〜と感じたのだがそう言えばここは昔の僕が作ったゲーム内だったか。
なんて考えを巡らせていると、
「では、こちらですじゃ」
老齢な感じの森の精霊さんが先導し、さらに森の奥へと案内してくれる様なので、僕達はそれについて行った。
暫く歩くと先程見たクスノキよりももっと大きな影が見えてくる。
近づくとそれは立派にそびえ立ち、鮮やかな白が目を引く神殿だった。
「立派な神殿だねぇ」
その神殿を見上げて僕は呟いた。
「ぉお、こんな神殿があったんですね」
「知らなかったです」
古戦場やこの森に詳しかったモモですら知らない神殿。
「この神殿に悪龍と聖剣があるのかしら」
リナがそう言ってここに来た目的が観光じゃ無く悪龍と聖剣だったことを思い出す。
「……忘れてたでしょ」
僕のとぼけた顔を見てリナが鋭くツッコむ。
「いや!忘れて無いよ!ずっと最初からね!」
先程のリナの様に忘れてないアピールをして誤魔化す。
「フッ、本当かしらね」
さっきの反撃と言わんばかりに、リナがドヤ顔でニヤける。
正直観光気分だったのは確かだけど、この世界は昔の僕が作ったゲームだからメインシナリオの流れは忘れてないよ!多分。
と言いたかった所だが、話がややこしくなりそうなので苦笑いで誤魔化す事にした。
「ここが聖域の神殿じゃ」
先導してくれていたおじいちゃん森精霊さんがそう言う。
「聖域の神殿?」
モモが森精霊さんの言葉に食いついてくる。
「そうじゃ、かつての勇者様が悪龍を退治し悪龍を聖剣で封じ込めた地」
「その悪龍の封印を護る為にこの神殿が建てられたのじゃ」
老齢な森の精霊さんがそう説明してくれる。
「ほぅほぅ、それでそれで」
まるで観光ガイドさんに熱心に耳を傾ける修学旅行生みたいなモモ。
「かつての勇者様はその神殿の護りを我ら森の民に託され」
「それ以降ずっと森の民はこの神殿を護り続けてきたのじゃ」
喋るたびに口元のヒゲなのか葉っぱなのかわからないものがフガフガ動いて面白い。
「へぇ~、まるで見てきたみたいに話すのね」
リナがちょっぴりディスり気味に森の精霊さんに問いかける。
「ぁあ、実際に見たからの」
老齢な森の精霊さんが結構な事を暴露する。
「ぇええ!マジすか!?」
モモらしからぬキャラでびっくり仰天する。
「ぇぇえ?一体何百年前の話なのよ、眉唾でしょ」
りなは全く信用していない様子で返す。
「おじいちゃんは物知りなんだぞ!」
「嘘なんかつくもんか」
黄緑色の木の妖精さんがリナに向かって叫ぶ。
第一印象が悪かったせいなのかリナに対しては当たりが強めな妖精さん。
「そうですよリナ、森の精霊さんの目は嘘言ってない目です」
モモがそう言うので僕達は森の精霊さんの目を見る……が、なんとも言えない顔をしているので心が読みづらい。
なんて事はとても言えずに取り合えず同意しとく事にした。
「そ、そうだね〜」
「フォッフォッフォッ」
「まぁ致し方ないのじゃ」
「もはや当時の勇者様を知る者は数少ない」
物腰柔らかく森の精霊さんは話してくれる。
「そ、それでどんなんでしたか?勇者様は!」
モモが食い気味に問いかける。
「そうじゃな、一言で言えば」
「独特な人じゃった」
森の精霊さんが静かに語り始める。
「悪龍を倒すために妖精や精霊達が力を合わせ創り出した聖剣」
「その聖剣の名をつける時も皆で目を丸くしたモノじゃ」
懐かしそうに細目で昔話を語る森の精霊さん。
「ぁ〜」
「あの例の聖剣の名前ね」
リナがテンション低めで答える。
「ぇ〜」
「あれがダサカッコイイってやつですよ」
「超龍聖剣スーパーエクスカリバー」
モモも遠回しにダサいと認めている。
「その聖剣があの神殿に……」
そう言ってモモは期待の眼差しで神殿を見つめる。
「それにしてもこんな立派な神殿がなぜ今まで見つからなかったのでしょうか?」
伝承言い伝えマニアで古戦場やこの森に詳しかったモモでさえ神殿の存在を知らなかった。
そんな疑問を森の精霊さんに聞いてみたモモ。
「この聖域の神殿は普段結界で隠されておるからの」
「わしらのような妖精や精霊の案内でも無ければ見る事すら出来ぬのじゃ」
老齢な森の精霊さんがフゴフゴ教えてくれる。
「じゃが、皆既日食を期に不穏な空気が立ち込めてきおっての」
「それに乗じて封印されている悪龍が力を増している様子がある」
ちょっぴり不穏な事を言い始める森の精霊さん。
「大丈夫、なの?」
それを聞いたリナが森の精霊さんに問いかける。
「かつての勇者様はこうも言っておった」
「再び世界が闇に包まれし時、竜の炎を纏った昏き太陽が西から昇る」
「その太陽は夜空に瞬く星々と共に聖なる試練に打ち勝ち、闇を打ち祓う大いなる希望となり、世界は再び輝きを取り戻すだろう。」
森の精霊さんが続けて話したのは例の伝承?
「勇者様の伝承?……細部が違うのは言い伝えで変化したから?」
「ほぅほぅ、興味深い」
モモの目が推し活の眼差しになっている。
「それに、聖なる試練……とは?」
もはや新聞記者か報道陣かというぐらいに質問するモモ。
「それについては神殿の中に入ってから話そう」
そう言って神殿へと歩き始める森の精霊さん。
僕達は静かにそれについて行った。いやモモだけはスキップしているのか?というぐらいにウキウキだった。
近づいてみると荘厳で厳かな雰囲気を醸し出す立派な神殿だと再認識する。
先導する森の精霊さんとその後をヒョコヒョコついて行く木の妖精さんが神殿の扉の前に立つと、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
大きく立派な正面扉が開く。
森の精霊さんと木の妖精さんが神殿内に入り、僕達もそれに続いて入っていった。
神殿内も白い壁と白い柱が広がっており、天井からは光が差し込みその明るさが神殿内の白さを際立たせていた。
体育館程の広さはありそうな神殿内を進むと目の前に祭壇が見えて来た。
「あ!」
「あれですよ!きっと」
モモが嬉しそうに叫び見つめる先にあった物は……
「あれが聖剣ね」
そう呟いたリナが見つめた先に祭壇があり、そこには剣が刺さっていた。
そうこれはファンタジー定番の聖剣引き抜きイベントなのだ。
僕達は聖剣の刺さった祭壇に近づいてみると、なんとなく神々しさが聖剣から醸し出されている気がする。
「気をつけ下され、この剣に……」
森の精霊さんが何かを言いかけた所で、
「この聖剣を引き抜けってのが、その例の試練って訳ね!」
「こんなのお茶の子さいさいよ!」
早速リナが剣の柄に手をかけて引き抜こうとする。
と、リナの掴んだ聖剣が目を開けていられないほど眩く光り出した。
「ちょ、何!?」
剣を掴んだリナはもちろんのこと、傍にいた僕達もその眩さに目を開けていられず目を閉じる。
「……」
「……、」
眩しさがおさまり、そっと瞼を開けるリナ。
「ぇ?」
リナは目の前の光景に驚いて声をあげる。
「ここは?」
モモも周囲を見渡しながらそう呟く。
「……さっきと違う場所?」
クルミか冷静に状況を分析する。
リナの掴んだ聖剣が光ったかと思うと僕達は先程まで居た神殿の祭壇では無く、白く無機質な壁に囲まれた小部屋だった。
するとどこからともなく声が聞こえてくる。
「これが勇者の聖なる試練じゃ」
それは先程まで一緒に居た森精霊さんの声だった。




