40話 木の妖精と森の精霊
「ぁ、私は知らない」
聖剣と悪龍の場所を知っているものばかりと思ったクルミから、予想外の答えが返ってきてみんながビックリする。
「え?ドユコト?」
リナが驚きすぎてカタコトな喋りになっている。
「……大丈夫」
「現地ガイドとコンタクトを取る手筈になっている」
カタコトなリナを横目にクルミが続けて説明する。
「なるほど〜、そういう事なのですね」
クルミの説明にモモも納得して胸を撫で下ろす。
「……なので、まずヴァーンパークを目指す」
クルミはそう言って遠くに見える森を指差した。
「オッケー!大体わかったわ!」
「それじゃぁ行くわよ」
どういう事かよく分かっていなさそうなリナがまたもや団長風を吹かせて仕切る。
ツッコんでもめんどくさそうなので、いつも通りリナが先導して進んでゆく。
「あ!」
森が近づいて来た辺りでモモが叫ぶ。
「何事っ?」
モモの叫びに反応して腰の剣に手をかけて身構えるリナ。
「見てください!」
「あれが有名な勇者様の割った岩ですよ!きっと!」
「おぉ~、素晴らしい」
そう言って駆け出し、岩に頬ずりするモモ。
いわゆる推し活?というやつなんだろうか、モモは凄く嬉しそうだ。
見た感じ3メートルはあろうかという巨石が綺麗に真っ二つになっている。
「へぇ~、こんな岩を真っ二つにするなんて」
「昔の勇者はまあまあ凄かったみたいね」
なんだか負けず嫌いが発動しそうなリナが割れた巨石を見て呟く。
「フッ、あんたより凄いんじゃない?」
そう言って僕をツンドラな目で見てくる。
確かにこんな巨石を真っ二つにするなんて常人では無い、とは言え僕も光輝闇暗炎竜剣を使えば出来なくも無さそうだが……なんて思っていると、
「ぁ、あのなんちゃらソードはノーカンよ!」
僕が言う前にノーカンにされてしまった!
「ぇ゙~、じゃあリナはその剣でこんな大きな岩を割れるの?」
ノーカンにされたお返しに無茶振りしてみた僕。
「ほぅ、この王国騎士団長のリナ様をみくびって貰っては困るわね!」
「こんな岩、豆腐みたいに真っ二つよ!」
リナが良くわからない例えで負けず嫌いしてくる。
カチャ
リナが本当に斬ろうと剣に手をかけた所で、
「これは重要有形文化財です!」
「斬っちゃダメです!」
モモが珍しくガチ怒りしてリナを戒める。
「ぁ、ごめん」
モモの言う事だからかリナはアッサリ引き下がる。
どちらかと言うと史跡な気もするが……モモにとっては芸術作品的な文化財としての価値があるのだろう。
まぁ史跡だろうが芸術作品だろうがパビリオン……もとい文化財を傷つけちゃダメだよね!なんて思っていると……
「……こっち」
そんなやり取りを聞いているのか聞いていないのか、クルミがリナに代わって先導し始める。
すると森に入る手前で足を止めるクルミ。
「誰も、居ないわよ?」
辺りをキョロキョロしながらそう呟くリナ。
「……大丈夫」
そっと目を瞑り、肩に乗っていたちびシャドウがクルミの影に溶け込む。
「影探知」
クルミがそう言うとクルミの影が薄く広く森に向かって伸びていき、森の中にある木陰と同化する。
「……居た」
そう呟いたクルミが再びジト目を半開きにして森の奥を指差した。
「……あっち」
恐らくクルミが言う現地ガイドととやらがいると思われる方向に僕達はついて行く。
僕はそっとモモとリナの方をチラ見する。
クルミの影の力を怖がっている様子も嫌ってる様子も無いのでちょっぴり安心しながら森に入り、みんなの後に続く。
森の中を暫く歩くと少し開けた場所に出る。
真ん中には大きなクスノキ?があり、大きさからすると結構な樹齢のようだ。
「ここに居るんですか?ガイドさん」
先程のリナの様に辺りを見渡しながらクルミに問いかけるモモ。
「……あそこ」
そう言ってクルミは巨木の陰を指差した。
「どれどれ?」
リナが手をおでこに当てる遠目テンプレスタイルで巨木の陰を見つめる。
ヒョコッ
巨木の陰からひょっこり顔を出したのは緑色の歩く謎物体?
それを見てリナが叫ぶ!
「トレントよ!」
トレント、それはかつてシュミラクラの森で出会った木のモンスター。
剣に手をかけて臨戦態勢に入るリナ!
スッ
「……大丈夫」
クルミはそんなリナを制止して前に出る。
「ぇ?」
「ちょ、クルミ?」
目の前のトレントらしきモンスターに戦闘態勢も取らず近づいて行くクルミ。
それに驚くモモとリナ。
緑色の謎生物に近づくと、クルミの肩からちびシャドウが出てきて喋る。
「怖がらせてゴメン」
「案内よろしくな!」
「……大丈夫、なの?」
その緑色の謎生物はそう呟いた。
「しやべった!」
シュミラクラの森で戦ったトレントの時は、オオォォォォの様な唸り声だったので喋る事自体にリナが驚く。
「この感じ……妖精か、精霊?」
何かを感じ取ったモモがクルミとその緑色謎生物に問いかけた。
「そう、この子は木の妖精だ」
クルミの肩に居るちびシャドウが説明してくれる。
緑色の謎生物をよく見ると全体的に鮮やかな黄緑色で葉っぱが身体に付いている様な身体をしている。
大きさは60〜70センチ程?で幼稚園児ぐらいだが、まん丸い身体をしている。
手足は短く目はつぶら、何かのマスコットキャラの様な感じである(意味深)
頭のてっぺんに二つに分かれたアホ毛があり、双葉なのか若葉なのかを現しているのかな?というような容姿だ
「やっぱりそうなんですね」
モンスターでは無く妖精か精霊の類いだと分かってちょっぴり安心するモモ。
「そうね!分かってたわよ!最初からね!」
最初から分かって無さそうなリナが、すぐ分かる嘘で誤魔化す。
そんなリナを生暖かい目で僕が見守っていると。
「なによ!なんか文句あるの?」
ガラの悪いチンピラみたいな絡み方をしてきたので、軽くあしらう為、
「じゃあ、あっちのもう一人(匹?)も分かるの?」
そう言って緑色の謎生物(木の妖精)の奥に居たもう一つの影を指差す。
ヌッ、と出て来たのは先程の木の妖精よりも二倍はありそうな程大きく、身体の色は深い緑色をしている大きめのマスコット?の様な感じの謎生物。
「ジ、ジャイアントトレント!?」
リナが慌てて身構えて剣に手を添える。
「いや、違うで〜」
クルミの肩に居るちびシャドウがリナにツッコミを入れる。
「ぷぷっ」
慌てふためくリナを見て僕は笑いを堪える、というか漏れている。
「はぁ!」
「何よ!ならあんたはわかるの!?」
顔を真っ赤にしながら僕に叫ぶリナは微笑ましい。
「ぇ〜と」
「モリ……もとい森の精霊かな」
僕は恥ずかしそうなリナを横目に説明する。
「そう……こちらは、森の精霊」
そしてクルミがその深緑の謎生物を紹介してくれる。
「はぁ!分かってたわよ!ずっと最初からね!」
絶対に分かって無さそうなリナが、すぐ分かる嘘で再び誤魔化す。
「ってか何であんたが知ってるのよ!」
「なんか腹立つ!うきぃぃ!」
リナの怒りの矛先が段々僕に向かってきている気がしないでもないが、
「ぁ〜、勇者の勘ってやつ?」
つい面白くてリナに適当な返答をして遊んでしまう僕。
「まぁまぁ」
この手のリナのボケに慣れているモモが仲裁してくれる。
「木の妖精さん、森の精霊さん」
「はじめまして、よろしくお願いします」
モモの丁寧な挨拶によりボケだった場の空気が穏やかになる。
さすがモモだ
「はい、よろしく」
「こっちはおじいちゃんだよ」
場の雰囲気が良くなったので木の妖精さんが挨拶を返してくれる。
「フォッフォッフォ」
「よろしくじゃ」
まさにおじいちゃん喋りの森の精霊さんも挨拶する。
「うん、よろしくね」
その流れに乗って僕も続けて挨拶する。
「ほら、リナも」
散々トレント呼ばわりしたうえに恥ずかしさのあまり騒がしくしている所まで見られてしまって、訝しげな顔をするリナにそう言う。
「わ、わかってるらよ」
「よろすくね」
動揺してカミカミなリナ。
「もぉ~!カミカミじゃないの!」
そんな自分にセルフツッコミするリナだった。




