38話 古の聖剣
「よく来てくれました」
僕達にそう声をかけたのは魔導師団の副師団長であるミアさんだった。
「とりあえずおかけになって」
ミアさんにそう言われ、長テーブルにある椅子に僕達は座った。
「最初にお礼を言わせて下さい」
「東の塔の光を取り戻してくれてありがとうございます」
ミアさんが僕達に向かって頭を下げる。
「いえいえ、大した事はしてませんよ」
そう言って僕は謙遜する。
「確かに今回あんたは大した事してないからね」
リナがガヤ芸人みたいに口を挟んでくる。
「大丈夫です!永太様は居るだけで心の支えとなりますから!」
またもやモモが何とかフォローしようとしてくれているが、ヒモっぽいダメ人間っぽさが強調されちゃう。
「まあまあ、これで残る塔は北の塔だけになったし」
「ここからが踏ん張りどころやで〜」
クルミの肩に乗ったちびシャドウがエセ関西弁を使う。
「……うん」
クルミもそれに同意する。
「ふふっ」
ミアさんはそんなクルミを見つめて微笑む。
そしてクルミの肩に乗ったちびシャドウを見て何かを察した様だ。
「クルミの事……ありがとう」
「私からもよろしくお願いします」
そう僕らにそっと呟き、僕達は微笑み返す。
どうやらクルミが陰の調律者No.3であることが僕達に知られたのだと感じ取ったのだろう。
特殊隠密部隊としての正体がバレてしまう事態は普通に考えるとマズイ事なのだろうが、僕達にバレた件はどちらかと言うと嬉しい事の様だ。
ミアさんはクルミの師匠と言うこともあり、友達に隠し事をちゃんと話せて良かったね〜的な保護者目線の様な感じなのかもしれない。
そのミアさんも陰の調律者No.1なのだが、その辺りはあえてツッコまずボヤかして話を進めることにする。
「そういえば、お話って?」
ミアさんからお話があるという事でここに来た当初の目的を思い出すモモ。
「そうですね、その件についてなのですが」
そう言ってミアさんは本題に入る。
「……聖剣の在り処が判明したのです」
たっぷり間を取った後、ミアさんは口を開き真剣な目で僕達を見つめて話す。
「聖剣!?」
剣の話題という事で今度はリナが食いついてくる、さすが騎士団長。
「……まさか」
「あの古戦場ですか?」
知った様な感じで話に乗ってくるモモ。
「そうです、このミーカワの北側にある場所」
「かつて勇者が悪しき魔物と戦ったという古戦場です」
ミアさんが丁寧に補足して説明してくれる。
「確かに……あそこには聖剣が眠っているという言い伝えがあったのは知っています」
「ですがその詳しい在り処は判明していなかったはず」
伝承や言い伝えが好きなモモはミアさんの話にノリノリで参加する。
「そうですね、伝承止まりで今まで深く調査されてませんでしたから」
ミアさんがそう返す。
「へぇ~、昔勇者が居たって話が他にもあるのね」
リナも話に加わってくる。
「そうなんです、かつてこの国に降り立ったいにしえの勇者様がこの王国の危機を救ってくれた」
「そんな話や伝承が沢山伝えられてきているのです」
言い伝え話をしているモモは凄く嬉しそうで何よりだ。
「その勇者様がこの国の未曾有の危機に立ち向かった時のお話が他にも一杯あって……」
伝承マニアと化しつつあるモモがヒートアップしてきて微笑ましい。
「まぁ昔の勇者様の他の伝承は、追々聞かせて貰うとしまして」
「今回はその勇者様が使用したという」
「厄災を振り撒いた悪龍を打ち倒し封印した剣……」
「超龍聖剣スーパーエクスカリバー」
「その聖剣の在り処が判明したのです」
ミアさんが真剣な顔で僕達にそう告げる。
「……絶妙にダサい」
ボソリとそう呟いたのは……リナだった。
「まぁまぁダサいな」
「……うん」
次いでちびシャドウもポロリと呟き、クルも頷く。
「ぇ〜、そのダサさが良いのですよ」
モモは反論している風にネーミングをディスってる。
この聖剣の名前、昔の自分がつけた名前なのでダサいダサいと言われて腹が立つ……どころか、自分でもダサいと思っているのでむしろ恥ずかしい(笑
小学生が考えた様な安直な名前の聖剣でスーパーを付けたエクスカリバーってダサっ!なんてネーミングセンスにセルフツッコミを入れようとも思ったが昔の自分は小学生だったか……と思い留まる。
「ネーミングセンスはどうあれ、伝承の通りならば厄災を打ち倒し封印したとされる聖剣です」
「多少ダサくても手に入れる価値はあるかと」
ミアさんもダサいと思っている様で安心?した。
「へぇ~」
「でも勇者の剣なら光だか闇だかわからない、なんちゃら剣があるんじゃ……」
リナがそこまで言った所で、
「はい!ぜひ欲しいです!」
僕は挙手しながらリナの喋りに被せる様に聖剣欲しさをアピールする。
「ちょ、いきなり何よ!」
「急に気持ち悪いわね!」
話を遮られたリナがツンドラる。
まぁ今の僕には光輝闇暗炎竜剣がある。
だが、なるべくなら本筋から外れた行動はしたく無いというのが本音なので聖剣探しのメインシナリオの流れに乗ることにする。
なのでリナが余計な事を言い出す前に……
「モモも聖剣欲しいよね〜」
リナの話をスルーしながら乗り気なモモに話を振る。
「です!」
「いにしえの勇者様の勇姿をもっと皆に知ってもらえるいい機会です!」
「もちろん現勇者の永太様の勇姿もです」
歴史好きの伝承マニアと化しているモモがそう叫ぶ。
「まぁ、モモがそう言うなら……」
楽しそうなモモを見て、リナはそう言いながら引き下がる。
「ミアさん、あの古戦場ですよね」
「詳しい事を教えてもらえますか!?」
食い気味にモモがそう言って話の流れを戻す。
「わかりました」
「ではまずは古戦場の説明から」
そう言ってミアさんが説明を始める。
「その古戦場というのはこのミーカワの北西にあります」
「そこには豊かな森と草木があり皆が平和に暮らしていたのですが」
「九つもの厄災や呪いを振りまいたというナーガ・クティが突如現れ、暴れまわり」
「それを聞いた勇者様が超龍聖剣スーパーエクスカリバーにて打ち倒し、封印したと言われています」
ミアさんがそこまで説明した所で、
「その激しい戦いは、ナーガ・クティの戦いと呼ばれ」
「戦いの跡が今もなお残るその場所が、ナーガ・クティの古戦場と呼ばれているのです」
モモが説明を続けた。
うん、何故か自信満々に。
「伝承としては残されていましたが、悪龍と共に聖剣が封印された場所は不明だったと記憶しています」
「それが見つかったんですね!」
楽しそうに話すモモを見ているとこっちまで嬉しくなる。
「そうです」
「正確には悪龍が封印されてるであろう場所が見つかったと言うべきですかね」
ミアさんが補足をしながら説明してくれる。
「おぉ〜」
モモが感嘆の声を上げる。
「戦力としての聖剣はとても魅力的なのですが……」
「もし魔王軍など悪意のある者に悪龍の封印が解かれてしまった場合、今の王国には対応する戦力の余力がありません」
「聖剣と言うよりも悪龍をどうにかしたいと言うのが正直な所なのです」
「ぜひ勇者様に対応をお願いしたいのですが……」
そこまで言って僕の方をチラ見して微笑むミアさん。
なんだか上手いこと転がされている様な気もするが、あんな美しい女性に頼まれて断れる訳などない!
なんて鼻の下を伸ばしていると……
「なんかキモい顔してるし」
こちらを見ながら僕に呟く。
「師匠は美人さんやからな、しゃ〜ない」
ちびシャドウが鋭いツッコミをして、
「……だね」
自慢の師匠と言う事なのか、クルミがなぜかドヤ顔をする。
「ぁ、いや」
「勇者としては悪龍を放おっておけない!から」
取ってつけたような言い訳で誤魔化す僕。
か、確かに今魔王軍を相手にしている王国にとって、悪龍は目の上のタンコブとなっているのであろう。
決してよこしまな気持ちで受けるわけではない!
なんて心の中で言い訳する僕。
「そうです!」
「悪龍に聖剣なんて伝承通りか是非確認しないと!」
もはや推し活みたいになってきているモモも叫ぶ。
「まぁ、確かにどうにかしないとかもね」
乗り気なモモを見ながらリナがそう呟いた。




