37話 味噌串カツ
様々な事が起きた東の塔攻略はひとまず一段落し、日が傾いて来たので暗くなる前に町に辿り着くため僕達は砂漠を後にした。
砂漠とは言え街まではどこぞの観光砂丘程度の距離度だったので日が落ちる頃にはミーカワへと戻って来る事がこ出来た。
「ふぅ、なんだか色々あった一日ね」
確かに今日は激動の日だった。
砂漠でミミズと戯れ砂嵐に会い、オアシスでサンドイッチピクニックをしたかと思ったら古代遺跡でトラップ祭り。
暗黒四天王のゴブゾウ戦ではリナのグーパンが僕のお尻にヒットしたり、クルミのシャドウ件があったりと……
「ってか!そういえばめっちゃリナにお尻叩かれてた!」
そうだった、あの時はゴブゾウの相手に夢中でサラッと流されていたが……
「この恨み……利子つけて返して貰いますで!」
思い出し怒りで変な語尾になりながら僕はリナを睨む。
「な、なによ急に!変な顔で見つめないでよ!」
「あれよ!セクハラよ!」
「あんたは見ただけで猥雑物陳列罪なのよ!」
リナが結構な酷いことを言って強引に誤魔化そうとする。
「まぁまぁ、せっかく一件落着した事ですし」
モモが天使の笑顔で仲介に入る。
「あんさん、器のちっちゃな男はモテませんぜ」
クルミ肩に乗ったちびシャドウが、相変わらずいらん事を言う。
「……そうそう」
ちびシャドウが振ってクルミが同意する必殺コンボ。
「うきぃぃ〜」
僕はリナのモノマネ風にお怒りポーズする。
すると……
グゥゥ〜
このお腹の音はさっきも聞いた気がする。
「お腹か空いてイライラしてるのかもしれません」
「とりあえずご飯にしましょう」
モモがそう言ってこの場を纏めようとする。
「……うん」
お腹の音は完全にクルミだった、なのでモモの提案に直ぐ様同意する。
「東の塔の光が戻った祝勝会ね!」
リナも乗り気で僕のお尻をアタックした件を流して話題を変えようとする。
「それじゃあ行きましょう、永太様」
モモに笑顔でそう言われると同意せざるを得ない。
「……わかった」
そう言って僕達は酒場と食堂が併設された宿屋へと向かった。
「……じゅるり」
テーブルの上に並べられたのは……
・ポセイ丼(海鮮丼)
・ミストレルオーディン(味噌おでん)
・味噌で煮込んだうどん(ミーカワ名物)
・みしょくしゅかちゅ(味噌串カツ)
などなどミーカワ名産の味噌などを使った料理の数々。
「海鮮丼ってミーカワの名産だっけ?」
素朴な疑問をみんなに聞いてみる僕。
「橋のツタが無くなって二ヴァーンの街からの海鮮の流通が復活したからですね」
モモが相変わらず優しく説明してくれる。
なかなかに美味しそうな料理の数々だが、苦手なものが一つある。
それは……
「みしょくしゅかちゅ」
この味噌串カツ!どうしても上手く言えない。
いやゆっくり気をつけて言えば言えないことは無いのだが、油断するとこうなってしまう。
あ、味は大好きだよ!
「あんさん、以外とカワイイ話し方すんのな」
クルミの肩に乗ったちびシャドウが僕の喋りをイジってくる。
「いただきます」
「……モグモグ」
本体のクルミは食べるのに忙しそうだが、食べながらシャドウに喋らせるって流石陰の調律者No.3は器用だな。
「それじゃ私達もいただきますか」
美味しそうな料理を前にリナもご機嫌な様子だ。
「「いただきます」」
そう言って僕達は祝勝会と称して美味しいご飯を堪能し、その日はミーカワの宿屋でグッスリ休んだ。
チュンチュン
「う〜ん」
僕は背伸びして朝日を浴びる。
お腹一杯食べてグッスリ眠ったからか、いい目覚めである。
とりあえず起きて着替えていると……
カチャリ
「……永太」
部屋に飛入って来たのはクルミだった。
「イャン」
着替え中で肌着一枚だった僕はサービスショットな声を出す。
「なんや、サービスショットか!」
クルミの肩に乗ったちびシャドウが着替え中の僕にツッコむ。
「……なるほど」
前回のモモと違ってクールなジト目で僕の裸体をマジマジとクルミに見られる。
「いや!クルミは女の子なんだからもっと照れて!」
見られてる僕の方が照れて来るので、すかさずツッコミを入れる。
「……そう?」
照れる様子もなくクルミは静かにそう言う。
「なに?またセクハラ?」
次いでリナも入って来て僕の裸体を眺める。
「されてるのは僕ですよ!」
リナがちょっぴりニヤけながら見つめるので僕は叫ぶ。
「まだ着替えてないの?グズグズしてないでとっとと準備しなさい」
リナが僕に向かってそう言う。
「へ?どこか行くの?」
東の塔の光を取り戻したので一段落してゆっくりしていたのに〜。
なんて思いながら昔の僕が作ったこのゲームの次の展開を思い出す。
手早く着替えて夕べ祝勝会をした酒場兼食堂で朝ごはんを頂く。
食べ終えた辺りでリナが口を開く。
「魔導師団副師団長のミアさんから連絡があってね、とりあえず会いに行くわよ」
相変わらず団長風を吹かせてこの場を仕切る。
まぁ僕としてもその方がやりやすいのでそれに乗っかる事にする。
「ぁでもミアさん達って一応身を隠しているって事なんじゃなかったっけ?」
「いいのこんなに大っぴらに話ししてて」
魔導師団副師団長のミアさんは王様、王妃様と一緒にこのミーカワで身を隠しているという設定を思い出す。
リナはこういう所に気が回らなさそうな性格なので一応釘を刺しておく。
「……ぁ、そうだった、わね」
「今のはナイショよ!」
いや、今更小声にしても意味ないってツッコミたかったけどやめておいた。
ひとまず僕達はミアさんから連絡を受け取ったというクルミの案内でその場所へと向かった。
「……あそこ?」
歩いていると大きな建物が見えてくる。
町長の屋敷でも無く、教会や聖堂でも無い建物。
「……そう」
特に説明も無く淡々とその建物に向かうクルミとそれについて行く僕達、まぁこのクールさがクルミらしい。
その建物の前に来ると表札というか看板が目に入る。
「魔導図書館ですね」
その文字を読んでモモが説明してくれる。
中に入るとファンタジーでよく見る大規模な書庫、というか図書館?
背の高さ以上の本棚が壁一面を覆い、本が所狭しと並べられている。
その高さと広さを見て一体どうやって高い所の本を取っているんだろうと素朴な疑問が沸いてくる。
本の多さに圧倒されている僕達を横目にクルミが案内係なのか、書庫の受付に居る人の所へ向かう。
「ようこそいらっしゃいました」
「ご用件は何でしょう」
魔導図書館の受付の人が丁寧な物言いで話す。
「蔵書……を見せて欲しい」
珍しくクルミが普通に話している。
肩に乗っていた筈のちびシャドウも引っ込んで隠れている様だ。
「はい、蔵書ですね」
「何番の蔵書庫ですか?」
受付の人が聞き返してくるが何番も何も、クルミは何の蔵書を見たいのだろう?
なんてクルミの様子を伺っていると、
「のばら」
番号を聞かれているのに番号じゃない言葉で答えるクルミ。
「……はい」
受付の人はその返答を不思議がりもせずスッと立ち上がる。
「こちらへどうぞ」
一般公開されている場所では無く裏側、いわゆるバックヤードへと案内してくれた。
受付の人は平然を装っていたが、鋭い勇者の僕から見ると明らかにクルミの言葉に反応していた。
というか【のばら】って最初にミーカワで地下大聖堂に行く時に使った合言葉だし。
だとしたらあの受付の人は王国関係者か隠密特殊部隊の一員か、って所かな。
案内された場所は蔵書庫じゃなくてこじんまりした備品倉庫様な場所だった。
リナとモモは疑うこと無く静かについてきている。
まぁ図書館と言う事もあり、騒いじゃいけない場所だしね。
その備品倉庫に入るとクルミが壁にある棚に近づいて、なにやら操作する……と、
ズズズズ……
棚が動いて裏側から扉が現れた。
RPGとかで定番の隠し部屋ってやつですな。
僕達はその部屋へと入っていった。
隠し部屋は割と広くて長テーブルが置いてある。
そのテーブルの端に人が座っていた。
「よく来てくれました」
僕達にそう声をかけたのは魔導師団の副師団長であるミアさんだった。




