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第二十四章 帰還、その後




A.F.683/03/16 14:55

 サテリット艦隊参謀長ゾエ・トルトゥリエ中将は怒りに燃えていた。サテリット艦隊を敗北させ、司令官セシル・ド・ベルジェ大将を死に追いやったアテラス軍とイザナ軍にではなく、ルーペ首都ケルンサル・カリッテを壊滅させた、幕僚総監シャルル・ド・ソシュール元帥に対してである。彼女はルーペが出身地ではなかったが、任地であるルーペに愛着も帰属意識も持っていた。故にソシュールの行為を許す訳にはいかなかった。だが、元帥のソシュールに中将のトルトゥリエが不満をぶつける訳にもいかない。また、ソシュールにとって唯一の上官である統帥本部本部長オレール・ド・ローラン元帥が不問としている以上、弾劾が無効であることも明らかであった。彼女は黒い復讐心を隠し、最高幹部会議に参加している。

 会議はローランの言葉から始まった。

「ソレイユとルナの出征準備は概ね終わった。そこで、具体的な作戦案について協議をしたい。」

 ソレイユ艦隊参謀長ジョゼット・ド・ルナール大将が艦隊司令部で検討した作戦案を報告する。

「事前にルナ艦隊司令部と協議を行っております。アテラスとイザナこの2國を屈服させるのが戦略目標ですが、現段階において強力なのはアテラスです。『弱い方から叩く』その戦略上の基本原理から、先にイザナを攻撃するべきと考えます。」

 ルナールがそこまで言ったところで、ローランが話を止めさせた。

「攻撃するのはアテラスだ。先日、國王陛下が誘拐された。護衛の者の証言から、アテラスの手の者の犯行であることが確実だ。犯罪に対する懲罰、それが出征理由である故、アテラスを攻撃せよ。」

 ローランとソシュール以外の者は、國王が不在であることすら知らなかった。誘拐されたと聞き、一同声を失う。だが、ローランは大したことではないと言わんばかりに平然としている。

「どうした。続けて構わん。アテラス攻撃のケースも検討ぐらいはしているであろう。」

「は、はい。アテラス攻撃の際は、星系外縁より侵入しマガツヒを攻略します。コメートの撤退時に破壊されていますので、十分な防備は揃えられず、攻略は比較的容易だと予想されます。ここを拠点に艦隊を進め、アテラス艦隊と決戦、これを殲滅します。次いで、ツクヨミに兵を進めこれを攻略、もしくは破壊します。本星への攻撃は、現時点での動員兵力では攻略が困難であることから行わず、」

 再度、ローランが話を止める。

「つまらんな。アテラス本星への攻撃部隊としてエトワール、サテリット、コメートの陸戦部隊を使え。ほとんどが無傷だ。」

 この命令にトルトゥリエが異議を唱える。

「エトワールはともかく、サテリット、コメートは出征から戻ったばかりです。休養が…」

 ローランとソシュールが見る者を凍りつかせる視線を送っている。トルトゥリエは、それ以上言えなかった。ローランが続ける。

「特に問題はないな。各艦隊の陸戦隊はトルトゥリエ中将の指揮下としよう。サテリット主力の残存部隊は陸戦部隊の護衛と支援に当たれ。それと、陸戦に長けた補佐役も用意する。一応言っておくが、アテラス本星を占領・維持する必要はない。破壊すれば良い。」

 それがどういうことか、トルトゥリエにはすぐにわかった。だが、反対意見は言えない。

 続いて、ソレイユ艦隊司令長官リュドヴィック・ラコスト元帥が本國防衛について懸念を示した。

「そうなると、残存部隊も含め正規5艦隊全ての戦力が外征に出ることになるな。本國防衛は大丈夫か。」

 それにはソシュールが答える。

「問題はない。各惑星には駐留部隊がいる。UPHは条約があり、動けん。」

 ラコストの不安は解消していない。

「だが、ルーペのような例もあるぞ。」

 ソシュールが一笑に付した。

「だからこそ、ルーペは徹底的に潰したのだ。同じ目に合わせてやれば良い。」

 トルトゥリエの顔色が変わる。下を向き、拳を握りしめている。他の者も鼻白んだ。ルナ艦隊司令長官パトリス・ダーノー大将が、話をかなり無理矢理に変えた。

「ところで國王陛下が不在で、出征の裁可はどうするのですか。」

 ローランが間をとってから答える。不気味な迫力を纏っている。

「出立時には、陛下はおられる。何の心配もいらん。」

 それ以上は聞くべきではない気がしたダーノーは黙った。

 ローランは続ける。アテラスへの出征が既定路線であり、そのための障害は無いことを強調する。

「貴官らは出征準備を滞りなく進めておけばよい。それよりも、奴らの新戦術に対する作戦はどうなっている。」

 ルナ艦隊参謀長ジャン=ミシェル・ド・ニザン大将が自信満々に答える。

「警戒すべきは航宙攻撃です。従って、いかに宙母を撃破するかにかかっていますが…」

 トルトゥリエは話を上の空で聞きながら、今までは疑問に思ったこともない、自分が何のために戦っているのかについて考え始めていた。



A.F.683/03/16 19:10

 アテラス國國防軍独立駆逐艦隊は亜空間跳躍航行の日程を順調に消化していた。艦の客人となったアズリア王國國王セリーヌ・ド・ミュレーと國務大臣クロヴィス・ド・ゲランは、…働いていた。兵員食堂でセリーヌがサラダをよそっている。

「陛下、野菜を減らして頂けますか。」

「ダメです。きちんと食べてください。船乗りにとってビタミン不足は天敵です。」

「えー」

 そう言って夕食のトレイを運んでいくのは、一般の兵員だ。狭い軍艦内、専用の設備など用意できるわけもなく、炊事班の女性士官と多くの物を共用することになった女王セリーヌは、周囲が止めるのも聞かず、その女性士官の手伝いを始めた。そして、甲斐甲斐しく働いている。炊事場の掃除、調理、皿洗いに至るまでテキパキとこなすセリーヌに、当初は気後れしていた将兵もすっかり気を許すようになった。ゲランも、國王が働いているのに無聊をかこっている訳にはいかず、共用設備の掃除などを買って出るようになった。

 夕食の時間と片付けが終わり、一般兵員が持ち場に戻ったところで、食堂を会場に会議が始まった。セリーヌ達もいる。ラジが謝意を表す。

「いつも炊事や清掃にご協力頂き、ありがとうございます。艦乗組員を代表して感謝申し上げます。」

 炊事班用の作業着を着たセリーヌが笑顔で答える。

「いえ、とても楽しいです。お料理は好きだったのに、宮殿では触らせてもらえなくて。」

「先日、陛下につくって頂いたビーフのポトフは絶品だったと、皆が申しておりますよ。」

 一同が頷き、相槌を打つ。

「そう言って頂いて嬉しいです。」

 セリーヌも嬉しそうだ。ラジが改まって話を切り替える。

「さて、お耳に入れさせて頂かなければならないことがございまして、…」

 ラジは、アズリアがゲランの公職追放を発表したことを告げた。そして、連座して多くの者を収監していることも。収監された者のリストをゲランの前に置く。

「今のところ、陛下に関する発表は無いようですが、おそらくはゲラン閣下によって拉致された、もしくは殺害されたと発表する気なのではないかと考えています。」

 ゲランはリストを見ようとはしなかった。罪なき者の不幸を予想した上で、計画し実行したのである。ここで引き返す訳にはいかない。

「お伝え頂きありがとうございます。ですが、我々が彼らにできることは何もありません。無事を祈ることくらいです。」

 ラジは2人の悲壮で決意に満ちた顔を、横目に見た。國を離れるとはそれだけ強い意志が必要なのだ。

 彼らを乗せてムツキ達は旅を続け、3/28、3ヶ月振りにフソー星系外縁に戻ってきた。



A.F.683/03/28 11:10

 フソー星系に入った独立駆逐艦隊は通信封鎖を解除し、通常航行をしていた。すると前方から1隻の駆逐艦が近づいてきた。艦型が自分達に似ている、と言うか同じだ。

「あれはムツキ型ですね。新造艦か、計画にありましたっけ。」

 タインの言葉にラジも首を傾げる。オペレーターが前方のムツキ型駆逐艦から通信が入ったことを告げる。

『我、カミアリヅキ、貴隊への編入を許可されたし。』

 それは第4次マガツヒ宙域の戦いで撃沈されたカンナヅキの補充として、戦時特別予算で建造された艦であった。戦時中であり、建造途中で中止となったり、艦型を変更して完成させることも考えられたため、独立駆逐艦隊には敢えて知らされていなかったのだ。関係各所や工員達の必死の努力によって工期短縮に成功し、先日竣工した。そして、長旅を終える姉達を迎えに来たのだった。軍令部の粋な計らいに艦内は盛り上がる。

「もう揃うことはないと思っていたが、12隻揃ったな。クンタニット少将も喜んでいるだろう。」

 ラジはそう言ったが、本人も相当喜んでいる。こうして、独立駆逐艦隊は仲間を増やし、惑星アテラスへ急ぐ。



A.F.683/04/03 21:37

 ムツキは惑星アテラスに戻った。周回軌道に入り、シャトルを降下させる準備をする。セリーヌとゲラン、それに軍令部に帰任するマコトがシャトルに乗り込む前の挨拶をしている。セリーヌと共に暮らしていた女性士官がセリーヌとゲランにとプレゼントを持ってきた。

「陛下、美味しいお料理をありがとうございました。小官らは常に陛下と共にあります。陛下の御心に少しでも小官らがいれば、何よりの幸いでございます。」

 そう言って手渡された物は、セリーヌとゲランが身に付けていた作業着と、乗組員のみが着用するムツキの名が入った帽子であった。

 2名は涙ながらに乗組員と握手をしたり、写真を撮ったりしている。マコトとラジは、その光景を微笑ましく眺めながら話をしている。

「カイ中佐、次の戦いはおそらく、今まで経験したことのない厳しいものとなろう。貴官の活躍に期待しているぞ。」

「はい、全力を尽くします。独立駆逐艦隊皆様のご活躍とご武運をお祈り致します。」

 そして敬礼し、マコトはシャトルに乗り込んでいった。次いで、名残惜しそうに手を振りながら、セリーヌとゲランがシャトルに乗り込む。

 シャトルはムツキから離れ、アテラスに降りていく。


 大事そうに帽子を撫でているセリーヌにマコトが声をかける。

「陛下、到着してすぐで恐縮なのですが、会見を予定しております。」

 セリーヌは表情を引き締める。威厳ある國王となるべく、眼を瞑り2秒の後、開けた。

「はい。そこでわたくしは、亡命を希望する旨と亡命政権を発足させることを宣言致します。」

 マコトは肯く。

「そこでお願いなのですが、亡命政権の指針に、各惑星國家自治権の大幅な拡充、と言う項目を入れて頂きたいのです。」

 ゲランが慌てる。こんな場所で決めてしまって良い内容ではない。

「カイ中佐、この様な場では、返答は致しかね…」

 ゲランの言葉を遮ってセリーヌが断言する。

「良いでしょう。次回の戦いのために必要だと、カイ中佐は考えたのですね。」

「その通りです。」

 ゲランはまだ慌てている。

「しかし、陛下、その様なことは政権が発足後に」

「控えよ、ゲラン。次の戦いで勝利せねば、亡命政権など砂上の楼閣と同じ、ひと吹きで崩れよう。盟友アテラスに協力できることは、何でもやらねばならん。」

 セリーヌの視線は真っ直ぐにアテラスに注がれている。


 シャトルがアマノイ郊外の宇宙港に着陸する。報道関係者が詰めかける中、セリーヌがアテラスの地に降りたった。そのまま、やはり多くの報道陣が待ち構えている特設の会見会場に入る。セリーヌは臆することなく、声明を発表した。主な内容は次の通りである。


 ・アズリア王國國王セリーヌ・ド・ミュレーは、アテラス國政府に亡命を希望する旨、伝えた。

 ・アテラス國政府はこの要請を受諾した。

 ・アズリア王國及びアズリア連邦では、事実上、連邦軍統帥本部本部長オレール・ド・ローラン元帥の独裁体制となっており、多くの民が弾圧されている。

 ・ローラン体制の打倒を目指し、アテラス國内に亡命政権を発足させる予定である。

 ・共に亡命を希望し受諾された國務大臣クロヴィス・ド・ゲランを以って、亡命政権の首班とする。

 ・亡命政権の指針は作成中であるが、現行よりもより共和的、分権的な統治を目指すことを約束する。

 ・連邦を構成する各惑星國家に、大幅に拡充した自治権を付与することを検討している。



 当然、ローランの支配するアズリア連邦はこの声明に対抗する声明を発表した。


 ・アズリア王國國王セリーヌ・ド・ミュレーは、アテラス國と元國務大臣クロヴィス・ド・ゲランの共謀によって誘拐、拉致された。

 ・國王セリーヌ・ド・ミュレーは薬物、脅迫など何某(なにがし)かの非人道的操作によって意に沿わない発言を強いられている。

 ・國王セリーヌ・ド・ミュレーの不在により空位、國事行為に支障をきたすは、テロ國家アテラスの意図するところとなるため、リゼット・ド・ミュレーを以って代王と為す。

 ・連邦内は安定し民は平和に暮らしている、弾圧など存在しない。

 ・アテラス國に國王セリーヌ・ド・ミュレーの送還と元國務大臣クロヴィス・ド・ゲランの引き渡しを求める。

 ・亡命政権は全く正当性のないものであり、これに従い連邦内の秩序を乱すは犯罪行為である。違反者は連邦法並びに各惑星國家法に基づき、処罰される。



 同じ頃、アズリア連邦を構成する各惑星から無数の艦艇が飛び立っていた。惑星ボルバス、メッキュロ、ルーペからは陸戦隊を載せた強襲降陸艦を主とした艦隊が、惑星アズリア及びキャスナからは強力な打撃力を持つソレイユ艦隊とルナ艦隊が進発していたのである。



A.F.683/04/03 22:00

 サテリット艦隊参謀長ゾエ・トルトゥリエ中将は統帥本部から派遣された『陸戦に長けた補佐役』を迎えていた。その男はニコラ・ド・ショーメ中将、ルーペ首都ケルンサル・カリッテで非武装の市民を虐殺した張本人であり、トルトゥリエがソシュールの次に憎む相手であった。

「これは参謀長閣下、ご機嫌麗しゅうございます。」

 それだけで吐き気を催すほどの嫌悪感に耐えながら、トルトゥリエは敬礼を返す。

「小官は陸戦の経験がそれほどないのでな、助言をよろしく頼む。」

「もちろんでございます。小官の命に代えましても、閣下をお支え申し上げます。」

 年少で女性のトルトゥリエを嘲っているのは明らかだ。その場で撃ち殺したい衝動を必死に抑えて、実務の話に移す。

「我が隊はエトワール、サテリット、コメート3艦隊の陸戦部隊を集合させた混成部隊だ。総数は多いが、共に訓練したこともない。現場で混乱が生じるのではないか。」

「大丈夫です。たかがアテラス。どれほどのものでもございません。我が軍の前には、すぐに平伏すでしょう。」

 何の根拠もなく、相手を過小評価し嘲る態度に話す気も失う。

(こいつと同じ艦内にいると思うだけで虫唾が走る。)

「わかった。用がある時はこちらから連絡する。自室にて待機しておいてくれ。」

「承知致しました。では、失礼致します。」

 おかしな抑揚をつけてショーメが言い、去っていく。トルトゥリエはその背中を殺気をこめて見送った。



A.F.683/04/04 10:00

 マコト・カイは長い旅から帰還し、久しぶりに軍令部に出頭した。4月1日に正式に軍令部総長となったジェミヤン・エフレモフ元帥と作戦課課長スルギ・パク中将に対し、不在期間の報告をするためだ。総長室に入室したマコトにエフレモフが(ねぎら)いの言葉をかける。

「カイ大佐。まずは、無事な帰着、何よりだ。」

 マコトは不在だった4月1日に大佐に昇進していた。どうも、バタバタしている間に立場が引き吊り上げられていく感覚がある。

「ありがとうございます。小官としましても、アズリア國王セリーヌ・ド・ミュレー陛下と國務大臣クロヴィス・ド・ゲラン閣下を、無事お連れすることができて何よりでした。」

 エフレモフとパクが複雑な表情で笑っている。

「まさか『おまけ』が國王陛下だとは思っていなかったが、良きにつけ悪しきにつけ影響力は極大だ。」

 マコトは少し不安になる。

「悪しきことが何かあるのでしょうか。」

 エフレモフは正面に手を組んで話を始める。

「まだ、大したことではない、昨日の今日だからな。一つは、一気に反アズリア風潮が加熱したこと。世論が加熱し過ぎるのは考えものだ、終戦交渉の障害になるやもしれん。もう一つはセリーヌ陛下個人の人気がとんでもないことになっている。陛下への忠誠心過多思考力過小な連中が、訳の分からん主張を始めると収拾がつかなくなる。同じメンタリティだろうが、亡命政権への参加を希望する者が殺到している。」

 マコトも複雑な表情になる。確かに、アズリア亡命政権の伸長はアテラスには基本追い風だ。だが他國である以上、暴走が始まった時に止める手立てがない。

 パクが話を重ねてきた。

「そのためにも、スエツミが接触していた人物がキーパーソンとなり得るが…」

 マコトは名前を思い出す。ミコトともよく会っている人物だ。

「ティアナ・サーン氏ですか、なにか問題でも。」

 パクは苦笑いを浮かべている。

「問題というわけではないが、かなりの人気だ。政治家とアイドルグループとを混同する輩の声が最近大きくてな。」

 マコトは納得する。確かに、若く美しいセリーヌと若く可愛らしいティアナにファンが付くことは想像に難くない。エフレモフが立ち上がり、壁のディスプレイを操作する。

「まぁ、その話は追々していくとして。貴官には直近の危機について、その才覚を発揮してもらわねばならん、スエツミがアズリアの艦隊編成を入手した。と言っても(ほとん)どが公開情報だがな。」


〈アズリア連邦軍〉

 ・ソレイユ艦隊 (司令長官リュドヴィック・ラコスト元帥)

         (参謀長 ジョゼット・ド・ルナール大将)

   ・戦艦    16隻

   ・重巡航艦   8隻

   ・軽巡航艦   4隻

   ・駆逐艦   32隻

   ・航宙母艦   4隻

   ・補給艦   14隻

   ・強襲降陸艦 60隻

   ・輸送艦   15隻

  陸戦部隊

   ・兵員    11万5千人

   ・戦闘装甲車  6千3百輌

   ・各種車輌   1万7百輌



 ・ルナ艦隊   (司令長官パトリス・ダーノー大将)

         (参謀長 ジャン=ミシェル・ド・ニザン大将)

   ・巡航戦艦  12隻

   ・軽巡航艦   8隻

   ・駆逐艦   24隻

   ・航宙母艦   8隻

   ・補給艦   10隻

   ・強襲降陸艦 48隻

   ・輸送艦   10隻

  陸戦部隊

   ・兵員     8万2千人

   ・戦闘装甲車  4千2百輌

   ・各種車輌   8千8百輌



 ・サテリット艦隊(司令長官代行ゾエ・トルトゥリエ中将)

         (特務参謀長 ニコラ・ド・ショーメ中将)

   ・重巡航艦   1隻

   ・軽巡航艦   1隻

   ・駆逐艦   10隻

   ・航宙母艦   4隻

   ・補給艦   24隻

   ・強襲降陸艦160隻

   ・輸送艦   28隻

  陸戦部隊

   ・兵員    25万2千人

   ・戦闘装甲車  1万4千輌

   ・各種車輌   3万1千輌



「これは…厳しいですね。」

 マコトも並ぶ数字に圧倒される。

「この大艦隊が4月末にフソー星系に到達の見込みだ。非常に大きな戦力だが、さすがのアズリアもこれが全財産だ。予備戦力はほぼ無い。スエツミとも協力して、撃退作戦の立案を頼む。」

「はっ」

 マコトとパクは姿勢を正し、敬礼して総長室から退出した。



A.F.683/04/07 15:00

 マコトとパクはある人物を連れて、捕虜収容所を訪れていた。記帳台で氏名や所属組織などを記入して中に入る。狭い無機質な部屋に通され、テーブルの手前側に座る。しばらく待っていると、警備官に連れられて2名の捕虜がやってきた。軍服は着ていなくとも姿勢の正しさから軍人であることが(うかが)い知れる。

 マコトとパクが敬礼し、連れてきた人物が頭を下げる。入ってきた2人は怪訝な顔をしている。そして、頭を下げていた人物の顔を確認して驚愕した。

「陛下、なぜ、ここに…」

 捕虜の名はクリストフ・フェリングとブリュノ・ド・プレヴォ、コメート艦隊の司令長官と参謀長である。マコトたちと訪れた人物はセリーヌ・ド・ミュレー、アズリア王國の國王である。

 5人は着席する。驚きの表情が残るフェリングとプレヴォにセリーヌが声をかける。

「2人ともご苦労であった。アズリアの軍人として恥じることのない振る舞いであったと聞いている。」

 プレヴォが、恐る恐る尋ねる。

「なぜ、陛下がここアテラスにいらっしゃるのでしょうか、本國に何かあったのですか。」

 セリーヌは軽く笑いながら、だが真剣な表情で、

「余は、アテラス國に亡命の要請をし受諾された。よって、この地におる。」

「亡命…」

「余はローランと(たもと)を別った。アテラス國の助力の元、ローランを倒す。」

「ローラン元帥を…倒す。」

 そう言ったプレヴォは、悲しむような笑うような表情をつくり、

「陛下、アズリアへお戻り下さい。そのようなこと、口にしてはなりません。」

 セリーヌはプレヴォを見つめ、微動だにしない。

「戻らぬ。口も閉ざさぬ。ローランを倒すのに貴殿らの力を借りたい。」

 プレヴォの表情は変わらない。

「ローラン元帥を倒す。…無理にございます。1度や2度勝ったとてアズリアの、ローラン元帥の強大さは変わりません。アテラスも…ソレイユには、…勝てません。」

 セリーヌの表情も変わらない。

「いや、勝てる。アテラスは強い、貴殿らが一番よく知っておろう。」

 一同が沈黙する。だが、沈黙を破りセリーヌが口を開く。

「勝てる勝てぬではないのだ。ルーペで22万の同胞が死んだ。ローランとその部下に殺されたのだ。」

 フェリングとプレヴォが眼を丸くする。

「22万…」

 セリーヌの眼に涙が浮かんでくる。

「何もできぬ王ですまぬ、頼む!…お願い!力を貸して下さい!」

 泣きながら頭を下げるセリーヌを見つめ、フェリングが椅子を立つ。入口付近に控えていた警備官がフェリングを座らせようと近づくが、マコトがそれを制止する。フェリングはその場に(ひざまず)いた。

「ちゅ、ちゅうせ、忠誠を、ち、ちか、誓い、ます。」

 その場にいる全員がフェリングに注目し、彼が必死に発した忠誠の言葉を聴いた。それを見たプレヴォも納得したように頷き、膝を付いた。



A.F.683/04/13 12:00

 人口惑星ツクヨミでは、アズリアから拿捕した航宙母艦の修理作業が急ピッチで行われていた。パチャラ・チナワット技術少佐は、先日飲んだイザナ産ウィスキーの味が忘れられない。ラジがイザナで珍しいモノを見つけたと、土産に持ってきてくれたのだった。アテラスとイザナは同盟国となったが、まだお互いの品物は珍しい。貿易ルートの再整備など、交流が盛んになるには今少しの時間がかかるだろう。

「あんな美味い酒があるなら、早いとこ仲良くしとけば良かった。」

「別に少佐が戦争すること決めてた訳じゃないでしょ。」

 一緒に作業している整備兵が、余計なちゃちゃをいれてくる。

「アテラス全体が戦争しようって気になってたから、戦争してたんだよ!今みたいな状況、1年前に誰が予想してたってんだ。」

「そうですよねー。イザナと同盟組んで、アズリアと戦ってんですもんね。」

 チナワットが頭上のパネルを開けると、オイルのようなものが降ってきた。

「ええい、クソっ!後で使いてぇんだったら、もっと加減して壊せってんだ!」

 整備兵が航宙母艦にあいた破口を見上げる。

「これ、かなり上手に壊してんじゃないスか。」

 航宙母艦は機関のある後部にのみ被弾していた。機関の換装は終わり、後は接続と破口を閉じる作業だ。チナワットが頭を拭きながら、同じように見上げる。

「まぁ、確かに。やったのが、シャンチー元帥だからな…さすが。次の戦いに間に合わせたいのはわかるが、なんせ人手不足だよな。」

「また、来るんですよね、アズリア。航宙隊の奴らも相当絞られてるみたいですよ。」

 チナワットが首をゴキゴキ鳴らす。

「来んだよなぁ、てめぇのとこで好きにやってりゃいいのによ。」

「そうですよね。何でわざわざ600光年の距離をやってくんスかね。」

 チナワットはタオルを首にかける。

「ま、飯だ。」

「はーい。」

 2人は食堂に向かって歩いていった。



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