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神官見習いの日常  作者: 伊代
二章
21/26

二ノ九.葛藤

*ウトゥヌ視点です

 里緒との接触を必要最低限にとどめているのは、彼女への配慮や王子への遠慮などではなく、自分の都合でしかない。

 今の里緒に触れれば、きっと自分は暴走するだろう。

 この腕に閉じ込め、二十四時間一秒足りとも放せなくなる。


―――こんな事を考えてしまう自分はそろそろ限界かもしれない。




 里緒にとって、王子は命の恩人。

 彼がいなくては里緒は早世という輪廻から逃れることはなかっただろう。

 里緒自身が王子に恩義を感じ、好意を持っているのは分かる。

 けれど彼女の経緯が恋愛に対し臆病にさせ、友情を恋情に変化させるのを押し留めている。

 それは王子に対してだけではなく、自分にも同様だろう。

 だからこちらも慎重にならざるを得ない。



 孤独に生きている神族にとって神子は唯一の伴侶。

 深い親愛で結ばれる関係が、恋愛へと変化するか否かは本人達次第。

 けれど、恋愛関係にあった前の神子が自らの命を断って以来、その生まれ変わりの里緒と出会えるまで四六〇年を孤独でいた自分にとって、これ以上なく焦がれて止まない存在になっている。


 死者の世界へと連れ去り、自分以外をその瞳に映さぬよう閉じ込めてしまいたい。

 この狂おしい気持ちを彼女の心へとすべて吹き込みたい。

 触れたい。

 口付けたい。

―――そう切望する一方で、里緒が自身で選ぶ道を祝福し今度こそ幸せに生きて欲しいという想いがせめぎ合う。



 こちらは紙一重のところで日々精神を摩耗させながら彼女と接しているというのに、王子はここに来てヴィエナ神に現を抜かしている。


 彼が里緒を想う気持ちを疑ってはいない。

 だからこそ里緒が王子を選ぶのならば、それを認めようと抑制してきた。

 事情があって里緒を蔑ろにしているのだろうとは予測出来るが、だからと言って彼女を悲しませて良い理由にはならない。


 ヴィエナに問題があるのならば神族同士である我に助力を求めれば良い。

 もしくはその神子である絵美佳に相談すれば良い。

 けれど彼はそのどちらもせずにいる。



 故に、ここで不用意に里緒と接してしまえば、辛うじて制御してきた感情は容易く爆ぜるだろう。

 だから遠巻きに見守ることしか出来ずにいる。


 自ら作り上げたがんじがらめの状況に苛立つ。

 そんな未熟さにも腹が立って我ながら滑稽に思えた。

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