47話
「俺様はアバラだ!夜露死苦!」
【名乗り】を上げ、まだ見ぬ魔物のヘイトを集める。暗い森の向こうからドスドスと地面を踏みしめ、木の枝をバキバキと折りながら魔物の一団が飛び出してくる。
「おぉ!来なすった来なすった!!」
オークの群れがあちこちから飛び出しアバラを追いかけてくる。中には槍やこん棒を持つ者もおり、時折石を投げつけてくる個体もいる。
そんな物には当たりっこないとオークを小馬鹿にしながら逃げ回る、真っ赤なリーゼントを揺らしながら走る特攻服を着た男、アバラ。馬鹿にされていることは理解できるのか、オークたちは咆哮を上げながら追いかけてくる。
「ハム助!今だ!」
「ヂュー!!」
アバラの合図でリーゼントに隠れていた【スターハム】のハム助がライトの魔法を発する。一直線にアバラを追いかけてきていたオーク達は突然の目くらましに動揺するが、後ろから勢いよく突っ込んでくる仲間に押される形で前に押し出されてしまうと、そこには大きな落とし穴が掘ってあった。
ハム助の閃光に紛れてアバラ自身は落とし穴を飛び越えており、オークの一団だけが穴にハマってしまう。
「よーし!アンタたち!いいわよ!」
周囲を確認して合図を出す小柄な金髪ショートカットのテトラ。それを聞いて茂みに隠れていた獣人の子ども達が槍を手に顔を出す。
「い、いくぞー!」
「向こうの攻撃は届きませんから、穴に落ちない様にするんですよ」
【神官】である青い長髪のセシルも近くで見守っており、何かあってもすぐ助けられるように待機している。
相手は子どもとはいえ一方的に槍で攻撃され続け、オークたちは一匹、また一匹と倒されていった。全てのオークが沈黙した後、ステータスを確認していた獣人の子どもの一人が歓声を上げた。
「やったよ!アバラ兄ちゃん!レベルが上がったよ!」
「お、やったじゃねぇか!今日はポルコさんに美味いオーク料理作って貰おうな!」
「うん!」と元気よく返事をした子どもはみんなと一緒にオークの血抜きなどの下処理を手伝いに駆けて行った。
ガラガラと大きめの台車に大量のオークを積んで王都グラトニアの門をくぐるアバラをイウラとハナコが迎える。
「おかえり、アバラ。大量だね!子ども達も問題なかった?」
先ほどの獣人の子どもがハナコにレベルが上がった事を報告している。
「あぁ。みんな真面目に手伝ってくれたんで助かったぜ。もう3回目だからな、みんな慣れたもんだよ」
アバラ達はイウラに頼まれて獣人の子ども達に戦いや狩りを教えていた。子ども達もいつまでイウラ商会にいるかは本人次第だ。そのまま働きたいという事もあれば、冒険者になりたいという子ども達もいる。その中で身体が育ってきている子はこうして手伝いも兼ねてレベル上げを手伝っているのだ。
「でもイウラもマメだよな。拾ってきた獣人の面倒をこんなしっかりみてよ」
「別に全部が善意って訳じゃないよ。仕事は子どもにもできる事だけど、必要な人員だし、みんな大人になったら、冒険者になってもうちを贔屓にしてもらうからね。それを言うならアバラ君こそ大した旨味もないのに手伝ってくれてるじゃないか」
もちろんアバラ達も自分たちでクエストをこなした方が報酬もいいし、より経験値を稼ぐことができるだろう。しかし、自分が助けた獣人や、説得して連れてきたポルコの店の事は他人事とは思えないのがアバラという男だった。
「俺はいいんだよ、肉がいっぱいあった方が遠慮なく食えるだろ?それに食う時は皆で楽しく食った方がうめえ」
ニッ!と笑うとアバラの元にイウラ商会の従業員が台車を引き取りに来る。
「アバラサン!これ運んどきます!」
「おう!よろしく頼むわ!」
「イウラ君?あの、アナタの所の従業員さん、どこかで見た髪型してるけど…ああいうのは指導しないわけ?」
そう言われた従業員はアバラと同じリーゼントヘアーをしていた。
「あぁ…彼はアバラに憧れてるそうなんだ。他にも何人かうちの従業員にリーゼントの子がいるよ。うちはお客さんにもリーゼントの人が結構来るから、一発で関係者ってわかりやすいし、もういいかなって」
「うちは流行りを見越して特攻服も作ってますからね…今更やめろとはいえないわ」
そう付け加えたのはハナコだ。そんな話を聞きつけセシルが小走りでやってくる。
「あの!トッコウフクは女性用もあるのでしょうか!リーゼントは流石に真似できませんが、あれなら着れると思うんです!」
「うちの特攻服はジェンダーレスです。オーダーメイドも承っていますから、お気軽に」
ハナコ先生のメガネがキラリと光った。
「セシル、お願いだから早まらないで頂戴。アタシを一人にしないで」
「?テトラさんも一緒に着ればいいのではないですか?」
そう言うセシルに頭を抱えるテトラ。その後ろから台車を引き渡したアバラが戻ってくる。
「アタシは着ないからね!!」
「あ?なんだいきなり。俺らもクエスト報告に行くぞ。じゃあなイウラ、ハナコ先生!」
引きずられるように連れていかれるテトラと丁寧に頭を下げるセシルを見送った二人は、顔を見合わせ笑いあった。
「あれも愛情表現かな?」
「まぁ、いいとこ半分半分じゃないです?好きと嫌いの」




