4話
冒険者登録申請書
用紙には知らない言語でそう書いてあった。なぜか読めるし書けと言われれば書ける気がする。
「冒険者って言ったらよ、最終的には魔王と戦ったりするのとは違うのか?」
「何それ。別に魔王と戦ったりしないわよ。勇者じゃあるまいし。それに勇者だって必ず魔王と戦わなきゃいけないわけじゃないしね」
「なんだ、そうなのか?てっきり魔王と戦うための存在なのかと思ってたぜ」
「アンタの世界の常識とはだいぶ違いがあるみたいだけど“冒険者ギルドの見解として”は魔王は別に邪悪な存在じゃないしね」
冒険者ギルドとして、とはどういうことかと頭をひねる。
「すまん、ギルドとしてってことは王国軍は違うのか?」
「そうね、大体大きく分けて3つの勢力があるんだけど、一つは各国の国軍、この国だと【グラトニア王国騎士団】は基本的に魔王軍とは敵対的な姿勢を取ってるわ。もう一つは【冒険者ギルド】ギルドの見解は魔族も人間も差別なく接するべきという考えね。ギルドは戦争不可侵の条約を掲げていて、魔族側にも人間側にも戦争には参加しないという意思を表明してるの」
「それって戦争で攻められたら反撃しないってことか?」
「ちょっと違うけど、どちらの勢力にも加担しないってことかな。実際に大昔にあった戦争では非難の誘導とか市民の救助とかに尽力したみたい。もちろん攻撃されれば反撃ぐらいはすると思うけどね」
シュッシュッとシャドーボクシングをしながら答える。
「最後の一つが【神聖教会】率いる神聖騎士ね。こいつらは…人間至上主義って感じ。人間族こそ唯一絶対の生き物なのであるーって言って魔族どころか獣人亜人も敵対視してる。けど、全員が全員そうってわけでもないっぽいんだけど、大筋はあってると思う。主要各国に支部があって王国騎士団とは仲良くやってるけどギルドはまぁ…って感じよね。」
「実質2対1で冒険者ギルドは肩身がせまいんじゃないのか?」
「まぁ表面上はなんかうまくやってるわよ。ギルドの勢力もバカにできないしね。王国騎士団とギルドの奴が喧嘩してるところもよく見るけど~」
ケラケラと笑いながら言う。
「そういうことだから、もしギルドに入ったら対魔王戦には参加できないってことになるわね。そんなことが本当に起こるのかは別として」
「なるほどなぁ…」
ふとアバラの脳裏に勇者キサラギの顔がよぎる。もし戦争になれば真っ先に戦いに出るだろう。純白の装備に身を包み、剣を片手に敵をなぎ倒すキサラギ。
「似合いそうだな」
「何?」
「いや、なんでもねぇ。冒険者ってのは何をすりゃいいんだ?」
「依頼は色々あるよ~。薬草集めから伝説のドラゴン退治まで!って言ってもアタシぐらいだと精々オークぐらいしか倒せないけどね~」
「あちこち色んな国に行ったりするのか?」
「ゴールド級ぐらいになれば知名度もかなり上がるから指名されて他国のギルドでクエストを受けることもあるみたいだけど、基本は拠点を決めてその国を中心に活動することになるかな」
「RPGゲームみたいな感覚とはだいぶちげぇんだな…」
「そのあーるぴーじー?っていうのはわからないけど…どう!?アタシとパーティ組んでやらない?アンタかなり強いみたいだし、他にやることもないんでしょ?」
アバラは腕を組みうーんと考え込む
「いいけどよ…その、俺でいいのか?なんかネタ職とか言われてたぞ」
「ネタ職?なになに、なんて職業だったのよ」
によによという擬音が似合いそうな顔でテトラが聞いてくる
「…ヤンキー」
「ヤンキー?確かに聞いたことないわ。なんて意味かわかるの?」
「なんつーか、俺みたいなやつだ」
ここまでコテコテのヤンキーは元の世界でもほぼ絶滅した存在だが。
「ふーん。アバラみたいな奴のことをヤンキーって言うんだ。じゃあ別にいいんじゃない?アタシからしたらアバラはアバラだし、強さはこの目で見たしね。それにこっちの世界に来たばかりだからレベルは上がってないと思うけど、なんかスキルは使ってたでしょ?」
「そのスキルってのはどうやって確認すりゃいいんだ?なんかクソ王のところでステータスの見られる魔道具?っていうやつで見られはしたんだけどよ」
あちゃーとテトラは額に手を当てる。
「他人のステータス覗くとかいくら転移してきたばかりとはいえ無茶苦茶マナー違反だからね…アタシからしたら勝手にスリーサイズ知られるくらい気持ち悪いわ」
スリーサイズ…そう聞いたアバラはそっと目を細めテトラのまな板を見るのだった。
「…合掌」
「アンタ凄い失礼な想像してない?」
「…なんでもない。そんで、ステータスってどうやって見ればいいんだ?」
「え?あぁ、念じながら【ステータス】って唱えればいいのよ。ほら」
そういうとテトラの前に半透明の板が現れた。
「他人から内容は見えないようになってるから人目は気にしなくていいわよ」
「おぉ…!異世界…!じゃあ俺も【ステータス】!」
アバラの前にも同じ半透明の板が現れた。左上に【阿原 竜斗】職業ヤンキーLv1と記載してある。各種筋力、敏捷などのパラメータの欄がありその下にスキルの項目がある。
「お、あったぞスキル。【ド根性頭突き】と【ステゴロ自慢】だな」
「効果とかも書いてあるはずよ。一応個人的な情報だから、無理にアタシに話さなくていいわよ」
「いや、気にしねえよ。【ド根性頭突き】は…【中威力で攻撃、相手の防御を一定数無視する】って書いてあるな」
テトラは「おぉ~」と声を上げる。
「それであの威力かぁ。レベル差のある相手にずいぶん大ダメージ与えてたみたいだったから、防御無視って聞いたことないけどかなりすごいんじゃない?」
「まぁ一定数無視だからどの程度かはわかんねぇけどな…。もう一つ【ステゴロ自慢】は【武器、防具を装備していない時に限り全ステータスを中程度上げる】って書いてあるぞ」
「パッシブっぽいスキルね…デメリット有りで高水準のバフって感じかしら。ずいぶんとピーキーね。装備を付けないほうが強くなれるなんて」
「俺は元々得物は使わねー主義だ」
テトラはそれを聞くとケラケラと笑った
「アンタらしーわ。いいんじゃない?装備代節約できるし?剣や鎧だって高っいんだからね。最初っから装備してるようなもんだと思えば」
「おう」
パンッと拳と平手を合わせる
「じゃあ冒険者登録してこよーよ!そこの受付でできるからさ!アタシとパーティ組むかはまた後で考えてくれればいいし!」
「あ?なんでだよ」
足早に登録をしてこようとさせるテトラがピタッと止まる
「…冒険者、やんない?」
「いやそうじゃなくて」
ポリポリとバツが悪そうに鼻頭をかく
「パーティ組むんだろ?俺、まだこの世界のこと全然わかんねぇからもっと教えてくれよ」
そう聞いたテトラはパァァと顔が明るくなった。
「うんうん!組もう!パーティ!なんだよぉびっくりさせやがってぇ~!」
「小突くなっての」
「あ、でも一つ言ってないことがあってぇ…」
「なんだよまだなんかあんのか?」
もじもじとするテトラにいぶかしげに訪ねる
「パーティを組むと自動的にお互いのステータスプレートが開示されるの…」
「そうなのか。まぁいいんじゃねぇのか?」
あっけらかんとしているアバラを顔を赤くしながらべしべしと叩く。
「さっき言ったでしょ!スリーサイズを知られるようなものだって!乙女の秘密をなんだと思ってるの!」
「この世界の価値観わかんねー…」




