33話
それから数日が経った。イウラの店には宣言通りポルコが訪れ店の調理場の設備にああだこうだと口を出してるらしい。調理場を作る工程にはゴランも加わり忙しくも楽しそうにしているそうだ。
あれから【雀】とみられる者からの襲撃もなく、アバラ達もいつもの様に依頼をこなしていた。
最近はスライム液が儲かることが知れ渡って、低ランクの冒険者達がイウラ達が作ったスライム液を吸い出す注射器を使ってせっせと液集めをしている。
そのため、アバラ達も討伐依頼などを受けることが増え、着々と戦闘経験を増やしていた。
その日はイウラに頼まれていたトレントの木材を納品しにイウラ商会に出向いていた。
「あ、アバラ!トレントの木材の納品だよね、ありがとう。助かるよ」
「おう!でもトレントの木材って何に使うんだ?」
「ポルコさんがね、トレントの木材はいい香りがするからってスモークチップにするんだって。燻製につかうらしいんだけど…」
「燻製?ってことは料理につかうんだよな?そろそろ店がオープンするって事か!?」
「そうだよ!ポルコさん呼んでくるね」
「ポルコさーん」とイウラが店の中に入って行く。
「おう、アバラか。丁度いい、この看板を店の入り口に立てちゃくれねぇか。ワシじゃ背が低くて届かん」
そういうとポルコがアバラに木製の看板を渡した。
「おう!…こうでいいか?」
「いいぞ!ぴったりじゃな!」
腕を組み満足そうに看板を見上げるポルコ。
「良い名前ですね!」
「素敵じゃない!」
ニコニコと看板を見るセシルとテトラ。
「あぁ、【ポルコの穴倉】じゃ。ついに完成したぞ!」
イウラとハナコが望み、アバラ達と協力して作った【イウラ商会】そして【ポルコの穴倉】がついにオープンした。ポルコの穴倉には連日冒険者や街の人々が訪れ皆が舌鼓を打っている。
獣人の子どもたちも店の手伝いをしているし、ポルコの穴倉の横で開いている異世界人製のアイテムもかなりの売り上げだそうだ。
商会とポルコの穴倉の噂を聞きつけたキサラギ達勇者パーティもやってきた。
「良い店だね!食事も美味しいし、僕も定期的に来ようかな」
「うちの女共もハナコ先生が作った化粧品に首ったけだからな。アタシも使ってるし」
いつの間にかハナコ先生というあだ名が定着してしまったらしい。美味しそうに料理を食べるミサキがそう話している。後ろでは勇者パーティの女子たちが、きゃあきゃあとハナコ先生の化粧品に群がっていた。
「明日から遠征だからな。多めに買っておきたいんだろう」
むっすりと肉を食うタカスギがそう言う。
「遠征行くのか?この間も行ってただろ?」
アバラが聞くと「うーん」とキサラギが答えた。
「教会の神聖騎士団との共同演習だってさ。王国騎士団の半分も連れて行くんだって」
「物騒な話だよな。どこと戦争してるって訳でもねーのによ」
「名目上は魔王国の脅威にそなえるため…だがな。現状そんな心配があるのかと言われると微妙なところだが」
ミサキとタカスギがキサラギに続いてそう話した。
「という訳だから、しばらくこの国を離れるよ。この穴倉の食事が食べられないと思うと寂しいね」
「そうか…無事帰って来いよ。演習ならそうそうケガするもんでもないかもしれんが」
そう話して勇者パーティは帰って行った。
「おう、アバラ!試作品じゃ、食ってけ!」
ポルコが店の奥から美味しそうな匂いを漂わせた肉の塊を持ってきた。
「なんだこれ!?めちゃくちゃ美味そうじゃねぇか!」
「ちょっと!アタシ達にも分けなさいよ!一人じめはずるいわよ!」
そうして三人に切り分けられた肉に齧り付く。
「なんだこれ!めちゃくちゃ美味いぞ!!!」
「美味しぃ~!燻製の香りかしら、油もジューシーでしつこくないわ」
「香草が振ってあって豪快に見えて丁寧なお仕事ですね…とても美味しいです。なんのお肉ですか?」
「これはオークの肉だ」
そう言われて三人は跳ね上がって驚いた。
「えぇぇ!!オークって臭くてあんまり美味しくないんじゃなかったのか!?」
「そうよ!持って帰ってもあんまり売れないからみんなほっぽって帰るんだから!」
「燻製と香草で臭みを取ってるんですね!それでもこんなに美味しくなるなんて、びっくりです!」
ポルコは満足そうに頷くとメニューが書かれた木の板に【オーク肉の香草焼き】を追加した。
「キチンと血抜きして、酒に浸ければオーク肉だって食えるんじゃ。不味い食材だって調理法はいくらでもある。珍しい食材があればもってこい、イウラなら買い取ってくれるじゃろ」
「聞いたわね!?これからはオーク肉も珍しい食材もバンバン持ってくるわよ。こんなに美味しくしてくれるんですもの!」
「あぁ!今までなんてもったいない事をしてたんだろうな!目が覚めたぜ!」
そう、次の冒険に心躍らせる一行は残った肉を平らげて満足そうに帰って行ったのだった。




