15.再会
サイモンに支えられながら庭園まで移動したエルヴィス。
少し離れた場所から暴れるオリヴィアを見たとき、エルヴィスは愕然とした。
あんなに冷たく、無慈悲な彼女を見たのは初めてだった。
彼の脳裏に浮かんだのは、庭園で小さな花を見つけて嬉しそうに笑っていたオリヴィア。
似合うと言うと、照れたように笑った。
常に慈しみの心を持っていた彼女。
今目の前にいる女は、本当にあのオリヴィアなのか。
同じ顔をしているのに、まるで別人だった。
眼前の凄惨な光景が信じられない。
(俺は……間違えたのか?)
自分があの場面で死ねば、オリヴィアは自由になると思っていた。
それが最善手だと疑わなかった。
それなのに、今の姿はどうか。
彼女は自由になるどころか……壊れている。
国のために、『女王』のためにオリヴィアを止めなければならないと思っていたが、彼女を見た瞬間、「止めてやりたい」と強く願った。
レイピアを振り回して帝国兵を傷つけているのは彼女の方のはずなのに、エルヴィスには、その度に彼女自身が傷ついているように見えた。
ふらつく身体で、隠れながら彼女に近づく。
サイモンが支えようと手を差し出してくれたが、断った。
己の足で立って、彼女と向き合わなければならないと思った。
オリヴィアの声が聞こえる距離に来たところで、オリヴィアが今まさに目の前の男の命を奪おうとしていることに気がついた。
──不殺の剣を捨てている。
散々甘いと思っていたのに、いざ彼女が人を手にかけようとしているところを目撃すると、胸が痛んだ。
……お前は、甘いままでいい。
すぐさま植物のツルを発動しようと魔力を流す。
だが視界がぐらりと揺れた。
(クソ、こんな時に……!)
乱れる魔力を無理やり束ね、ツルを放つ。
彼女のレイピアを封じた。
オリヴィアが、驚愕の表情でゆっくりとこちらを振り返る。
そして、掠れた声で名を呼んだ。
「……エルヴィス?」
「ああ」
「本当に……本当にエルヴィスなの?」
「そうだ」
「……生きてるの……?」
「……ああ」
オリヴィアの視線が、彼の顔、肩、腕へと彷徨う。
血の跡。
乱れた金髪。
少し青白い顔。
偽物じゃない。
幻でもない。
彼だ。
本物のエルヴィスだ。
次の瞬間、オリヴィアが全てを放り投げて、エルヴィスに向かって駆け出した。
レイピアは投げ捨てられ、死の淵にいたブライアンは突如解放され呆然としている。
ブライアンが走り去っていくオリヴィアを放心して眺めていると、突如、肩がぽんと叩かれた。
驚きでびくっと身体を震わせ、ブライアンが振り返ると、そこにいたのはサイモンだった。
サイモンが独り言のように言う。
「やれやれ。全くあの二人には困ったものだね。お互いしか見えてないのだから。というわけで、君の身柄の拘束は私がするからよろしく」
言葉だけ聞くと親しげだが、こちらに向けられた翠眼は全く笑っていない。
ブライアンは冷や汗をかきながら、大人しく頷くことしかできなかった。




